ALBUMS

1. Tony Yayo / Thoughts Of A Predicate Felon (Universal)

“お務め”を終えたGユニットのオリジナル・メンバー=トニー・イエイヨーの初ソロ作。どちらかと言えばハードなラップ・スタイルで毒付きまくる彼も確かに敵に回したら面倒(?)。リーダー=50セントの「Candy Shop」の元になった曲らしいシングルの「So Seductive」を始め、Gユニットの面々やエミネム、ジョー、ジャギド・エッジといったゲストとの絡みの中でもやさぐれトークを印象的に聴かせる点は特筆すべきだろう。新メンバー=ハヴォックの仕事ぶりも流石。
2. Twista / The Day After (Warner)

前作『神風』が全米チャートを完全制覇したシカゴの早口野郎トゥイスタの最新作。今回も基本路線はそのままにより多様化した早口ラップ(タン・トゥイスティンだけではない)を聴かせるブラックネスの極みとでも言うべきフッド色の強い内容になっている。ネプチューンズ、スコット・ストーチ、ロドニー・ジャーキンス、Mr.コリパークら制作陣と、マライア、リル・キム、ファレル、ジェイミー・フォックス、ジュヴィナイル、シリー・ジョンソンといった客演陣こそは全方囲的ではあるが、あのネジ伏せるようなラップが聞こえてきた途端…そこは彼の独壇場に…というワケだ。タイトルに納得。
3. Ugly Duckling / Bang For The Buck (Handcuts)

LAはロングビーチ出身のファンキーなグループ=アグリー・ダックリンの通算4作目。“サンプリングなしでは生きられない!”と語るヤング・アインシュタインのクリエイトする90年代後半のヒップヒップを意識した“あたたか味のあるサウンド・プロダクション”と、フリーキーでいて“言うこと言ってる”ラップは健在どころか増々磨きがかかった印象。志を同じくするピープル・アンダー・ザ・ステアーズとのセッション(“Scenario”風?)を含め、文句ナシにポジティヴな快作。
4. Show/D.I.T.C. / Street Talk (Handcuts)

ブロンクス最高機密=D.I.T.C.のキーマン、ショウ(ビズ)がシキるレーベル“ワイルド・ライフ”のショウケース・アルバム。参加アーティストは、ファット・ジョー、AG、O.C、ロード・フィネスに故ビッグ・Lといった直結のメンバーから、故ビッグ・パン、M.O.P.、パーティー・アーティー、D-フロウまで固い絆で結ばれた仲間のみ。約6割のトラックをショウ自身が担当し、残りはフィネスの手を借りる辺りにも“美学”を感じる90'sフレイヴァーに溢れたハードボイルドな1枚。
5. O.C. / Smoke And Mirrors (Rush!)

D.I.T.C.のメンバーの中でもファット・ジョーに次ぐリリース量で知られる“男樹”系ライム・テクニシャン=O.Cも約1年ぶりとなる新作(5作目)をドロップ。何と今回は西海岸の“ハイエログリフィクス”からのリリースで、O.Cのフロウが最も良く映えるドラマティックなサンプリング・トラックの雨アラレ! “ヒップホップ業界の現状を斬る!”という彼らしいコンセプト・アルバムとなっているが、変な重さは無く、久々に胸のすく想いのする内容となっている。これぞ会心作!
6. DJ Top Bill / Prelude To One Dollar Store (Mary Joy)

“SP1200とPro Tools、レコードと生音を変幻自在に操る職人にして酒豪”(紙資料より)…愛すべき日本人DJ=Top Billの初の音源集。コパ・サルーヴォの小西えりが奏でるメロディカも、Shing02(4曲で参加)とのセッションも全て並列に感じられるのがこの男の懐の深さ。レゲエ/ダブ好きも納得のサウンドスケープといい、抜けた感じの寸劇(スキット)といい、全てにおいて無理がないのが良い。まるでスローフードの如き音楽。
7. Deli / 24 (Cutting Edge)

ソロとしては実に3年ぶりのフル・アルバム(2nd)。であるが、アクエリアス、チカチカ、ニトロと常に何かが出てる状況なので久々感はまるで無し。しかしながら“デリのアルバム”という意味でのインパクト、説得力は今作が今まででも間違いなく“一番”だろう。Babo、Macka-Chin、般若、565、"E"qual、Kashi Da HandsomeにTeam 44 Bloxのメンバー等のゲストの配置といい、Aquarius、D.O.I.、Muroらのトラックといい、どこを切ってもDeliらしいエモーショナルな作品集。全18曲、全く飽きさせないのは言うまでもない。
8. Mikris / M.A.D. (チカチカプロダクション)

のスタイルを一言で言い表すなら“Mad”。そんな決定打に付けるタイトル放ってきたあたりからもこのJBL期待のマッド・ラッパー=Mikrisの自信のほどが窺える初のフル・アルバム。Yakko、Muro、D.O.I.、Hassy The Wanted、Buck Fireらのサウンド・プロダクションで、例によって例の如くドープな声でやさぐれたフロウを弾き出すその姿は頼もしい限り。客演業で見せてきた存在感を逆に引き立たせたキャスティングも見事な徹頭徹尾ドープなアルバム。
9. G.K. Maryan / Soul On Keep (Delux Relax)

“続けてんだぜ イェー Don't Stop G.K. Maryan Real Hip Hop”というイントロのフレーズからググッとっきっ放しの3rdアルバム。雷家族や城南ウォーリアーズのアルバムや先月紹介した2枚組のベストと本作を並べてみても、その“ブレることを知らない足下”は圧倒的、である。本人(a.k.a. Golden Knife)やDJ Missie、Shino、Zeebra、Z(Gas Crackerz)、ALG、D-Originuらによる“マーヤン向け”ビートの濃度は言うに及ばず、新機軸となるトピックをポーンと投げ掛けてる“主役”の生き様を投影したラップ・ワールドはやはりオリジナル、である。必聴。
10. Norisiam-X / N☆X☆R☆2 (Columbia)

大阪のD-St.Ent.のファースト・レディことNorisiam-Xの約9ヶ月ぶりとなる2ndアルバム。前作では“サナギから蝶へ”というコンセプトの下、Bach Logicが全面的にプロデュースを担当していたが、今作ではそのBLの他、Precogood-One、Wong Gun、Vaxim、Nao The LaizaらD-St.サウンド班と、Hase-T、Cicada等の外部プロデューサーが6:4でビートを割りふり、前作では温存していた主役の“はっちゃけたキャラクター ”をカラフルに演出。イロコマネチ、Lecca等のゲストとの絡みもPopなヒップホップ版スネークマンショウ的(?)な一枚に。手前ミソですが、聴いて下さい。
11. "E"qual / The Rock City -M.O.S.A.D.'s Town- (Columbia)

メジャー・デビュー作となった『ごうだつゲーム』を挟んでの2ndフル・アルバム。気持ちいいくらいストレートな語り口で地元名古屋から全国を揺るがす強者MCの彼にとって正念場となる本作は、音楽面を含めあらゆる部分で“幅”が出た充実作、となった。ゲストはM.O.S.A.D./Ballersの仲間(Keishiを含む)からDabo、Deli、般若、Anarchy、Anty The 紅乃壱、Norisiam-X等々で、エンターテインしながらも“主張”は崩さないタイプの骨太な仕上がり。進化し続ける日本の中心。それこそがM.O.S.A.D.の街だという叫びが聞こえてくる。

SINGLE
12. Ozrosaurus / The Phoenix [Will Rise] (Future Shock)

045エリアの盟友DS455と共に“Bay Blues Recordz”を立ち上げたOzrosaurus。その新たなキャリアを刻む第一歩となるこのE.PはDJ PMX制作のタイトル曲のアツさにまずヤラれること必至の太マキシ仕様。その不死鳥のテーマで更にパワーアップしたMacchoの言霊を感じ、Knock制作カップリング曲「眩暈」のレイドバックしたトラックでの倍速ラップにヤラれ、最後に代表曲のライヴ・メドレー(@ベイ・ホール「West Fest 2004」)で鳥肌が全身に…。“器のデカさ”を改めて痛快させられるのは言うまでもない。待望の3rdは来年春とか。