●現在のヨーロッパやアメリカ、そして日本のニュー・ルーツ・シーンについてどう考えてますか?
Mighty Massa(以下M):ニュー・ルーツは元々ルーツ・レゲエの進化したもので、思想等は何の変わりもない。シーンとしては本場のイギリスは勿論、ヨーロッパやアメリカ等、着実に拡大を感るし、新たなクリエイターやサウンドマン達も増えてきているし、日本だって以前から比べるとそれなりに拡大しつつあると思う。だって今ではジャー・シャカを始め、アバシャンティ・アイ、アイレーション・ステッパーズ、ディサイプルズ等、毎年日本でもステージが見れる様になったし、サウンド・システムもジャー・アイレーション(名古屋)、ソニック・アーク(札幌)、ジャー・ライト(東京)、プレッシャー・ハイ(横浜)、レッド・アイ(福岡)ルーツ・ロック・ヴァイヴス(佐賀)等、少しずつ増え続けているしね。特にジャー・ライト、プレッシャー・ハイは僕達よりも一回り年下の世代だけど、着実に力をつけつつある。こういった若い人達にサウンドが受け継がれた事を誇りに思うよ。
●新作『Zion Gate』についてお訊きします。トータル的なテーマがあれば教えて下さい。
M:常にテーマはあります。それは“ヒューマニズム”を基調としたもので、現実を直視したコンシャス・サウンド。抽象的なテーマをつけているので理解し辛いかも知れないけど。
●ステッパーな楽曲が多い中、美しく優しい響きの曲もマサさんならではですよね。特に「You Are My Light」のピアノの響きが美しい。
M:自分の中には様々なレゲエが存在していて、これもまたマイティ・マサ風なのです。この曲のテーマは“人間愛”。それぞれに大切な人達へ発展、向上を願って…。
●続く「Truth & Right」はジャッキー・ミットゥに捧げた曲のようですが、彼への想いを聞かせて下さい。
M:元々この曲はラス・ニコの「Light Direction」(『One Blow』収録)をインストゥルメンタル・ヴァージョン化したものなんだけど、僕が作ると何となく“なんちゃってジャキー”風になってしまう(笑)。ジャッキーとは彼の初来日の時に初めて会ったんですが、その時の事は今でも忘れられない。僕は彼のソウルフルで独創特なサウンドがたまらなく大好なんですよ。ロンドンのFMでもこの曲が紹介された事もあって今回収録する事になりました。
●ジョニー・オズボーン(「Jah Is My Light & Salvation」)やアル・キャンベル(「Moving The Father's Way」)が参加した曲は、曲作りの段階から彼らの声や歌を想像して作ったのでしょうか?
M:ジョニー・オズボーンのトラックは元々「Jah Is My Guide」というインストゥルメンタルの曲があって、NYにいる彼の元までこの曲が届いたんです。それでこの曲を大変気に入ってくれて。しかもコーラスにはグレン・ブラウンまで参加してくれた。アル・キャンベルの曲は、僕が用意しておいたトラックで新曲を作ってくれた。ルーツ・レゲエのアーティストの中では素晴らしい歌声の持ち主だと思うし、今回収録できた事を光栄に思っています。
●ラス・ニコさんが歌う「Super Star」はファン待望だと思いますが。
M:そうそう、この曲はニコさんと初めてレコーディングした思い入れのある曲です。サウンド・システムの最後には必ずこの曲のダブプレートかけていたし、お客さん達にもリリースの事を良く訊かれたし。以前、ホレス・アンディもこのトラックで「Problems」を唄ってくれた。10年経てようやくリリース出来ました。
●本作に込められた想いをお聞かせ願えれば。
M:長く持続して聴ける音楽を念頭に入れて作っています。だから僕の中には流行廃れがない。特に曲構成に関してはルーツ・レゲエは勿論、僕自身、マイティ・マサの音楽性の幅的なものを感じて貰いたいですね。ニュー・ルーツでもコテコテのダブだと「これしか出来ないのかよ!」なんて思われたくないしね(笑)。
●今の国内外の情勢について思うところがあれば。
M:僕達にとってライブドアのメール問題等、何も関係ない。そんな事を議論するだけの電波を使うなら、今現在の税金のからくりや、その使い道をハッキリさせたり、鳥インフルエンザや非行の低年齢化についてもっとメディアを通じて議論すべきじゃないかな? 世界に目を向ければ、9.11.以降、人種差別が進んでるようだし、こうした問題は全て貧困の差が原因なのに、利益を重視した大国の独断と偏見で何万もの人々が犠牲になっている現状を、もっと先進国の代表に解って貰いたいですね。あと、実は既にマイティ・マサの次のアルバムが完成しているんだ。タイトルは『Armagideon Time』。
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