これまでの“Premier”シリーズで様々なアプローチでもってダンスホール・トラックをクリエイトしてきたプロデューサー/アーティストHase-Tが新たに提案するものは、“Love”。つまりゆったりとしたラヴァーズ・トラックを中心に、収録曲も寄り身近なカヴァー曲をメインにコンパイルした作品集『Premier Lovers』だ。また面白いのは、カヴァー曲のチョイスをアーティストに任せていること。それではHase-T本人のコメントを踏まえつつざっと注目曲を紹介して行こう。
オープニングは、Hase-Tとの綿密なやり取りで生楽器を加えて制作した言う、Fire BallからシンガーのCrissによるKen Bootheの代表曲カヴァー「Everything I Own」。続くTicaや川上つよしと彼のムードメイカーズなどのヴォーカリストとして活躍する武田カオリは、Michael Jacksonの「Human Nature」を抜群の歌唱力と大人の色気を感じる歌声で披露。葉山発のシンガーRickie GはBiginの「恋しくて」をカヴァー。当初カヴァーする事自体がNGだったそうだが、本人の熱意がBiginに伝わり今回の収録となったそうだ。また今夏リリースされたMoominのアルバム『Link Up』からHase-Tのトラックを使用した「My Baby」を収録。この曲のみミックスをSteven Stanleyが担当しているので他の曲と聴き比べてみると面白いかもしれない。
そして、アコースティック楽器により表情豊かなヴァージョンへとなったMinmiの「愛の実-Autumnal Sky Mix」も本アルバムの目玉だろう。John Lennonの「Love」をカヴァーしたKeycoは、Tetsuniquesとのセッション。この曲と共に、アルバム後半に収録されているChiroの曲もバックを努めたTetsuniquesには、方向性だけ提示し自由に制作をしてもらったそうだ。元Rocking Timeの今野英明がチョイスしたのは、R&Bのスタンダード・ソング「For Sentimental Reasons」。Hase-T本人が今野とのスタジオ・セッションで作り上げたと言う通り、お互いの持ち味が融合して完成した一曲。最後はReggae Disco Rockersなどで活動する西内徹によるEarth, Wind & Fire原曲のサックス・インスト曲がトリを飾る。その他収録曲には、本誌読者ならお馴染だろうMiss Monday、Hi-D、Aige、R-Crownも参加し色を添えている。
単なるダンスホールのコンピレーションとは違い、カヴァー・ソング中心に“Love”をテーマに企画された本盤は、車の中や家なんかでもゆったりと聞ける身近さをもった好企画盤だ。フィーチャリングされているシンガーの個性も充分に発揮された物になっているが、それはトラックの質、音共にハイグレイドなものだからだろう。
「『Dancehall Premier』から派生したこのシリーズが、今後も新たなアーティストの作品提供の場となれば」と話していたHase-T。最後に個人的な今後は?との問いに「現実的には無理かもしれないけど、ジャマイカに住んでジャマイカのアーティストともやりたい!」とポジティヴな発言を聞かせてくれた。
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