もうすっかり夜の闇に包まれた日比谷公園に、ライティングに彩られた野外音楽堂が浮かび上がっている。ステージ上にはこの日のトリを務めたムーミン。「ムーンライト・ダンスホール」のイントロのギターが響く。自然発生的に観客席に一斉にライターの火が灯る。「ソウル・レベル2000」を象徴する、非常に美しい幻想的な場面だった。
あの時、おそらく全ての人に訪れたあの一体感は、「この音楽は間違い無い」という確信と変わり、一人一人を媒体として、今後も増殖し続けていくことだろう。そうした確かなものを、あの日、ジャパニーズ・レゲエは発信することに成功したと思う。
「ソウル・レベル2000」の成功の下地は、大盛況の連続だった今年の各地の夏のレゲエ・イヴェントによって既に築かれていたと思う。中でも規模的に大きい「横浜レゲエ祭パート1&2」、大阪の「ハイエスト・マウンテン」、「札幌レゲエ祭」、豊橋の「ベイサイド・レゲエ・フェスタ」、結果的に、この4つのイヴェント全てのバックを務めたホーム・グロウン・バンドと、同行したアーティスト達が、さながら「ジャパニーズ・レゲエ・オールスターズ」という一つのパッケージであるかの様に、夏の間中、全国をロードし、成果を収め、そうした「いい状態」のまま、10月8日を迎えることが出来たのだ。それはあたかも「ジャパニーズ・レゲエ・オールスターズ・サマー・ツアー2000」のファイナル・ステージとして日比谷野外音楽堂が用意されていた様な格好となった。そして2000年レゲエ・パワーの総決算は始まった。
のっけからコーン・ヘッドがルードボーイ・フェイスを引き連れ飛ばす。精力的に活動を開始した446が吠える。ヤング・ヴェテラン、アトゥーシャイが噂のマジマンと共に登場、余裕のステージ。そして早くもファイヤーBの登場、会場のヴォルテイジは上がる。続けてナンジャマン、NGヘッド。前半のトリは三木道三。彼の最近のステージは本当に「伝わる」ものがある。本人は決して堅い言葉は使わないが、何か決意表明めいた潔さが、見る者に感動を与えるのだろう。野音は「マチガイナイ!」の連呼に湧いた。
巨大に積み上げられたタクシー・ハイファイからの爆音と共に、サウンド勢が熱いヴァイブを発散した後、ライヴは佳境に。最狂のバッドボーイ軍団、ジャンボ・マーチ、タカフィン、ボクサー・キッドのスリー・ザ・ハードウェイに引き続き、Hマン、パパ・ボンと豪華なラインナップが続く。夕闇と共に登場したプシンの貫録のステージに酔いしれ、リョウ・ザ・スカイウォーカーに燃え、そして、大トリのムーミンの出番中に冒頭に書いたそのシーンは訪れた。
あの会場にいた全員が、ふと振り返ってしまう様な、安堵を伴った空気が流れ、その瞬間、ステージを見やると、会場は無数の小さなライターの火で埋め尽くされ、ビルの谷間の闇の中に野音は美しく浮かび上がっていた。「間違いねぇな」と思った。その歩みが遅かろうが早かろうが、間違いないことだけは確実だ。それは確信できた1日だった。様々なイヴェントで命を削る様なMCを続けてきた不死身のオヤジ、ランキン・タクシーとオーバーヒート・クルーに尊敬を。そうしてシーンを突き動かす見えざる力によって実現した奇跡「ジャパニーズ・レゲエ・オールスターズ・サマー・ツアー2000」のファイナル・ステージは幕を閉じたのだった。
from Riddim 212