●前作から今まで、精力的にツアーをこなしていたようですが、ジャマイカにいる割合と、海外にいる割合ではどちらが長いですか?
Warrior King(以下W):海外にいる割合の方が少し多いかな。
●その間、ジャマイカでラスタ系のアーティストがたくさんヒットを放ちましたが、それについてはどう感じてますか?
W:ポジティヴな音楽が力を持っているのはいいことだ。俺が出て来た時は、それほど大きな動きになっていなかったからね。それに、今、ヒット曲を放っているアーティストの多くは俺と同世代だから、仲がいいんだ。同じポートモアに住んでいる人も多いし。
●リッチー・スパイス、アイ・ウェイン、ジプシャンもそうですし、ポートモア在住のラスタ系アーティストが好調な理由は何でしょう?
W:俺も不思議に思っているんだけど、エネルギーが溜まっているのかな(笑)。ジャーの力が強く作用しているのかもね。次はクラレンドンかも知れないし、その次はセント・メリーから出てくるかも知れないけど。キングストンまで20分で出られることも大きいかな。その点は、カントリーから出て来たアーティストより有利だ。プロデューサーもいっぱい住んでいて、地元にスタジオもある。設備は簡素だけど、丁寧にやれば質の高い音楽を作るのは可能だ。最近、パーシスタンスと作った「Foundation」もポートモアで仕上げたよ。
●『Hold The Faith』の制作期間は?
W:はっきり答えづらいけど、いいものを作りたかったから、時間をかけた。ハーモニーを付けたり、マスタリングをしたりでさらに時間がかかるし。きちんとメッセージを届けるための音楽だから、急いで作っちゃいけないんだ。
●前作に比べて、圧倒的に楽器を使用したトラックが多いのも時間がかかった理由でしょうか?
W:そうなんだよ。ミュージシャンもディーン・フレーザーやファイアハウス・クルーといった一流どころだし。
●音楽性は前作の延長線上にある印象を受けましたが、打ち込みのトラックの割合が減った点は大きく違いますね。
W:主立った違いはそれだろうね。それから、俺の歌唱力と精神力がグンと成長している。楽器を使った音楽は、コンピュータで作った音楽より長生きする。ボブ・マーリーのCDを20年後に聴いたとしても、昨日録ったように聞こえるはずだ。次の世代まで聴いて欲しいから、楽器を使うことにこだわった。
●ボブ・マーリーと言えば、彼やバーニング・スピア、フィリス・ディロンの言葉やメロディー、「Pass The Kouchie」のリディムも採り入れていますよね。それもあって、耳に馴染み易い仕上がりになっていますが、これは自分のアイディア?
W:自分とプロデューサー達両方のアイディアだね。「Pass The Kouchie」は俺から出した。
●特に仕上がりが気に入っている曲は?
W:「Another Love Song」と「Can't Get Me Down」が特に好きかな。でも、やっぱり全部好きだね。全部、ルーツ・ミュージックだし、それぞれ、俺自身のどこかしらに繋がっているから。色々なヴァイブやムードが入っているんだ。
●その「ルーツ・ミュージック」が意味するところをもう少し教えて下さい。
W:ルーツとは生きている音楽、楽器を使っている音楽、より実質的でコンシャスなものを指す。
●「Education」は「学校に行きなさい」という明確なメッセージを持った曲ですが、シングル主体でアルバムはあまり聴かれないジャマイカで、この曲を子供達に確実に届けるために具体的に考えていることはありますか?
W:それ、他のジャーナリストにも言われたんだよ。それで、マネージャーと話し合った結果、教育委員会にキャンペーン・ソングとして提供しようと思っている。俺自身も学校に赴いて、子供達の前で話をしたり歌ったり聖書を読んだりしたい。
●世界をツアーして、何か強く感じたことがあれば。
W:人間はみんな同じで、平等に扱われるべきだということ。俺達は一つなんだ。肌の色や宗教の違い関係なく、感じ方は同じだ。ただ、父方に日本人の血が少し入っていることもあって、俺は日本の人に対して特別な感情を持ってはいるけどね。特別にサポートしてもらっているし。日本語も好きで、結構話せるよ。
●ありがとうございます。着実にキャリアを積んでいますが、お手本としているシンガーはいますか?
W:ベレス・ハモンドとルシアーノだね。ボブ・マーリー、ガーネット・シルク、デニス・ブラウン、ピーター・トッシュもファウンデーションだけど、今活躍している中ではこの二人がメンター(偉大なる先輩)だ。
●今回のアルバムはほぼ完璧な出来ですが、あえて言えば1、2曲コラボレーションがあっても良かったように思います。
W:それは次のアルバムに取ってあるんだ。今回は、ウォリアー・キングが独り立ち出来たことを示したかった。
●日本のファンに、アルバムの聴きどころのアドヴァイスをもらえますか?
W:日本には日本語があるけど、英語も分かるみたいだからリリックを自分なりに理解して欲しい。音楽は踊るためだけではなく、ソウルのためにあるんだ。俺の音楽は聖書からの引用も多いし、それを聴いて元気を出して辛い時を乗り切って欲しい。何かしら学んで、強くなってもらいたいね。それが、ポジティヴ・ヴァイブレーションなんだ。
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