渋谷宇田川町のBoot Streetを根城に全国を飛び回るD.OとK-Loveのイニシアティヴにより日本全国各地のアンダーグラウンド・シーンで蠢く次世代の若きラッパーたちが集結したアルバム『Japanese Rap Sta〜On Boot Street〜』がドロップされた。日本のヒップホップ・シーンもここまでの高水準に達していたのか!と驚くはずだ。

 「現場、盛り場、道端 Playa、ストリート、くそったれども Stand Up」(From「Stand Up Stand Up」)

 練馬Tha Fuckerことご存知D.Oと、トラックメイカーのK-Loveが指揮を執り、全国各地の“Hood Sta”たちが集まった一大プロジェクト『Japanese Rap Sta〜On Boot Street〜』。Boot Streetとは、あのKaminari-Kazoku.がアルバムをリリースした2004年にオープンした渋谷宇田川町のショップのこと。それまで路上でミックス・テープを売り捌いていたというD.OやPit Gobらが、渋谷東急ハンズ前の坂の上に店舗を構える様になってから、そこは自然と“B”な情報発信基地となり、遂にはこのプロジェクトに発展したという訳だ。この5〜6年もの間に日本中を営業で飛び回ってきたD.Oが、各地のストリートや現場(クラブ)で繋がった仲間たち(北は北海道から南は九州まで)の力を結集させたこのアルバムは、コンピレーションと言えどよくあるバラつき感は無く、ディレクションの行き届いたもの凄くタイトな出来映えとなっている。

その総勢50名を超える顔ぶれの中には、アルバムを出したばかりのScarsやBlack Talon、BB Inc、D.Office、Luck-End、Loyaltyに妄走族やTeam 44 Blox、タイプライターといった夜な夜な関東シーンを盛り上げているクルーのメンバー(D.Oの兄貴分となるRino Latina II、Twigyも参加)も含まれていて、その結び付きの強さや、ムーヴメントとしての勢いが感じられる点もこのコンピの魅力のひとつだ。何よりもストリートならではの“横並び感”がストレートに打ち出されている点が良い。バラつきがないように感じられる一番の理由はそこにあるのだろう。あと15曲中、実に8曲が3人以上のMCによるマイク・リレー物となっているが、ひとつのビートを共有するにあたっては、その“強度”とやらが問われる訳で、その部分(サウンド・プロダクション面)でも、本作は相当に水準が高いと言わざるを得ない。D.Oの幼馴染みで彼の『Just Hustlin' Now』(今年のベスト・アルバム候補作!)でも辣腕ぶりを発揮していたK-LoveやJashwon、泥王音、T-KCにLuck-EndのAtsushi、下克上の無也、そしてUBGのInovaderによるタイプこそ異なれど“初期衝動”を喚起するようなビートがその正体だ。

PVも全て自分たちで仕掛けたというこのBoot Street発のアルバムは、冒頭に抜き出したD.Oのラインからも伝わってくる通り、ゼロからのスタート地点にして、数々の出会いの場であり、シノギの舞台でもある、生活に完全密着したストリートと、そこから何かを学び、何かを得た者たちのドキュメントである。勿論、彼らからしてもこれが全てでは決してない訳で、そのフォロー・アップは今後続いていくと思われるタイトルの中で成されることだろう。現状に甘んじることのない向上心と「ナメられてたまるか!」という反骨心を伴った確かな行動力、結束力で自らのフッドを日本全国にせんとする男たちの醒めることのないアツい夢。それがここにある。



" Japanese Rap Sta
?`On Boot Street?`"
V.A.
[DB5 / Gate / GAGH-0021]