円熟、という言葉がピッタリ来るのがルシアーノの最新作『Child Of A King』だ。いつも以上にラスタファリズムを前面に出しつつ、ヴェテランらしく聴きやすく仕上げている。リリース直前、精力的にプロモーションをしていたメッセンジャーからのメッセージをどうぞ。

●今回は、エグゼクティヴ・プロデューサーとしてバイロン・マレイが全体をまとめているのはどうしてでしょう?
Luciano(以下L):長年、録り溜めたを曲をまとめてアルバムにしようと彼からアプローチがあったんだ。

●一番前に作った曲はどれでしょうか?
L:「This One Is For The Leaders」と「Silever And Gold」はシングルとしてすでにカットしているね。あと数曲も、以前出した曲がある。

●「Silever And Gold」は04年に他界したエロール・トンプソンがクレジットされていますが? 
L:あれはジョー・ギブスの息子のスティーヴ・ギブスがプロデューサーだからね(注:エロールはジョー・ギブスとの仕事が多かった)。エロールは偉大なエンジニアだった。

●全体の雰囲気が前作『Serious Time』と近い気がしたのですが。
L:そうそう、前作の出来に満足していたから、俺自身も近いヴァイブを出すつもりで作ったんだ。だから、プロダクションの雰囲気も近いし、曲のクオリティーの高さも同じだと思う。

●前作同様、レゲエ以外のトラックも混ぜていますね。「Remember When」と「Peace Train」がそうですが、この手のトラックに挑戦した理由は?
L:音楽的に多彩に仕上げて、色々なスパイスを届けたかったんだ。俺自身、様々な音楽を聴くし。音楽に境界線はないし、国や人種、文化、宗教が違う人々でも、何かしらインスピレーションを与える作品にしたかった。

●リリックのインスピレーションはどんなところから受けますか?
L:俺の第一の使命はメッセンジャーとしてまず偉大な神、ジャーの教えを届けることで、二つめの使命は人類を教育してまとめることだ。あと、俺は周りを観察するタイプで、何が起きているか注意を払っているうちに、たくさんのインスピレーションを受けるし、多くのサポートと愛情を受けていると感じる時もリリックが書けるね。

●いつもカヴァーの選曲のセンスがいいですよね。今回は「To Be Young Gifted And Black」と「Desparate Lover」を歌っていますが、これは自分のアイディア?
L:プロデューサーのアイディアだけど、どちらも子供の頃から慣れ親しんでいた曲だから、歌っていてすごく楽しかった。

●「To Be Young Gifted And Black」はオリジナルはイギリスの曲ですが、慣れ親しんでいたのはボブ&マーシャのヴァージョンでしょうか?
L:当然、ボブ・アンディとマーシャ・グリフィスのヴァージョンさ。オリジナルも知っているけれど。

●「Desparate Lover」はヘプトーンズが歌っていたんでしたっけ?
L:そうだよ。よく知っているね。でも、最初に歌ったのはやっぱりボブ・アンディだ。

●オリジナルの雰囲気をキープしているのが嬉しかったです。ロック・ステディーも好きですか?
L:もちろん、好きだし、何しろ俺達のファンデーションだからね。自分のルーツをしっかりして、何かしらの形で繋がっていることはとても大事だと思っている。本物のヴァイブを得るために必要な行程だ。

●ボブ・アンディやリロイ・シヴルスらの前でこれらの曲を歌ったことはあります?
L:ないけど、カヴァーする旨はボブ・アンディに連絡したよ。そうやって尊敬の念とこの曲に対する愛情をきちんと示したかったんだ。

●『Child Of A King』というタイトルに込めた想いを教えて下さい。
L:まず、俺はジャーの使徒として活動していることが一つ、それから、発売日の11月2週目はその王の中の王が君臨した76年目のお祝いと重ねてもいるんだ。併せて「カルチャー・サルート」というコンサートもニューヨークで行うし。

●カルチャーのジョセフ・ヒルのトリビュート・コンサートでもありますよね? 彼に関する思い出があったら教えて下さい。
L:彼とはこの間、ロンドンからバーミンガムを回ったツアーで一緒だったんだ。スカタライツやブジュ・バンタンも参加したいいツアーで、その時、移動時間にジョセフとゆっくり話す機会があった。彼がすばらしいスピリットの持ち主であることを改めて知って、感慨深かったのを覚えている。ジャマイカの現状やラスタファリアンのコミュニティーのあり方について、とてもシリアスな話をしてね。今は、彼の息子のケニヤッタを応援するのが大事だと思っている。

●息子と言えば、最近、あなたのステージに男の子が何人か登場しますが、彼らはあなたの子供さんですよね?
L:そうだよ(笑)。

●彼らもやはり歌が上手なのでしょうか?
L:歌よりも楽器に興味があるみたいで、ドラムはみんな上手だ。俺の遺伝子が入ってるな、って自分でも思う。

●では、将来的にはモーガン・ヘリテッジみたいになったりとか?
L:いや、次のメッセンジャーになるだろうね(笑)。

●最後に、このアルバムから聴き取って欲しいことを教えて下さい。
L:まず、俺が長年培ってきたプロとしての仕事ぶりをじっくり聴いて欲しい。もちろん、メッセージも理解して、最も大事なものが愛だってことを体感して欲しいね。



"Child Of A King"
Luciano
[VP / VP1750]
「As One」でPushimとデュエットを果たしお茶の間にもその映像が流れたLucianoの新作。前作同様、佳曲が詰まった傑作。