「俺がレゲエにハマった頃っていうのは、正確には14歳の時で、ちょうどBuju(Banton)が“Murderer”を出したばっかりみたいな時期で、Bujuがそろそろラスタ化し始めた頃ですね。12年前ぐらいですね。でも、まだほとんどのジャマイカのアーティスト、特にディージェイはバッドマン・トークが多かった頃で……。新しいものに当然ヤラれたんですけど、同時にBig Youthを聞いて、そのトースティング・スタイルに食らっちゃいましたね。それでとにかく“ディージェイ”というものに興味が湧いて。ディージェイものは良さそうだと思ったらとにかくジャケ買いしてました」
10代で初レコーディングを経験し、生来の“授かりもの”であるその声と、粋なライミング・センス、レゲエIQの高さから選ばれる言葉使いで、これまで多くの期待を背負ってきたルードボーイ・フェイス。彼の原点は熱心なレゲエ・リスナーであった、ということの様だ。その辺は今も変わらずで、例えば古本屋に行けば、密かに往年の『レゲエ・マガジン(RM)』全号収集を続けているという。
「古いディージェイを好きになったっていうのは、歌い回しとかで大きな影響になってますね。基本的には古いスタイルを通過しなくちゃ、レゲエのディージェイは出来ないんじゃないかって、自分的には思ってます。だから(Vybz)Kartelが昔のスタイルでやったりするのもすごい好きだし、Beenie Manみたいにどんなスタイルでも出来るディージェイになりたいんです。それと同時に、ここまでに来る間に出会って俺なりに吸収したヒップホップだったり、新しいダンスホールのスタイルだったり、全部掛け合わせて俺なりの新しいものを作りたいんです。それでレゲエっていうものは、俺は“ラガ”だと思ってるんで、それが出せたらいいと思ってます」
彼の中には「レゲエ・ディージェイであることの自覚」が大きく存在している。まぁ、レゲエでマイクを握る者なら当たり前とも言えるのだろうが、自身のリリースを目前に控えた彼の口から、改めて聞かされるそのことに感じるものがあった。「レゲエ・ディージェイ=ラガ」。そんな短絡的な発言に、自分も同意であることに気付く。
「自分たちの世代、っていうことは意識してます。メッセージを送る対象としても、次につなげる世代としても。アルバムの中で“Still 045”っていう曲があるんですけど、その中で、昔『ベイ・モンスターズ』っていうイベントとかを客として見に行ってた頃の気持ちとか、先輩たちに憧れて、自分も始めて、10年やって、いろいろ揉まれて、それが今はちょっとは先輩たちに認めてもらえて、自分もステージに立てる様になって、『俺も横浜でやってるぞ、俺らの下にも伝えていくぞ』ってそんな気持ちを、その曲の中では歌ってみました」
伝説の横浜アンセム「045 Style」の同オケで歌われた曲のことだ。あの曲はCD化されていただろうか。聞きたくなった。
「全曲にメッセージを込めました。意味の無いことを言ってる曲は1曲もないつもりなんで。メッセージの大切さとか、リリックのこととか、ドラマチックな曲の作り方とかは、BPさんに教えてもらいました。今までやってきたことは自分の中でしっかり生きています。
今回のアルバムはやりきったと言うより、やっと始まった、という感じです。これからどんどんやっていきたいです。俺、4年計画を立ててるんですよ、次のステップまでの。出来るだけ毎年1枚出して、ジャマイカでもやってみたいし、『スティング』とか出たいって、本当に思ってるんです」
ニットの下はパンチ・パーマのあいつはそう言った。
踊る、踊りながら聞くという機能性を重視し、そこで聞かせるためのリリック・メイキング。あるいは巧妙なストーリー仕立て。ダンスホール・レゲエこそ最強と信じて疑わず込めたメッセージ。同世代への呼び掛け。レゲエへの愛情。ラガマフィン。ルードボーイ・フェイス、10年目のファースト・アルバム『Rudebwoy』にはそう言ったものが詰め込まれている。これに共感し、リリックを書き始める若いディージェイもいることだろう。そんな何かを覚醒させる様な雰囲気も感じる作品に思えた。
2006年シーズン幕開け。また多くの熱いレゲエが聞ける。今年も熱い夏を迎えるのだ。
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