昨年の大ヒット曲、「Can't Satisfy Her」は「売春をして身を滅ぼした女性」をテーマにした社会的とも、近所のうわさ話的とも言える切り口が斬新だった。これを書いたアイ・ウェインはポートモア出身のラスタファリアン。分かりやすいテーマと覚えやすいメロディーの曲でブレイクしたものの、アイ・ウェイン本人はつかみどころがないというか、少し取っつきにくいくらい“雰囲気”がある人だ。口調は柔らかいのに、主張ははっきりしている。声も歌い方も独特。限りなく大きい未知数を持つ25才だ。


いつ頃くらいからシンガーを志したのでしょう?
I Wayne(以下I):真剣に歌い出したのは95年くらいだね。それからレコーディングを始めて、リカルド・モーガンのところで最初のシングルを切ったんだ。

クワイヤーで歌っていたことは?
I:ないよ。音楽に囲まれて育ったから、自然に歌えるようになった。シズラ、マーシャ・グリフィス、ベレス・ハモンドとか……シャーデーも好きなんだ。……それから、ピーター・トッシュもリスペクトしている。彼は本物のウォリアーだと思う。

ボブ・マーリーよりも、ピーター・トッシュの方が好きなのですか?
I:そうは言っていない。彼らは火種を点けたアイコンだから、とても感謝している。

ピーター・トッシュの曲で一番好きなのは?
I:選べないよ。全部だ。

「Can't Satisfy Her」のヒットで、キャリアの上で何が一番変わりましたか?
I:俺のキャリアがどうの、というのはあまり重要じゃないよ。音楽が人生そのものなんだ。そのことに感謝を捧げるまでだ。

あの曲は売春というはっきりしたテーマを持っていたのが新鮮だったと思います。結果的に、ジャマイカで何が起こっているか、よく伝わって来ました。
I:それが気に入らなかった人もいるけれど。俺は何が起こっているかを目にしたまま曲にしている。紙に書き留めたりしないし、風がいつもインスピレーションを運んで来てくれるから、簡単なんだ。

デビュー・アルバム『Lava Ground』に取りかかったのはいつ?
I:数ヶ月前からだね。 

アルバム全体には様々なタイプの曲が入っていますが、アイ・ウェインとしてこれを表現したかった、ということはありますか?
I:人生にはいろいろな側面があるから、アルバムもいろいろな色を持たせたかった。メロディーも曲にしたいことも無限にある。音楽を作るときは、権利とか文法は関係ないし、いろいろ考えたり理由をつけたりする必要もない。基本的に人生そのものが理由を見つけてきてくれるし、シンプルに人生を曲にするところから俺は始める。そこにすばらしいジュースがあるから。真実をシンプルに描くこと、それだけだ。

参加したプロデューサーを教えて下さい。
I:複数の人が参加してくれているけれど、俺のウォリアー、ロイヤル・ソルジャーズがほとんどを作っている。本物の音楽を提供してくれる人だったら俺は誰でもいいんだ。

レコーディングはポートモアとキングストンのどちらが多いのでしょう?
I:キングストンまで行くことの方が多いけれど、地元にも小さなスタジオがあって、ダブ・プレートくらいは録れるんだ。それをアップグレードしているところだね。

楽器はできますか?
I:いいや。ドラムを叩くのは大好きだけど。

ハーモニー、ファイアー・チェス、ファイアー・スターが参加していますが、彼らは地元のアーティストですか?
I:新しい才能がいっぱい出ている中で、特に力強い人に参加してもらった。お互いのいいところをさらに伸ばせて、さらバランスよく仕上がる人を選んだ。みんな前に行こうという気持ちが強いし。あと、個人的にはジプシャンとも仲がいいかな。

自分のクルーみたいな人達がいるのですか?
I:毎日一緒に過ごしている人はいるけれど、クルーとかではないよ(笑)。俺のウォリアー達だ。

一昨年くらいから、あなたのステージを何回か観ているのですが、どんどん良くなっていますね? 特に理由はありますか?

I:それはまず、神様の御駕籠があることが最大の理由だろうけれど、曲の調子や音楽のタイプによってムードが全然違うから、そこを切り替えるようには気をつけている。反抗の歌はウォリアーとして歌うし、ラヴ・ソングはまた違う感じで歌っているつもりだ。でも、すべてをポジティヴなムードで歌っているのは一緒だけれど。

リッチー・スパイスやファンタン・モージャなど、ラスタファリアンの新しめのアーティストが活躍していますが、自分としては一つのムーヴメントを形成しているような気分はありますか?
I:俺達は一つの大きな家族みたいなものなんだ。だから、今の状態が本来あるべき姿だね。それぞれが人生を讃えて、子供達に光を与えるように頑張っていると思うよ。

音楽を通して、最も強く伝えたいことは何でしょう?
I:母親と子供を讃えること。命を讃えること。自然の力を讃えること。宇宙を讃えること。


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"Lava Ground"
I Wayne
[VP / VPCD1702]