5ヶ月でスターになった男のお話。ジャマイカのどこにでもありそうな過疎村のお話です。

 今年4月にはじまった、携帯電話会社ディジセル提供の番組「ライジングスター」、一昔前の日本の「スター誕生」や「のど自慢大会」的な素人参加番組が、2K5国民の一番の関心ごとに。
 TVJ「ライジングスター」の最初の予選はポートランドではじまり、3,600人の応募者があったとか。その後、予選はモンティゴ・ベイ、マンデビル、ブラック・リヴァーとつづき、ジャマイカ人のカントリー魂を揺さぶったよう。ジャマイカ人は愛国心が強くって、出身地や住んでる場所を特別に想う傾向にあるからさ。それがカントリーサイドとなればひとしお。

 番組は回が進むにつれて人気があがり、ジャマイカテレビ史上初の高視聴率を記録。決勝戦は週末金曜日の夕方、ニュー・キングストンの開放公園にて、入場料無料で開催され、これを楽しみにしていた番組のファンや地元応援団が早い時間から会場に集まって、会場はすし詰め状態。ハーフウエイ・ツリー・ロードは昼間から会場までぞろぞろ歩く人がつづき、渋滞の激しい地区のピークタイム、ニュー・キングストン中が大変な騒ぎ。ショウ会場は予想以上の人が押し寄せパニックとなり、ショウは急遽中止となってしまったのでした。

 ファイナルの二人は決勝を前に、夏休みの頃にはジャマイカの時の人となり、彼らが住む過疎村を、一目見に訪れる人が後を絶たず状態。だんだんだんだん予選を勝ち抜いていくたびに歌がうまくなり、垢抜けていく二人は、国民みんなの夢的な存在だったよう。二人とも、最初の予選から決して目立つタイプではなく、さすがにジャマイカ人、エンターテイナーを見る目がある。

 ファイナルのひとり、ノディは29歳、セント・エリザベスのコーマペンでネギを作る農夫。いかにもセント・エリザベスなブラウニン君。新人というには年齢的にも落ち着いてて、彼のバックグラウンドが歌になってでてくるような深みのある歌。お得意はジミー・クリフ。

 クリスは18歳。セント・キャサリンのバックパスチャーという、無名な村に住んでいる。失業と水不足が慢性的なこの村で、クリスも学校を出てから定職に就くこともなく、犯罪とは無縁な村で、皆にかわいがられている若者。お得意はジャー・キュア。クリアな声でストレートな歌いっぷり。この二人が仲良くセント・エリザベスのジェイクスって有名ホテルに招待されて、週末を過ごすシーンが放映されたりで、さらに二人の好感度はアップ。

 もう一人、惜しくもファイナルにはもれたけど、一躍有名になったのが女のコDJのフェイスちゃん。もうメジャーからのデビューが決まりで、ファイナル組の男のコたちより一足先に世に出ます。

 この番組、「Rising Stars」ですからね。彼らがこれからどうやってホンモノのスターダムを歩むか、ショッキング・ヴァイブス辺りから売り出すのか、ゴスペル畑に行くか(こちらもジャマイカでは大成功への固い道)、楽しみなところです。

 延期となったファイナルは、TVJテレビ局のスタジオで生中継され、18歳のクリスがチャンピオンの座を獲得したのでした。近々お披露目会をビッグに開催する予定。

 ギャングの抗争だの物騒な事件などで荒れるキングストンやスパニッシュ・タウン。ジャメーカ、危ない、ヴァイオレンス、のイメージばかりが先行する中、ジャメーカ、田舎、あたたか、まったり、なヴァイブスで、一般ピープルが盛り上がりました。

 スポンサー、ディジセルの人気ももちろんアップ。で、競争相手のBモバイルって携帯会社は、通話料金を安くし、負けじとディジセルも。ガソリン代値上げに伴い相次ぐ公共料金や食品など生活必需品の値上げが続く中、携帯電話料金の引き下げは嬉しいニュース。ディジセルV.S.B.モバイル。年末はイベントいっぱい提供してくれるに違いない。Yuh Deh A Yard!
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