昨年以上に深化を続けるレゲエ・シーン、そして新世代が台頭しより充実してきたヒップホップ・シーン。さて2005年はいったいどんな年だったのか? 本誌でもお馴染の執筆者達による対談と、アーティスト、セレクター、バイヤー、ライターによる個人チャートと共に、2004年12月から2005年11月末迄にリリースされたシーンを象徴する作品をピックアップし、2005年を振り返る。


INTERNATIONAL DANCEHALL REGGAE ALBUMS
On Bond Street / Bitty McLean
[Overheat / Peckings / OVE-0095]
Inna De Yard / Cedric "Congo" Myton
[Makasound / Inna De Yard / IDYCD004 ]
Welcome To Jamrock / Damian "Jr.Gong" Marley
[Universal / UICU-1101]
Hail The Jah / Fanta Mojah
[Greensleeves / GRELCD287]
Comin' In Tough / Freddie McGregor
[Victor / VICP-63166]
Lava Ground /
I Wayne
[VP / VP1702]

Freedom Blues / Jah Cure
[VP / VP1718]
Tough Life / Junior Kelly
[VP / VP1707]
The Trinity / Sean Paul
[Warner / WPCR-12140]
Soul Deep / Sizzla
[Greensleeves / GREL285]
Unknown Language / T.O.K.
[Victor / VICP-63079]
Hold The Faith / Warrior King
[VP / VP1708]

DOMESTIC DANCEHALL REGGAE ALBUMS
999 Musical Express /
Fire Ball
[Toshiba EMI / TOCT-25685]
レゲエ馬鹿三昧 /
H-Man
[Overheat / OVE-0092]
Clone Of Grown / Home Grown
[Overheat / OVE-0094]
Doko / Ken-U
[Bacchnal 45 / BACD-003]
G-Style XX / Kenty-Gross
[Victor / VICL61550]
Brand New Style Hi-Fi /
Mighty Jam Rock
[Victor / VICL-61697]

Link Up / Moomin
[Universal / UPCI-1021]
Untouchable / Papa B
[Toshiba EMI / TOCT-25686]
One Big Family / Papa U-Gee with Zion High Playaz
[Zion High / ZH004C]
アミシャツ魂 / Rankin Taxi
[Overheat / OVE-0093]
Come Home / Ryo the Skywalker
[Bush Hunter / BHMW-3003]
Vibes Up /
U-Dou & Platy
[Blue Inc. / MYCD-35017]
★CDs Are Listed In Alphabetic Order★

International Dancehall Reggae Albums
渋谷:どう考えてもDamian "Jr.Gong" Marley『Welcome To Jamrock』じゃないですか! 前作も良かったけど、Stephen Marleyの才能を推し量れる作品ですよ。お父さんのオケ使い放題というのも大きい(笑)。
アオキ:確かにレゲエじゃない売れ方ですね。ヒップホップやR&Bファンも普通に買ってますし。売れたと言えば新曲は少なかったけどT.O.K.『Unknown Language』。あとDa'Ville『In Heaven』も一般層には売れました。
八幡:Sean Paul『The Trinity』は前作があれだけ売れて今回はどうするかと思ったら、ジャマイカ勢で押してきて…その心意気はかっこよかったかな。でもシーンとしては、I Wayneとかやっぱりルーツ&カルチャー系の流れがありますよね。
渋谷:内容で言えばWarrior King『Hold The Faith』はバッチリだったじゃないですか。あとSizzla『Soul Deep』。この先、この中から当る曲が出ますよ。それとFantan Mojah『Hail The King』と少し古いけどJah Cure『Freedom Blues』ね。やっぱり今年は治安の悪化でダンスホールどころじゃないですよ。確実に音楽に影響が出てますよね。その分、アルバムとして聴ける作品が増えましたけど。
大石:Assassin『Infiltration』もキッチリした内容でしたね。
アオキ:毛色は違うけど、African Head Charge『Vision Of A Psychedelic Africa』なんか90年代の作品より完全に上でしたね。
渋谷:Bitty McLean『On Bond Street』も凄い良かったじゃないですか。オケも歌も100点じゃないですか?
八幡:あとEarl "Chinna" Smithがプロデュースする『Inna De Yard』シリーズは個人的にハマった。05年だけで4作品かな? 特に最近出たCedric "Congo" Maytonのがヤバいんだよね! 癒されると思って聴いても全く癒されない、これぞ正にレゲエ。
アオキ:本当これはヤバイですよね!

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International Dancehall Reggae Singles
渋谷:04年はニュー・ダンスをやらなきゃ始まらないみたいな年だったけど、完全に変わったよね。流れを変えたという意味でVoice Mail「Tribute To Bogle」。Bogleの死は象徴的だったと思いますよ。代表的なリズムと言えばやっぱり "Seasons" かな。
八幡: "Seasons" ならWayne Wonder「I Believe」はよく現場で聴いたイメージがあるな。現場で一番かかったと言えば?
渋谷:Voice Mail「Tribute To Bogle」、Damian "Jr.Gong" Marley「Welcome To Jamrock」、Gyptian「Serious Time」とか。でもやっぱりJr.Gongが強かったですね。
アオキ:あとMr.PerfectとかGentlemanとかね。
渋谷:Mr.Perfectとか最近の若いラスタマンは皆いいですよ。ダンスホール系の若い奴等もいいし、そろそろ世代の切り替え時期かもね。
八幡:あと90年代っぽいオケとか面白かったな。それを念頭に入れたリズムも多かったし。
渋谷:その一発目が "Sleepy Dog" でしょ、Assassin「As A Man」。で、"Giggy" があって…。"Ice Breaker" も良かったですよね、特にBusy Signal「Not Going Down」とか。あとやっぱりJah Cureかな?
八幡:T.O.K.「Footprints」のヒットもある意味デカいよね。でも、流れ的にはカルチャー系に移行してたけど、ダンスホール系とカルチャー系の共存ってのが面白かったよね。 
渋谷:確かにね。でも、05年の感じ的にはやっぱりGyptian「Serious Time」ですね。05年の殺人事件の件数を聞くと引きますよ。最悪と言われた04年より3割増! だいたい一晩で5人平均で被害にあってる計算ですから。
八幡:でも、誰も知らなかったGyptianがこの曲でがっちりロックしちゃうってのは、ジャマイカの面白さだよね。
渋谷:その流れでJah Cure「True Reflection」があるんじゃないですか? 今年のシーンはカルチャー系に塗り替えられましたね。06年はもっとカルチャー系に塗り替えられますよ。
八幡:Turbulenceも「Notorious」とかでぐっと格を上げたしね。でも、カルチャー系が流行ればその反動もあるだろうしね。
渋谷:こういう状況になるとBounty Killerがどう出てくるか、きっと06年一番美味しいとこを持っていきますよ。
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Domestic Dancehall Reggae Albums
八幡:リリースってよりも全国各地の野外イヴェントが04年以上の数と盛上りで。
アオキ:タワーで一番売れたと言えばKen-U『Doko』ですね。その流れもあってHemo & Moofireが制作した『Indian Summer』。大阪だとやっぱりMighty Jam Rock『Brand New Style Hi-Fi』が強いですね。
渋谷:Ken-Uは全国どこの街に行っても強かったですね。勿論タイトル曲の強さもあっただろうけど、Ken-Uを見てみたいという声はよく聞きましたね。
大石:Fire Ball、Mighty Jam Rock、Ryo the Skywalker、Moomin、H-Man、Papa Bとか出すべき人が当然の様に出してきて、しかもそれがことごとく前よりもよくなっているという。彼らがきっちり出しているからKen-Uが飛び抜けた感が余りない、というのもあると思います。
八幡:個人的にはMighty Jam Rockの作品が凄くきっちり作られていると思った。Mighty Jam Rockの世代がきっちりやってるから若い世代が出来るというのもあるしね。若手の中で自由にジャマイカの“今”を体現してると言えばKentty-Gross『G-Style XX』だね。
Fly-T:ヴェテランだとPapa U-Gee Meets Zion High Playaz『One Big Family』が良かったですね。
大石:ヴェテランと言えばRankin Taxi『アミシャツ魂』は『Oyajinal Best』と併せてよく聴きましたね。
八幡:Rankin Taxiと同様、変わらず本当に頑張っているなあと思うのは、Nanjaman(『Mi No Like Then』)とBoy-Ken(『Education A De Key』)だね。継続している凄さはたくましくもありますよ。彼らが本当のレゲエ好きだというのと、その半端じゃない本気さが凄く伝わってくる。
渋谷:観客もそれを分って応援しているというか、裾野が広がって理解する人も増えたと思いますよ。
八幡:観客もジャパレゲのフェスだ、タオルだ、ライターだってところから一歩進んで、各アーティストへの理解度が増したし、シーンというよりもそれぞれのアーティスト単位で誰それが好きだと言える人が増えましたよね。アーティストも独自でイヴェントやって独自にファンを得てきているし。
渋谷:ブームだって言われてるけど、もう3年も4年も続いてるんだから既に定着から成熟へ向かっているんですよね。あっ、NG Head『Headline』を忘れてた! 嬉しかったし、内容も物凄く良かった。
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【Domestic Ska, Rock Steady & Roots Reggae Albums
Fly-T:待ち望まれていたレゲエ内ジャンルの融合がみられましたね。Cool Wise Men『Unity』にPapa U-Geeとかカルカヤマコトが参加したり。
アオキ:Cool Wise Menの作品はレゲエ的聞き方をしている人が気に入る様な作品ですね。
大石:04年はDeterminations以降のバンドが余り出てこないね、という話をしましたが、それに比べると色々な作品があった。Frisco『Melodyline』だったり、巽朗&The Cassette Con-Los『King Goes Calypso』だったり、今野英明の2作品だったり…。レゲエと言えばレゲエ、レゲエじゃないと言えばレゲエじゃないいい作品が多かった。Dubsensemaniaの『Versatility』もレゲエなんだけど、思いっきりレゲエじゃない曲も入ってたり。それらが内容もいいのが多くて。The Ska Flamesの10年ぶりのアルバム『Realstep』は待望感があったし。
八幡:レゲエの持つ幅広さを表すバンドが増えましたよね。やってる側がスカ、ロック・ステディは勿論聴いているけど、自分の価値観を持っていてそれをちゃんと提示してるからだと思います。彼らのファンだって色々聴いているしね。世代が融合してるのもこの音楽ならではだし。
大石:現場も活気があるから、今以上にジャンルや世代の融合が進めば、もっともっと面白くなるでしょうね。
Fly-T:ここであがらない様な予備軍が凄く多くいますから来年に期待ですね。
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【Re-Issue & Re-Compile Albums
渋谷:やっぱり『Earthquake Dub』かな?
大石:Ossie Hibbert関連なら『Leggo Dub』もずっと聴きたかったし。あと『Dread In Dub』ですね。
八幡:再発で出まくったなあと言えばD.E.B.音源。
渋谷:ミソもクソも出てしまったかなあと。15-16-17『Magic Touch』とか聴きたかったのは幾つかあったけど、もう少しなんとかしてあげればね。D.E.B.から出てるDennis Brownの7インチって結構ルーツ色が強いから余りラヴァーズと括るのは…。
八幡:D.E.B.の再発をした同じBaddaからCarroll Thompsonの『Carroll Thompson』も遂に出た。
アオキ:一番ヤバイなって言えば『Caltone Special』ですよね。オークション物ばかりが入った奴でコレクター泣かせな一枚です。あと『Culture In Dub』とかSingers & Players『Leaps & Bounds』、アナログだけだけどLacksley Castell『Princess Lady』とか。
八幡:Peter Tosh『Talking Revolution』の2枚目のアコースティックの方は良く聴いたな。
アオキ:Wackie'sものはあらゆるリスナーに渋く売れますね。その中でも今年はHorace Andy『Exclusively』が人気でした。この手の作品ならタワーでT.O.K.が1位としたら10位には入りますよ。
渋谷:TrojanならDennis Brown『Money In My Pocket』。何か珍しい曲が入ってるって訳じゃないけど、レーベルを越えていい曲が全部入ってるからね。黙って聴いてるだけでいい作品集です。あと、やっぱりBob Marley & The WailersのJAD音源ボックス『Man To Man』でしょ。これは面白い! 
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【2005年を振り返って】
渋谷:ジャマイカは治安の悪化でニュー・ダンスが崩れてきてしまったと思います。Bogleの死はシーンに冷や水をぶっかけた様なものだと思いますよ。カルチャー系に傾くのは当然だと思うし、もうちょっと続くと思います。でもルーツ&カルチャーって誰でも参加出来てストレートに表現出来るから、新しい才能が出てきて面白いと思います。レゲエってのは我々東洋人が心配する事なく進化と浄化を繰り返してどんどん面白くなっていきますね。日本のシーンはファンが成熟しつつあると思うので、更に文化として深化していけばと思います。
アオキ:再発ではOn-Uの中でもレアな作品が再発されたりして嬉しかったですね。またそこから入ったファンに如何にもっとレゲエを聴いてもらうかだと思います。まだまだ奥は深いんで。
Fly-T:国内のレゲエのジャンル内ジャンルの壁がなくなる兆候が見えてるんで、06年はそれが加速してもっと面白いシーンが出来るんじゃないかと期待してます。どんなタイプのレゲエをやっている人でも色々なものを吸収しながら突き進んで欲しいですね。そうすればもっと面白くなると思いますから。
大石:日本のシーンを振り返れば、渋谷さんがおっしゃったように、もうブームではなくて安定期というか成熟期になっていると思います。その中でコンスタントにアルバムを出している人達がちゃんといいものを出しているというのはもっと評価されるべきだし、確実に06年に繋がると思います。音的には更に異種勾配的な広がりをもてれば盛り上がっていくと思います。あと06年もジャマイカのアーティストをいっぱい観たいし、観てもらいたいですね。
八幡:T.O.K.にしろ、Sean Paulにしろ、Damian "Jr.Gong" Marleyにしろ、ジャマイカのものがワールドワイドのメイン・ストリームで支持されているという事がいいですね。日本国内もそうだけど、レゲエ側の人がちゃんと発信しているものが確立して成熟していく姿を見るのは面白いです。あとブームを越えてファンがそれぞれに好きなレゲエ、好きなアーティストを求めている状況になったと思います。当たり前の事を当たり前にやって、その中から出てきたいいものを沢山聴かせてもらい楽しませてもらう…それは健全な状態だと思います。あと06年にはジャマイカ人による良質なコンサートを沢山開催して欲しいですね。

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●アオキ“KING”タイチ/タワーレコード新宿店バイヤー。本誌では「Phat Eyes, Phat DVDs」コーナーを担当。
●大石 始/音楽ライター。純然たる音楽ファンだからこそ、あらゆる角度からレゲエをとらえることが出来るライター。
●渋谷“Thunder Killa”知憲/Taxi Hi-Fiセレクター&レゲエ・ライター。幾つかの音源制作にも携わっている。
●FLY-T/ラバダブ・マーケットを経てソロ活動で気を吐くDJ。本誌では「Lead The Leader」を担当。
●八幡浩司/24×7 Records代表。レゲエ・ミュージックの発展のために日夜宣伝活動に奔走中。本誌でも度々記事を執筆。
●大場俊明/「Riddim」編集長。今回も様々な意見をまとめるべく司会進行役を担当。

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JAPANESE SKA, ROCK STEADY, ROOTS & DUB ALBUMS
Unity /
Cool Wise Men
[Galactic / GLOR-0017]
Versatility / Dubsensemania
[Sony / AICL-1646]
Melodyline / Frisco
[Lastrum / LACD-0083]
9 Miles / 9 Miles
[Ghost Rider / GR-0004]
Realstep / The Ska Flames
[Sun Shot / DLSS-2001]
King Goes Calypso / 巽朗 & The Cassette Con-Los
[King / KICS-1190]

RE-ISSUE & RE-COMPILED REGGAE ALBUMS
Carroll Thompson / Carroll Thompson
[Badda / BMSGCD21]
Magic Touch /
15-16-17
[Badda / OTLCD-1034]
Exclusively / Horace Andy
[Wackie's / WRLP0107]
Leggo Dub / Ossie Hibbert
[Beat / BRHP-1004]
Earthquake Dub / Ossie Hibbert & Revolutionaries
[Beat / Hot Pot / BRHP-1002]
Caltone Special / V.A.
[Attack / ATTACKCD16]
★CDs Are Listed In Alphabetic Order★

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