MIX CD
1. Azzurro / Fly Me To The Moon (Miclife)

最近ではイル・スウォーノでの活動でも知られるアズーロが、DJジジィジャイ時代、つまりメロー・イエロー在籍時にリリースしたミックス・テープがCD化。「ジェット・ストリーム」「クロスオーヴァー・イレヴン」のヒップホップ版を意識してセレクト、ミックスしたというその内容は、練りに練られたものだけに何度聴いても飽きないモノ。旅行、移動のお供にこれ以上の“作品”はないと断言します。再発した“マイクライフ”は流石! “続編”もラインナップ。

ALBUMS
2. Bone Thugs-N-Harmony / Behind The Harmony (Handcuts)

故イジー・Eが立ち上げたレーベル“ルースレス”を離れ、約3年振りのグループ名義となる新作。クレイジー、レイジー、ビジーのソロや、レイジーとビジーのコンビ作など精力的なリリースが続いたここ1年余りの間に、クレイジー率いるサグライン・プロダクションズのプロデュースで進められてきたという本作は、その延長線上で楽しむべき一枚となっている(リル・ジョンも参加)。DVDの方には5人勢揃いの映像もあり、元祖ハーモナイズ・ラップの真髄が多目的に味わえる。
3. Doujah Raze / A Proper Introduction (Handcuts)

ワシントンDCエリアからブルックリンに移り、独自の地盤を築いてきたスキルフルなMCのデビュー作。ネガティヴに転換するという彼の信条が生かされたこの名刺替わりの本作には、Mr.シニスタやダ・ビートマイナーズにケヴ・ブラウン、O.C、 AGといった彼の交流図(主にD.I.T.C.〜ブートキャンプ)が見える面子が参加していて、ミッド90's NYヒップホップが色濃く出た仕上がりに。それにしてもストレートに格好良いラッパーだこと…。
4. Talib Kweli / Right About Now (Victor)

“ロウカス”の消滅と共にメジャー・インダストリーとは距離を置き、自身のレーベル“ブラックスミス・ミュージック”で生きてゆくことを決意したマイクマスター=タリブ・クウェリのソロ名義での3作目。サブ・タイトルには“ミックスCD”とあるが全て新録の音源集となっており、ジェイ・ディラやディヴ・ウエスト、シャルルマーニュ、DJカーライルにニードルズといった相性の良いプロデューサーのビートの上でタリブ節炸裂の“切れるラップ”を披露している、という点でも期待通りかと。痛烈なメジャー批判も当然の如く含まれている。
5. Zeebra / The New Beginning (Pony Canyon)

オールマイティであるが故にアルバムごとにその作風、方向性に注目が集まるシーンの先頭馬、ジブラの4作目。今回は“原点回帰”を目指したものであり、昨年リリースのシングル「Street Dreams」も良いポイントとなるヒップホップのポジティヴィティ、クリエイティヴィティの何たるかをジブラならではのやり方で示した実にオールラウンドな大作、となっている。スウィズ・ビーツ、スコット・ストーチ、ジャズ・OらUS勢とのセッションにもタイトルの“理由”が見え隠れしている。何はともあれ“必聴”でしょう!
6. DS455 / To Myself (MCA)

極東流ウエッサイ・スタイル求道者にして、全国規模で盛り上がっている同シーンの先駆者的存在DS455の3rdフル・アルバム。これまで以上に“ライヴ物”が目立つ、成熟した彼らのスタイルがしこたま堪能出来るアルバムとでも言えば良いだろうか…。もしあなたがDSを偏ったイメージで促えていたのならば、その考えも改めさせられること必至。ハードな一面は「Throw Ya Handz Up」他で、メロウな一面は「3 Luv Stories」(フォビア・オブ・サグ参加)と色分けもされているが、どれもが確実に進化している。構成力も相変わらず素晴らしい。 
7. LGY / Jointed 2 Homies (SP)

全国インディーズ連盟“SP”からの第3弾は、仙台の西海岸Crew改めJointed 2 Homiesからの刺客=LGY。HiroとRyoの2MCスタイルで親しみ易いリリックスをメロディックなフロウに乗せて放つ彼らは、ウエッサイの一般的なイメージをいい意味で広げるような多彩なアルバムを作り上げることに成功している。サウンド・プロダクションにはDJのNo.2を中心にII-J、Mucca、Fuekiss!!も参加し、ゲストもGipper、Hyena、Big Ron等々とこのシーンの“横の広がり”を感じさせるものに。 
8. D.O / Just Hustlin' Now (えん突)

所属する雷家族、えん突然レコーディングからの諸作、いやそれだけに留まらない範囲で暴れまくっていた“客演王”D.O(デンジャラス・オリジナル)の待望の1stアルバム。練馬ダ・ファッカーの異名通り、自身のフッドに拘った“作り”であることはそのスタンスからも明らか、だ。どこまでもストリートに根差したハスラー・スタイルで突っ走るそのトーン・ヴォイスは言うまでもなく“キレキレ”だ。Rino Latina II、Twigy、565、Hi-Dのfeat.曲もあるが、それにしても最小限に控えられている印象。独自のキ○ガイ美学が冴え渡る会心作。ヤバイ!!
9. MSC / 新宿 Street Life (Libra)

Juswanna、太華、少佐、麻暴ら新メンバーも加わり、更なる求心力を持つこととなった“ライブラ”、その核となる新宿拡声器集団MSCのフル2作目。前作『Matador』からの変化は、ソロ作もリリースしたリーダー格の漢を始めとするメンバーそれぞれの“進化”そのもの、である。ディティールが細かく、かつ映像的で“言葉の毒”を強く感じさせるラップの洪水は最早MSCにしか求め得られぬものである。マキ・ザ・マジック、イリシット・ツボイ、I・ディア、秋田県どぶろく、シンゴ☆西成、チーフロッカらの関与もプラスに作用した早くも今年のベスト候補作。
10. 韻踏合組合 / Trash Talk (IFK)

大阪アンダーグラウンド・シーン、いやヒップホップ・シーンそのものの代表格となるクルー=韻踏合組合の4作目となるフル・アルバム。赤盤、青盤、黄盤、とここ最近3枚のEPで発表してきた楽曲からのセレクト+未発表3曲、という構成だが、これはこれアルバムとしてもクオリティの高い一枚、となっている。MC陣の核となる2チーム=チーフ・ロッカとヘッドバンガーズによる“戯れ言”を高度なライムスキルで昇華させるスタイルといい、Krevaのトラックも手掛けたエヴィス・ビーツ他による強度のあるビートといい、間違いなく過去最高レヴェルなのでは? ハンガー、ポチョムキンらの参加曲もオモシロい!
11. A.Y.B. Force / Lost Breaks (P-Vine)

アブノーマル・イエロー・バンドの発展型ユニット(?)=A.Y.B.フォースの初アルバム。アナログ市場では既に信頼度絶大の彼らは、“ブレイクビーツ”というバックボーンの上に、ファンキー・グルーヴ、ボッサ、ジャジー・ブレイクス等の様々な要素をちりばめ、機能的で音楽性の高いサンプリング・ミュージックを聴かせてくれる。これまでの12インチではダンス・ミュージックの正しい在り方(?)を提示していた訳だが、このアルバムも勿論その理論(?)に則ったモノだ。

SINGLE
12. P.E.A.C.E. / Twisted Tongue - Mimosa EP (Mary Joy)

フリースタイル・フェローシップ、プロジェクト・ブロウド・ラインの西海岸のフリースタイラー=P.E.A.C.E.のソロ・プロジェクト。映画『フリースタイル』でもその超舌ぶりは披露されていたが、彼のスキルは何も即興に限らない訳で…。予定されている『Papa's Arcade』からの先行カットとなるこのEPでは、シンゴ02とドッグ・マックスによるプロデュース・チーム、ザ・ノックス制作の「Twisted Tongue」とケイヴマンの手による「Mimosa」が公開されている。ドープなトラックとセンス溢れるMCイングの良き融合。