昔、米BUDDAHレコードが出した5枚組LPの箱物『black america』というのがある。マーテイン・ルーサー・キングの演説や、ラングストン・ヒューズの詩、ジェイムズ・ボールドウィンの著作の作者本人による朗読などが収録されている。ひょっとすると「日曜日」のラジオ番組の特集何週分かをそのままLPにしたのかも知れない。その冒頭、1枚目が「バッファロー・ソルジャー」に与えられているのだ。 パンフレットには、ボブ・マーリーのその曲の12インチとそっくりなイラストが載っている。アメリカ黒人闘争史の第一章をネイティヴ・インディアンに与えたつもりなら、とても興味深いのだが、どうも彼らの歴史は相当こんがらがっているようで、例えば米西戦争での役割など、「心情的に」ですらどっちの味方、などと軽々しく言えない。 もともと高潔な志があって手にしたものでもない。ブレイク・ビーツに乗せてかけられる「語り」のレコードを探していただけだ。で? 僕が週末ごとに新宿のOPENをブリブリさせていたころに来たことのある人は、聞いているかもよ。誰でも知ってるアスワドの「ウォリアー・チャージ」の、ラップ・ヴァージョン。あれはこのボールドウィンのファンキーなしゃべりと「2枚がけ」してたんだ。彼の『もうひとつの国』を、死ぬまでにあと何度読めるだろう。毎晩、本棚が手の届くベッドで眠っているのに。 ※長いことこのコーナーを楽しみにしていてくれた皆にメルシー。またどこかで。 |