MIX CD
1. V.A. / Street Vibes 2005 Non-Stop (Universal)

レゲトンをメインにダンスホール、ヒップホップ、R&Bの“実はいい曲”でまとめたコンピ・シリーズのノン・ストップ・ミックス版が登場。手掛けるは傑作ミックス・テープでも知られる、ここ日本における“レゲトン伝導士”的役割を果たしたDJ Yukijirushi! ダディー・ヤンキー「Gasolina」と並ぶ代表曲「Machete」から始まる前半のレゲトン・ゾーン、そして中盤のダンスホール・セグメントは特に本誌読者に刺さること間違いナシ。流石、DJ Yukijirushi、バッチリ上げてくれます。

ALBUMS
2. 50 Cent / V.A. / Get Rich Or Die Tryin' (O.S.T.) (Interscope)

50セント版『8マイル』的な半自伝の意味合いの強い初主演作のサントラ。これが50本人名義の新曲9曲に、ロイド・バンクス、ヤング・バック、トニー・イエイヨー、新加入のオリヴィア、モブ・ディープ、M.O.P.らのニュー・トラックでまとめた“Gユニット・オールスター・アルバム”となっている。先行カットの「Hustlers Ambition」が映画本編を最もよく表している曲なのだろうが、“今の50の立場”で歌った「Talk About Me」等気になるモノばかり。Gユニット入りしたメイスをフィーチュアしたあの曲も入ってます! 早くも1年後の姿が気になって仕方ないが…。
3. The Notorious B.I.G. / Duets : The Final Chapter (Warner)

以前から噂されていたビギーの“デュエット・アルバム”の最終章が遂に…。ボブ・マーリィとの「Hold Ya Head」も既に話題だが、生前対立していた2パックとの「Living In Pain」が涙物の仕上り!(ナズとメアリー・J・ブライジもフィーチュア)。その他のゲストも、ディディ、エミネム、ジェイ・Z、ピッグ・パン、スヌープ、ザ・ゲーム、ネリー、ミッシー・エリオット、R・ケリー、KORN等々、と業界総出のプロジェクトの様相。しかし“主役”はあくまでもビギー。これは必聴。
4. The Roots / Home Grown! The Beginners Guide To Understanding The Roots Vol.1 (Universal)

“ゲフィン”を離れ、ジェイ・Zが新たに興した“デフ・ジャム・レフトへと移籍することになったヒップホップ・バンド ”ザ・ルーツのこの10年余りの歴史をとらえたベスト盤。コンパイルはリーダーのクエストラヴ自身が手掛け、どちらも収録可能時間ギリギリまでベスト・テイク、及びレア・テイクが詰っている。ロイ・エアーズとのセッション「Proceed 2」から、『Organix』ヴァージョンの「Essaywhuman?!!!」や「Don't Say Nuthin」のリミックスにジャイルズ・ピーターソンによるBBCラジオ・ショウ等、聞き逃せない音源ばかり。

5. Fort Minor / The Rising Tied (Warner)

リンキン・パークのMC=マイク・シノダのソロ・プロジェクト=フォート・マイナーの初アルバム。彼曰く「オーガニックなヒップホップを作ってみたくなった」ということで、90年代始め頃のオーセンティックなヒップホップの意志を受け継ぐことを露にしている。尤も彼や、彼がクリエイティヴ・ディレクターを努めるリンキン・パークは、リミックス盤『Reanimation』やジェイ・Zとの『Collision Course』にて“ヒップホップへの愛情”を示してきたのだが。生音に拘ったダイナミズム溢れるアレンジも聴き物。エクゼクティヴ・プロデューサーはジェイ・Z。
6. Daddy Yankee / Gasolina 2 (Universal)
“キング・オブ・レゲトン”の新作は、ライヴ盤にスタジオ新録をプラスした変則的な内容。しかもDVDとの2枚組。これを見れば彼がいかに世界中で受けているのかが判る、というもの。“キング”の看板を背負ってアリーナ、スタジアム・クラスの会場を満杯にし、タオルをブン回す彼は正に“ハイ・エナジー”そのものだ(「Gasolina」での盛上りっぷりは凄まじい!)。新録曲の方もペプシCF曲「Rompe」から、スヌープ・ドッグ、ポール・ウォールらとのコラボ曲まで話題になること必至。 
7. Knoc-Turn'Al / Return Of The Hustler (P-Vine)

ドクター・ドレーにその才能を認められ、一昨年前に仕切り直しデビューを計ったウエッサイの大器ノクターナルの新作。売れっ子プロデューサーを集めた前作も確かに素晴らしかったが、本人がプロデュース・ワークの部分でも非凡なところを見せる今作は、彼の個性がより際立ち思わず引き込まれてしまう。バブル・モンキーズなるプロデューサー・チームと共に手掛けたそのビートはドレー・スタイルからライヴ・ファンクまで幅広く、しかも西海岸のノリをキープしたもので、本人のラップや歌から滲みでるファンクネスも相当濃厚。 
8. The Game / Untold Story (Victor)

'05年に一番売れた“新人”となったザ・ゲームのインディー時代の1stアルバムがようやく日本盤化(対訳がスバラシイ)。ザ・ゲームと言えばドレーや50セントよりも先に目を付けた男がいた訳で…。その男こそがジャケにチョロリと写っているJT.ザ・ビガ・フィガである。彼が主宰する“ゲット・ロウ”よりリリースされた本作は。ベイ・エリア・シーンにこの人あり!のショーン・Tのプロデュースで、フィルモア To コプトンを地で行く内容、となっている。02年当時からザ・ゲームは既に“規格外”だった、と誰もが思わざるを得ない佳作。
9.神 / ザ・パンチ (妄Records)

リリース・ラッシュの妄走族及び妄レコーズ。その先制パンチとなるのがこの神の1stソロ。タイトルにある“パンチ”とは彼のトレードマークでもあるその髪型であり、パンチラインでもあり…とにかくその見事なキャラ立ちっぷりがフル・アルバムで味わえるのは“楽しい”としか言い様がない。そう楽しいからこそ、危険。ラップのハード・パンチャーぶりは言うまでもなし。プロデューサーはGas CrackerzのZorro、Denを中心にLucha(レゲトンも有)、Subzero。パンチの如く巻けば巻くほど(=聴けば聴くほど)味が出るアルバム。
10. Kenta5ras / Stick To My Gunz (妄Records)

続いては葉隠のメンバーでもあるKenta5rasの出番。ワイリー・コヨーテ的なキャラクターの彼のリリカルな男気スタイルは、ソロ・アルバムとなるとまた光り方が違う。シリアスなメッセージからビッチ囃やディス・チューンまでを完全に同列に扱ってしまえるその器の大きさは2パックあたりに例えられ然るべきだろう。Zorro、Den、Vatora、Subzeroらの繰り出す、アッパーに走り過ぎることのないトラック群もこのMCの持つ独特のグルーヴをよく引き出している。
11. Motoy / Rhyme Rhythm #2 (P-Vine)

B-Boy Park MCバトル2000年度準優勝者云々、という説明ももう必要ないくらい“制作”方面にも力を入れているMotoyの2ndアルバムが、Himukiの“世界”を見据えたアルバム『Liberal-ism』のリリースもあった“ルール・レコーディングス”より登場。プロデュースをそのHimukiと、A.Iの2人が努め、ノリの大きなファンキーでどことなくオリエンタルなトラック群の上でMotoyが持ち前のフリーキーなフロウを放つ、という黄金律が完全。パーティー・スタイルの「夜中」から、畳み掛けるファストラップが映える「1〜6」、カーペンターズ「Yesterday Once More」のカヴァーまでバラエティにも富んだ一枚。
12. D.L / D.L presents The Music Revolution β(Ki/oon)

ソロ名義では「Music Evolution α」以来となる“ラップ入り”の新作E.P。今年屈指の名盤『Kurofune 90000』を経て、あの無敵の3本マイク=Illmatic Buddha MC'sのリユニオンも見据えて、“やり残したことをやるため”動き出した、というワケだ。その第一弾となるこのE.Pは、山下達郎バンドにいたリズム・セッションと外池満広を迎えた「Music」と、同メンツで録ったもう一曲の「Must Be The Music」(プレリュード!)で構成されたもの。組み上がったトラックを生でリプレイしたファットな音とD.Lの覇気あるラップ…。他に何がいる?