川上つよしと彼のムードメイカーズの存在っていうのは、日本の音楽そのものの豊かさを体現してるんじゃないか?と、密かに思っている。スカパラという超多忙ライヴ・バンドのベーシストとして飛び回る川上を始め、それぞれ第一線で活躍するレゲエ・ミュージシャンがズラリと揃いロックステディを奏で、遊んでる。
「みんなもそういう感じで楽しんでくれてると思うんですよ。Hakase(キーボード)なんかも、口数は少ないけど、凄く楽しんでくれてるのは伝わってくるし。だからここは(メンバーにとって)楽しめる場所であってほしい。だけどもう、5年も続いてるんだよね」(川上、以下同)
で、そうして生まれた音楽が、純粋なポップ・ミュージックとしても多くの人に受け入れられている事実。だって、回りを見渡してみなよ。メッセージ性のある(様な)音楽ばかりがもてはやされる世の中で、彼らは堂々と“ムード”を謳ってるんだから。なにかを声高に叫んでるわけでもない音楽が、普通に愛聴されている。それが“豊かさ”の表れだと思うのだ。
「自分でもそういう音楽が好きだしね。オリジナル(曲かどうか)にもこだわってないっていうか、いい曲やいいメロディを演りましょうっていう感覚は大好きだから」
この度リリースされた『Singers Limited〜Golden Mood Hits!』は、ムードメイカーズにとって初のベスト盤であり、彼らの“歌モノ”に焦点を絞った作品だ。ムードメイカーズのオリジナル作に参加した高橋幸宏、古内東子、武田カオリ(Tica)、林夕紀子(Choro Azul)を筆頭に、Bonnie Pink、野宮真貴とのコラボレート、そして彼らがリミックスを手がけたKeyco、和田アキ子、松平健とその名前を連ねるだけでも面白い。洋邦問わぬ名曲・ヒット曲カヴァーから、オリジナル・チューンまでなんともバラエティに富んだラインアップ。そんな中、本誌読者的に注目はやはり、Rankin TaxiとケツメイシRyojiのコンビネーションによる「デイドリームビリーバー」だろう。モンキーズの代表曲をタイマーズが日本語訳したものに、Rankin師によるオリジナルDeeJayが乗っかった、ムードメイカーズならではなレゲエ=ポップス橋渡しチューン。この曲に顕著に表れている様に、日本のポップスとレゲエの濃いところをバランスよく繋いでいるのも、ムードメイカーズだからできる芸当なのかもしれない。
「それはすごく自然に。メンバーも、レゲエどっぷりな人もいれば、いろんな趣味の人がいて。山本タカシ(ギター)なんてよくレゲエやってるけど、実はロック少年だったり、俺もソウルとか大好きだし。そういうごちゃっと混沌とした(ロックステディの)ちょっと下世話な感じもバンド・サウンドの定番のカタチになりつつあるかもね」
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