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Unmissable Story extra pieces from Ruffn' Tuff vol.10
Clevie Brownie

 
Interview by Shizuo "EC" Ishii / Translated by Mizuho Takahashi / Photo by Masataka Ishida
 

 
映画『Ruffn' Tuff』やインタビュー集の書籍でこぼれた人達の発言を採録する当コーナー、前号に続きクリーヴィが登場。最新のリディムの制作だけでなく、古き良き音楽に対する愛情、そしてそれを後世に伝える想いも人一倍のようだ。
 
私もスティーリーもコンビを組んだ当初からオールディーズに対する深い愛情があったよ。2人ともスタジオ・ワンやトレジャー・アイルのサウンドが大好きなんだ。同時に、若い世代に何らかの形で古いものに触れる機会を与えられなければならないと感じていた。ヴィンテージは簡単に入手できなかったり、見つけられなかったりするからね。私達は、当時のアーティストを起用し、現在の技術を駆使して、「あの音楽」を若い世代に紹介したいと思った。セールスが見込めるし、何よりもそういう作業が自分にとって興味深かかった。ともかく創造的だよね。
 
そういう訳で、私達はヴィンテージを収録した2枚のアルバムを作った。 1枚は『Steely & Clevie Play Studio One Vintage』。こちらではオリジナルのシンガーを起用した。ここからの大ヒットがDawn Pennの「No, No, No」だ。「No, No, No」がヒットしたお陰で、ヴィンテージのリメイクは、正しいアプローチとレコーディング・スタジオの技術があれば、さらに売れる商品になるという事がよく分ったよ。このアルバムではMixing Lab(スタジオ)を使ったが、当時は、そこが、私たちがプロの耳で選ぶ、大きな音でミックスができる唯一のスタジオだったからだ。
 
しばらくたって、2枚目のアルバム『Old To The New - Tribute to Joe Gibbs Classics』を作った。このアルバムでは良く知られている旬のアーティストと、その曲のオリジナルを歌ったアーティストをコラボレートさせた。何曲かはスタジオ・ワンがオリジナルで、ジョー・ギブスがカヴァーしたものだったが、私達が求めていたのはジョー・ギブスの解釈や音楽スタイルだ。このアルバムからは、またしてもヒットが生まれた。ショーン・ポールとサシャの「I'm Still In Love With You」。そこを見てくれ(壁に掛かった額を指差す)。この2曲が入ったアルバムはそれぞれプラチナ、ダブル・プラチナ・アルバムになった。シングルはビルボードのトップ100とR&Bチャートで最高15位まであがった。全英チャートにも入った。これによって、またしても古き良き時代の音楽に対する需要が十分にある事が証明されたよ。
 
私が思うに、当時の曲は、よく練られて書かれている。制作の際のコンセプトも優れているし。私達にはこの音楽を伝えていく義務があると思う。これからも過去の良い曲をレコーディングし続けるつもりだよ。
 
ジャマイカ音楽はリリックに多様性があるお陰で、多くの人の耳に届く。共感を持てる部分が沢山ある。それが世界中の人に聞かれる第一の理由だろうね。第二に、この音楽はダンスやクラブなど、人が集まる文化とリンクしている。それも大事な要因だ。第三にビート。この音楽のビートの起源は500年前のキューバ音楽や、更にその前のアフリカの民俗音楽にまで遡ると言われている。このビートがあるからここまで受け入れられた。絶対に外せない大事な要素だよね。更に私達の世代が作ってきたダンスホールがこの10年で非常に大きなインパクトを与えてきたけれど、これはコンピューター・テクノロジーの出現によるところが大きいと思う。
 
レゲエは多様化して、「ダンスホール」と「レゲエ」という風にジャンルが異なる別のものとして認知されるようになった。スティーリーと私が次から次へとトラックを生み出しているうちに、両者の区分けができてしまったんだけどね。でも、別に私達が意識してダンスホールを他と区別した訳じゃない。聞く人がこちらをダンスホール、あちらをレゲエと呼んだまでさ。それが最近では両者の共存が可能になっただけでなく、それぞれがクロスオーヴァーするようになった。そして、聞く人達がそれを受け入れている。DJが歌ったり、シンガーがDJしたりもするね。非常に潜在性のある市場の融合が起きている。インターネットのお陰で、誰でも私達の音楽にアクセスできる状態になったのだから、ぜひ、多くの人達にダンスホールとレゲエを聴く機会を持ってほしいね。
 
私自身は現在、Recording Industry Association Of Jamaicaの会長を務めている。これはジャマイカのレコーディング産業にとっては極めて重大な組織だ。インターネットの普及のお陰でレコード・ビジネスも世界規模になり、容易に世界とアクセスできるようになった。しかし、ジャマイカではE-commerceのベンチャーが盛んではなく、権利関係がクリアにならないまま世界中に私達の音源が取引されてしまっているんだ。そこで、レコーディング業界が一丸となって、私達の音楽の権利が侵されないよう努力していくためにこの組織を作った。現存する音楽系サイトの多くが合法ではないが、幸いにも合法化してビジネスとして機能させようという方向に動きつつある。違法ダウンロードや海賊盤をなくしていこうと努力しているよ。これはとても大事な事だ。研究でも明らかになっているが、海賊盤の流通と犯罪には関連がある。この負の連鎖は止めなければならない。平和な世の中を作っていくためにもね。
 
 
■DVD
「Ruffn' Tuff 〜 Founders of The Immortal Riddim」DVD
監督:石井 "EC" 志津男
[Dex Entertainment / DXDS-0064]


  
■CD
「Ruffn' Tuff 〜 Founders of The Immortal Riddim」
O.S.T.

[Overheat / OVE-0100]
¥2,625(tax in)カリプソ、スカ、レゲエなど全16曲のベスト・セレクション。

 
■BOOK
「Ruffn' Tuff:ジャマイカン・ミュージックの創造者たち」
監修:石井“EC”志津男
A5判/192ページ

リットーミュージック¥1,890(tax in)

出演者の中から13名のインタヴュー+石井、石田、落合のエッセイ集。

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