「出るぞ、出るぞ」と言われ続けて一年以上。遂にニュー・アルバム『J.M.T.』をGreensleevesからリリースしたVybz Kartel。彼曰く「ダンスホール・レゲエのシーンは、パイレートをやめてメロディとリリックを作り出せる新しい才能を求めているんだ」…本作は、その言葉に違わぬ傑作。つまりどこから聴いてもフレッシュな最新型ブラック・ミュージックばかりなのだ。意外な話も飛び出す貴重な彼のインタビューをどうぞ。

今回のアルバム『J.M.T.』は今の時点でシングルなどのリリースがない未発表曲も収録されていますが、本作のために録ったのでしょうか?
Vybz Kartel(以下V):そう、このアルバムのためにレコーディングした。『J.M.T.』はエクスクルーシヴだよ。新しい曲ばかりだ。

本作の中で一番気に入っている曲と、その理由を教えて下さい。
V:一番好きな曲と言われても全部スペシャルだからなあ、選ぶのは難しいよ。明日になればまた変わるし、気分によって違う曲を選ぶ。ま、今日のお気に入りを言えば「Smuggler」かな。

では、特に思い入れのある曲は?
V:Wayne Marshallとやった2曲(「Late Night」「Need U Girl」)だね。

リリックや曲は練り上げて作る方ですか?
V:普段からリリックは書き留めるようにしている。で、スタジオでそれをもとにアドリブするんだ。

あの見事な一人で掛け合いをするようなスタイルは、あなたが考えついたものですか?
V:そうだよ。このスタイルはVybz Kartelのオリジナル・スタイル。21世紀の新しいDJスタイルだ。もし、このスタイルが理解出来ない奴がいたら、そいつはよっぽどバカか、性格が悪いかだね。ニューヨークやイギリスの奴らにも理解出来て、キングストンでも受け入れられるようなハードコアさも併せ持ったスタイルなのさ。

本作にはDon CorleonのDonovan Vennett以外のプロデューサーが関わった曲も多いのですが、彼以外で注目しているプロデューサーと言えば?
V:Wayne Marshallをフィーチャーした2曲をやったLeftside & EscoとBling Dawgだね。あと今回、俺が2トラック、自分でプロデュースしているから、もちろん自分も含めて、という事だ。

個人的に注目しているトラック・メイカーは?
V:Leftside & Escoと(Time Travelレーベルのプロデューサーでもある)Patrick "Roach" Samuelsだな。

ジャマイカのアーティストで、最も親しくしているのは?
V:Bling Dawgだな。

あなたはヒップホップ・アーティストとの共演も多いですが、共演したアーティストについて印象を聞かせて下さい。
V:Rihanna、Nina Skyとは一緒にやって良かったね。ヴァイブも良かったし、レゲエのフィーリングも持っているアーティストだからね。彼女達もそのプロジェクトに参加した事を喜んでいたよ。

ご自分のレーベルも運営されていますが、方向性と特に気を使っている点を教えて下さい。
V:若い才能のある奴らを伸ばす事と、ダンスホール・ミュージックの発展。制作上、気をつけているのは、作品の質、レコーディングの方法、誰がリズム・トラックを作っているのかという事。俺のレーベルで注目してる奴と言えば、School BoysとNew Clearだな。

あなたがDJを始めた頃はまだラバダブのセットはあったのですか?
V:10歳の頃、つまり俺がDJを始めた辺りではNinjamanとShabba Ranksが浮上していたね。その頃と人は変わったけど、シーンで起きている事はあまり変わってないね。

なるほど。でも、シーンとしてはBusy SignalやIdoniaなど、若手も頑張っているようですが、注目している若手はいますか?
V:いま君が言ったIdoniaとSchool Boysだね。両方とも俺にとっては期待出来る若手だからね。俺が彼らの事をサポートしている事は、本人達は知らないかも知れないけどな。まあ、そんな事関係なしに今後もサポートし続けるよ。

ところで最近結婚されましたが、結婚した事によってこれから作る歌詞に影響が出るでしょうか? 既に何か変化しましたか?
V:それはないね。明らかにないね。Adidja Palmer(彼の本名)は人間だが、Vybz Kartelはアーティストなんだ。

最後に。アーティストとしての今後の目標は何ですか?
V:ダンスホールを世界的にもっと広める事。Bob Marleyがやっていたように、俺はダンスホールをトップレベルに持って行きたいんだ。



"J.M.T."
Vybz Kartel
[Greensleeves / GRELCD286]