1997年、Shakkazombie「共に行こう -Version Pure-」に客演して以来、止らない男=Daboが4枚目となるフル・アルバム『The Force』を東芝EMIからリリース。リリック・センスは相変わらず素晴しいが、確実に何かが変わった本作。リリック同様、ひねりの効いた本人の言葉からその答えを読み取って欲しい。

 Yeah....The Force、目に見えぬパワー、この世界を覆う大いなる意志、天を駆ける、疑えどそこにある真実、Yeah、The Force宇宙からの祝福、個を経て流れる、いつしかお前の元へ、感じるか? 受け止めよ……
 アルバムのタイトル曲「The Force」へと繋がるスキッド「〜Be With Me〜」の中で彼はそんな語りを聞かせてくれる。何が変わった? 言葉のトーン? ラップのスタイル? とにかくDaboという「ラップすることが好きで堪らない」天才肌のいちアーティストは、ここでまた新たなるDabo像を見せつけているのだ。“変化”などという表現は“リアルでナンボ”のヒップホップには相応しくないのだろう。だが、彼は変化することを恐れてはいない。何故ならば、根っからの芸術家、だから。そして自分がここに今立っている理由、導かれし訳を“Force”にあると解し、その持てるチカラをフル活用したかのような本作は、Daboのオールマイティぶりと共にヒップホップが持つ可能性の大きささえも再確認させてくれる。そんな境地に彼が辿り着いたワケは? 以下のアンケート形式のインタビューから汲み取って頂ければ幸いだ。

これまでの3枚のアルバム+ミニ・アルバムについてコメントして下さい。
「『Platinum Tongue』→25年間のアイデアの結晶。音楽業界へのデビュー。その経験全てが宝。『Hitman』→その後1年間のアイデアの結晶。マチズモ以外のトピックの模索。その全てが宝。『Diamond』→その後1年のアイデアの結晶。1st+2nd÷2+αの高度なバランス。その全てが宝。『6 Bullets』→その後1年間のストラグルの結晶。インディペンデント精神への回帰。その全てが宝」

自分自身の中での今作の“位置づけ”は?
「『Platinum Tongue』以前の自分への回帰。自分探し」

アルバム・タイトルのいわれを説明して下さい。
「改めのForce、軍隊のForce、4thのForce、Air Force 1のForce、そして自分をここに連れてきた何か大きな力、『スター・ウォーズ』で言うForce」

スキッドを除く全曲が完全な単独曲となっていますが、これは制作当初から意識していたことなのですか? またそうした理由を教えて下さい。
「意識していた。他との差別化の強化でもあり、自分の意見を押し出したいという主張でもあり、いちアーティストとしての自分への挑戦でもあった。まあ、言いたい事が多かったんだね。(スキットに関しては)とりあえずトータルでアタマからケツまで聴いて欲しかったので、曲間の暖和としてやってみた。ヘヴィーなテーマも多いからね、今回」

アルバム制作中のインスピレーションや、おもしろエピソードなどがあれば教えて下さい。
「インヒプは世相。おもしろはツボイ(=The Harbinger Illicit Tsuboi)の氏の制作スタイル。ミックスでビビルほど変わる。アウトロ全取っ換え、とか(笑)」

参加したプロデューサー陣についてコメントして下さい。
「Illicit Tsuboi→異能。鬼才。アーティスト。マレビト。D.O.I.→パートナー。究極の音楽好き。国際的日本人。リスペクタブル。DJ Watarai→天才肌。もち肌。センスの固まり。DJ Taiki a.k.a. Geek→俺の新たな扉を開いてくれた。東京のDJ的視点。ワンダフォー。タイプライター→新世代Trkメイカー。こいつはクルよ。Kura→モチベーション・キング。有能。DJ Tanaken→荒々しき天然。ストリート的ストレート」

アルバムの中で特に思い入れの強い1曲となると?
「ムズ。。。"The Light" で。この曲はメッセージだからね。俺から全てのヒップホッパーへの。そして全ての戦っている人への。そのストラグルを乗り越えるのだ。俺は、越えた」

“Baby Mario Priduction”も含めての今後のリリース・インフォメーションを。
「BMPコンピレーション→俺の好きなアーティスト・シャッフル企画。5thアルバム。ベスト・アルバムって感じ?あとは客演」

 ここで繰り広げられるインテレクチュアルでリリカルな表現の数々が決して取って付けた類のものではないことは、彼を知る賢明なる読者ならば既におわかりだろう。そう、ここには彼自身がヒップホップに、ラップに夢中になり始めた時と同じ様な感覚が確かに息付いているのだ。言わば、90年代前半の“メッセージ”が重んじられていたあの良き時代(本誌がまだタテ構成で、ATCQが表紙になったりもしたあの頃…)を最良の方法でアップデートさせたような本作は『The Force』という看板に相応しい力強い“傑作”だ。彼の“ヒップホップ・ラヴ”度が痛いほど伝わってくるコンシャスなアルバムだけに、門外漢のヒトにも是非聴いて欲しいと願うばかり。カルチャー・ショック受けること間違いナシ、だから。受け止めよ!!


"The Force"
Dabo
[Toshiba EMI / TOCT-25911]