* 前 略 * ●今作は“コンセプト無きコンセプト・アルバム”って感じに受け止められたのですが……。 Muro(以下M):間違いないですねー。これまでの作品を振り返ってみると、殆どがまずコンセプト/テーマありきのモノだったんで、今回のアルバムは逆に割とラフな感じで一曲一曲録ったものをまとめた感じにしてみようと思って。でもそんな感じで作った割には全曲並べてみたら理想的な並びになってるんですよねー(笑)。 ●あとスキットが凄く効果的に挿入されてますよね。ピート・ロック&C.L.スムースの1stバリに……。 M:いやもう、そこですよ(笑)。昔アレを聴いた時はヤラレタ!と思ったくらいなんで。Daboとの「Creator 2005」もオマージュ的な曲だったりするし。 ●あと全体的に“男のワンループ”系トラックが多いですよね。思わず色んなタイプのラッパーをフィーチャリングしたくなるような……。 M:自分の作品なんで当り前のことなんだけど、“サンプリング”には思いっきり拘りたくて。もうとっておきのネタ大放出ですよ(笑)。あと引越したのも大きいかな。こんなの持ってたっけ?ってレコードも活躍してくれたんで。フィーチャリングに関してはやっぱりビートが組み上がった時点で考えちゃいますね、自然と。これは誰がハマリそうだな、とか。 ●まさに“プロデューサー気質”ってやつですね。 M:料理人、と言うか(笑)。周りにいっぱい良い素材、MCがいるから声掛けずにはいられなかったんですよね。そういうところにも普段のノリが出てると思うし……。とにかく濃い“ラップ・アルバム”にしたかったから。自分のフロウも曲ごとにメリハリつけて、かなり楽しんでやれましたね。 ●“異色のコラボ”的な楽曲ってことで言うと、Pushimとの「24/7」や鈴木雅之との「浪漫ソウル」がそれに当たると思いますが……。 M:Pushimは前からずっと一緒にやってみたかったんですけど、中々タイミングが合わなくて、Hazimeのアルバムの「7 Dayz」でやっと叶った感じで。“声に恋した”と言うか、やっぱり凄い歌い手ですよね。レゲエという芯も強く感じるし……。Martinさんは昔シャネルズのファンだったこともあって……。 ●ソウルフルな仕上がりですよね。スウィートでいて力強い……あくまでもラップ主体のヒップホップの楽曲として理想的な……。 M:“パクリとサンプリングの違い”について歌って。そこは意味的にも上手くハマリましたね。 ●あと昔からのファンが喜ぶトピックとしては、Twigyとの久々のセッションや、ロード・フィネスの「Funky Technician」のヴァースが聴ける「音波奴隷」が挙げられますが……。 M:あのロード・フィネスのパートは、実はまんまオリジナルなんですよ。彼の家に遊びに行った時、「今、リミックスをプレミアやマッドリブとかに発注してて、Muroにも是非頼みたいんだ!」って突然言われて、ビートとあのアカペラをトレードしたんですよ。 ●ナルホド。そう言えば、Kingのパートもいい感じでレイドバックしてますよね。 M:いやー、当時夢見てたことが実現したんで。武者震いですよ。憧れのMCとのタイマンですからね。録りの時もそういう雰囲気が出るように考えて。本当、(今作の)Recとミックスを担当してくれたS.U.Iに感謝ですよ。(マニピュレーターも務める)彼と組むことでまた新しい可能性も拡がってきたんで。 * 中 略 * ●それにしてもタイトル通りの歴史の重味を嫌味なく感じさせられる力作になりましたね。 M:因みにタイトルの由来は、初めてミックス・テープを作ってから丁度20年、っていうのとヴァースが20ある、ってことで……。 ●“純粋なヒップホップのファン”であるからこそ、ラップもDJもトラック・メイキングも服作りも何もかも自分でやりたい、という基本的なスタンスが随所に表れていますね。 M:結局そういうことなんですよね。ずっと自分が一番のヒップホップのファンっていう気持ちを持ち続けているから……。何せ好きなものを集めてきて自分だけのものに変えられる唯一のジャンルだから、これ以上性に合ったものはない訳で。 ●その高密度なラップ・アルバムと同発のインスト・ミックス盤もまたヤパい出来ですね。 M:いつかはやりたいなと企んでたんですよね。今回のアルバムからと、あとプロデュースした過去の楽曲のインストをミックスしたんですけど、これを聴いたらアルバムをまた違った角度から楽しめるかも知れないし。それに、みんなにもっとビートそのものに興味を持ってもらいたいな、って想いもあったんで……。 ●“遊びゴコロ”という点ではディミトリとのミックス盤『Super Disco Friends』も素晴らしいセレクション&ミックスになってますよね。 M:自分でもかなり満足しちゃってますねー。ディミトリとはディスコ・ブレイクの情報交換とかトレードとかしている仲なんですけど、彼はラップからディスコで、自分はその逆なんで。だから凄くいいバランスのパッケージ(2枚組)になったな、と思いますね。 ●これは海外のレーベルから出てるんですか? M:最初は“BEE”からって話だったんですけど、UKの新しいレーベル“ヘッドフォン・ヒーローズ”からのリリースになりました。『Ultimate Break Beats』に入っている曲も意識して盛り込んだし、ヒップホップに通じる部分を感じて貰えると思うんで、ディスコ・ブレイクを避けてきた人もここからハマってくれたら言うことナシですね。 * 後 略 *