10月8日、土砂降り。クィーンズのアマズーラからブルックリンのエリート・アークに会場が移され、激戦になることは必至。クラッシュ好きのみならず、一般にブルックリナイト(BK住人)は気性が荒いことで知られている。第一ラウンドの最中に滑り込んだところ、悪天候をモノともせず、会場がすでに一杯になっていた。マイティ・クラウン(日本)→ベース・オデッセー(JA)→インモーラル(英)→デザート・ストーム(カナダ)→センティナル(独)→ブラック・キャット(JA)の順。インモーラルとデザート・ストームは端から半分無視され、WC客のキツさを再確認。歓迎ムードを受けたのは、今回のダークホース、センティナル。このラウンドはエリミニーションなし。セカンドの頭でマイティが選曲、MCともハズしてブーイングを受ける緊急事態が発生。あわや、と思ったが、撃沈したのは名前が「不死身」なのに最初から死に体だったインモーラル、竜巻どころかそよ風も起こせなかったデザート・ストームだった。好調だったのは、ブラック・キャットとセンティネル。
サード・ラウンド。後がないマイティ・クラウンは大将サイモンが全面に出て、惜しげもなく短めにダブをガンガン繋ぐ戦法に出て、持ち直した。MCがスクィンジーではなくウォーム(みみず君)だったベース・オデッセーは、新しいサウンドみたいな扱いとなり、スピーカーに登ってのスタンド・プレーで沸かした。センティナルは現状維持、ブラック・キャットは今ひとつ。このラウンドの判定は微妙。なぜなら、ラウンド毎の勝者となると、贔屓目なしでマイティが取ったはずが(フォトピット内のほかのライターも同意見)、「どのサウンドが消えるべきか?」と客に訊いたら、消去法でやはりマイティになってしまったのだ。
サード以降はヴェテランのブラック・キャットとマイティ、新顔のオデッセーとセンティネルとを二つに分けたダブル・スタンダードが観客の間であったように思う。つまり、期待が高い分、よりヴェテランに対して厳しかったのだ。個人的には、Super-Gとニンジャも活躍したこのラウンドでのマイティのチームプレーは新鮮で、とても良かった。すっきりしないまま、次のラウンドに突入。反応は互角だったが、「飽きた」とばかり観客はみみず君を葬り去った。ラストのチューン・フィ・チューンは超接戦。センティネルがストレートで5曲勝った後、流れがブラック・キャットに移ってタイまで追い上げた。
ダウン・ビートのトニー・スクリュー御大、自分もよく闘っているカメラマン、アジャムーが揃って、ドイツ人の選曲に対して「ブルックリンでは渋すぎる、難しすぎる!」とコメント。そうなんだ、と思っている間にそのセンティネルが最後の1曲をジュニア・バイルズでキメて逃げ切った。「ヨーロッパのサウンド・ブームもスゴイよ」とイタリアはワン・ラブのランパ叔父さんが夏に教えてくれた一言が生々しく蘇り、世界一の音の格闘技は幕を閉じたのだった。
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