2005年12月号


Ninjaman

Greetings Friends,

Anthony BはBobo Dread(またはBobo Shanti)のコミュニティの中のフロント・ランナーとして疾走してきた。彼はRichard 'Bello' Bell主宰のTrail Labelから1996年リリースされたデビュー作『Real Revolutionary』(米盤は『So Many Things』)でいきなり脚光を浴びたアーティストだ。しかし、1999年発表の『Seven Seals』辺りから一種の行き詰まり感が漂い始めたように思える。彼の歌には自信が感じられず、Sizzlaのようなキーをはずした歌い方はかなり耳にはキツイ印象を受けた。彼は同作から2004年の『Untouchable』までの数年間に少なくとも10枚のアルバムと、数えられないほどのコンピに出来、不出来にかかわらず曲を提供した彼だが、南ロンドンのFashion Studio出身でMaximum SoundのFrenchieによるアルバム『Powers Of Creation』でやっと自信を取り戻したようだ。このアルバムは大ヒットを記録。そして僕らがAnthony Bというアーティストを再発見した1枚になった。しかし、最近リリースされたFrenchieプロデュースによる『Black Star』がそれ以上の高評価を得ており、デビュー当時の作品以来の最高傑作と称されてもいる。このアルバムでは、彼がまだ若かった頃を彷彿させる歌声を刺激的なリズムと共に聴くことができるのだ。

おそらく最高のレゲエ・ムーヴィであろう『Rockers』が25周年記念エディションとしてDVDで再リリースされた。いつもこの映画のヴィデオを探すのが難しく、1980年代に僕が持っていたテープも近所のビデオ屋からレンタルしたものをコピーしたものだった! この映画、少し前にDVD化されているのだが、このエディションはリマスタリングにより画質と音質が格段に向上していることがセールス・ポイントだ。それに豪華なブックレット、Theodoros Bafaloukus監督のインタビュー、出演ミュージシャンやアーティストのバイオグラフィなど様々な特典が付いている。まだ買っていない、もしくは、未だにこの映画を観ていなければ、是非購入して欲しい。ガッカリすることはないだろう。The Wailersを除く1970年代のスター・アーティスト達が総出演していて、最初から最後まで目が離せない傑作だからだ。

世界的なカントリー・シンガーのWillie Nelsonが『Countryman』というレゲエ・アルバムをリリースしたことをご存知だろうか? レゲエ・トラックのセルフ・カヴァー・アルバムといった趣向らしいが、Jimmy CliffのカヴァーとTootsとのデュオも収録されているらしい。カントリー好きで有名な国ジャマイカでは、既にラジオで頻繁にオンエアーされているようだ?!

公開後すぐにDVD化が決定する『Rude Boy』や『Gangsta's Paradise』といったB級映画に出演し、最近は俳優としての活躍が目立つNinjaman。そのNinjamanがジャマイカのSt. Maryで交通事後にあったようだ。彼にとってなんと今年2度目の交通事故だ。3人の負傷者と共に彼は病院に搬送されたが、治療終了後に病室の窓からジャンプし逃走したらしい。この一報を受けた警察は事故のいきさつを聞くために彼を探しているようだが、まだ彼は捕まっていない模様だ!

ヒット・ソング「Cherry Oh Baby」で知られ、各種フェステイバルに頻繁に出演するシンガーEric Donaldsonが、同じカリブ海に浮かぶ小さな国St. Vincent & Grenadaに入国の際、マリファナ所有で入国拒否されたらしい。ジャマイカがマリファナ栽培や喫煙に対して非常に寛大なお国柄であることを本誌読者に今さら説明する必要はないだろう…。

ベテラン・ジャマイカン・ギタリストのErnest Ranglinは高年齢にもかかわらず益々活動を活発化している。彼は長年組んでいるピアニストのMonty Alexanderと録音及びツアーを続けているが、ソロとしてのアルバムも次々とリリースしている。最近リリースされた『Alextown』では、彼以外のミュージシャンの演奏の粗さが気になるが、Ernestのプレイはいつも通り最高の出来だ。Topic/Telarcレーベルからの『Surfin』(タイトルは彼のStudio One時代のヒット曲からとったようだ)も上質のアルバムだ。サポート・ミュージシャンには、ホーンにDean Fraser、Calvin Cameron、Jeffrey Brown、ドラム&ベースにはDerrick StewartとGlen Browneが参加している。驚きや新鮮味はないが、全ての曲がよく作られ、録音も素晴らしい。Mr. Ranglin…イイ男だ。

UK音楽専門誌のライターたちは、僕が先月のコラムで紹介したRyan MooreプロデュースによるMichael RoseとRanking Joeのアルバムにそれほど関心を示していないようだ。だが、ヨーロッパ本土で両作品の反応は全く逆だ。あるフランスの雑誌ライターはMichael Roseの『African Roots』は彼の最高傑作であると賞賛していた。この現象に学ぶべきことは、人々の好みは千差万別であり、最終的にはリスナー自身がアルバムの評価を下すべきだということなのだろうか。

 Till Next Time, Take Care.......
(訳/Masaaki Otsuka)

Ernest Ranglin