レゲエ界隈のファンからも人望の厚いシンガーKeycoと、“音の魔術師”と称されるトラックメーカー/ラッパーのLibroが、キラキラと透明感のあるトラックにたゆたう色彩感が心地よいユニットFuuri(ふうり)を結成しアルバムもリリース。そんな2人を直撃した。

 Keycoの作品に度々Libroが登場するといった形で関係は暖められてきたが、そんな2人がここにきてFuuri(ふうり:「風狸」という妖怪が由来)というユニットを始動しアルバム『Fuuri』もリリース。キモ可愛いアニメーションPVや「妖怪ツアー」なる映像とリンクする今作だが、あなたなら妖怪と聞いてどんな音を想像するだろうか?

 「妖怪っていうと、ダークだったりブルーだったりっていう冷たい音を想像してしまいがちじゃないですか? 今回の音源は、ほんわか暖かいっていうキーワードで創ってるんですけど、音の持つイメージが妖怪の持つキモさというよりも、その裏にある妖怪というものを生み出した人達のクリエイトする、イマジネーションする力の方を意識してるんですよ。より自由に、より殻を破った音創りをしたいなって」(Keyco)

 「(Fuuriという)名前すらどうでもよくって、ソロの作品の流れとは違う“遊び場”を作るみたいな感じですね。自分がそこでどれだけ上手く遊んでいるかということよりは、その“遊び場作り”が重要だったというか」(Libro)

 「100年前から」や「7th Sense Jam」などSoil & "Pimp" Sessionsのメンバーを迎えた生々しくもスピリチュアルなトラックを聴いていると異常にドーパミンが分泌されてくるし、Keycoのソウルフルで独特の湿度を持つ歌声が堪能できる「Nana Song」や「うらら」といった楽曲は心の奥にそっとしまってある懐かしい風景を思い出されてくれる。それもこれも、透明感とビビットな色彩感に溢れるLibroが用意した“遊び場”の懐の深さがうかがえる。

 「最初に彼に13曲トラックをあげてもらって、もう、順番に組み立ててもらってたんですよ。そうやって彼の中でアルバム1枚の流れを先に作ってもらって、その中で『Keyco、これとこれに歌を付けて』って言われたものに歌を付けてまた(Libroに)返してって感じでしたね」(Keyco)

 「自分の(作品)を好きで聴いてくれてた人には、やっぱり音楽好きであってほしくて。自分が音楽がすごく好きで特に壁を設けずに何でも聴く人だから、そういう気持ちは持っていて欲しいなって。そういうことの確認はどこかしら(今回の音源に)あるんだと思います」(Libro)

 「私だったらここに歌をはめてないはずなのに、彼が入れてるポイントが想像以上によかったり…。色んな扉を開けてもらいましたよね。」(Keyco)

 「そう、だから逆にこれをやったことによって自分のソロを出したいって凄いその気になってて」(Libro)

 自分達のルーツに誇りを持ちつつも、それに固執しないカラッとしたサウンドスケープ。

 この号が出る頃には各所ツアーも回っているようなので、お互いのソロ曲を織り交ぜた過去から現在を繋ぐそのステージでFuuriというユニットのそこはかとない魅力と、1つ上のステージに立った2人を是非とも体感して欲しい。



「Fuuri」Fuuri
[Vap / VPCC-80604]