今年も様々なレゲエ・フェスティバルに引っ張りだこのハード・ワーキン・バンド、Home Grownが自らのアルバムで使用したトラックを使って新たに作り上げたコンピ盤『Clone Of Grown』と映画『鳶がクルリと』のサントラ盤をリリース。更にギタリストのI-Watchを中心として制作されたコンピ盤『Reggae Cruising』もリリースと全く留まることを知らないようだ。

 文句ナシの“Hardest Working Reggae BandHome G。聴いているだけで幸せな気持ちになれる良い(太い)音とVibesを放ち続ける彼らは、同時に“もっとレゲエを面白くする”ひいて言えば“もっとこの国の音楽事情を面白くする”ための秘策を練り続けている、ような……。少なくとも筆者の様な者にとってはHome Gのあのいい顔になれる音がもっともっと必要な訳で、その点でも今年の夏〜秋のリリース物は例年と違った意味で楽しめそうだ。では、その新着関連作品3枚をササっと紹介するとしよう。

 まずは意味深なタイトルは付けられた『Clone Of Grown』から。このアルバムは彼らがこれまでに発表した3枚のオリジナル・アルバム等で聴くことが出来たリズム・トラックの上で、ニューカマーからヴェテランまでがマイクを取った、というダンスホールならではの試みが嬉しいコンピレーション、である。冒頭から「Beach Walk」のカップリングで一早くチェックすることが出来た「Irie Irie Music」が。PushimMoominの元パートの他にRyo the SkywalkerJunior DeeButcherと今野英明のニュー・パートが加えられ、また一味も二味も違った“表情”を見せているこのヴァージョンも、やはり“名演”。

また新オケとしてはボブ・マーリィ(ときたら
Home G! )「Get Up, Stand Up」のリメイクが用意され、ナゾのDee Jay(?)Sky-Bの“シャブ捨てろ!”なる替歌のメッセージも…。その他では絶賛発売中の「Beach Walk」でカップリング収録されていたインスト・トラック「Ride On The Train」で福岡のDanger ShuChomoranma)が初RECした「Gal Yu Move」や、湘南期待の若手Dee JayJPJunior Deeの「熱帯夜」をスラックネスに塗り替えた「寝たいよ」、勢いづくRacy BulletからはMicky Richが「At The Dance」オケで切なく歌った「彼女はSpecial」に、そのMicky RichSoldierの曲「TV」リディムにホーンをオーヴァーダブし、Guan Chaiが例によって明るく大らかに歌った「It's Growing Again」や、吉本所属の漫才コンビであり、昔からレゲエ好きで知られイベントにも精を出してたSnobが「恋のダブルブッキング」のオケで異彩を放つ「Oh! Happy Day」や、緑化委員ジョイント党のBamiudaが軽快な演説を披露する「Hiに肺に灰に」等、話題のチューンてんこ盛りの全12曲(うち1曲はヴァージョン)。7インチも続々と切られるようなので、そちらのチェックも怠りなく。

 続いては“初”のサンントラ仕事となる『鳶がクルリと オリジナル・サウンド・トラック』を。『凶器の桜』で知られるヒキタクニオ(原作)、薗田賢次(監督)が再びタッグを組んだこのヒューマン・コメディ映画の大画面を彩るのがHome Gサウンドというのはレゲエ・ファンにとっては朗報以外の何者でもないだろう。薗田監督は、これまでにもZeebraK Dub ShineUzi等のPVを手掛けてきた、本気で“B”な、ストリートを良く分かっている人だけに、今回のHome Gとのコラボレーションも“本編”にいい効果をもたらすハズ。そのサントラ盤にはHome Gの新曲(インスト)群の他、H-Man & Keycoとの「青空」や、今野英明との「夢想花」、有坂美香との「Dance For You」に、Moominの「Joy Of Life」、Ryo the SkywalkerSeize The Day」といったお馴染の楽曲が並んでいる。これらの楽曲が一体どう使われるのかは観てからのお楽しみ。Home Gのメディア・ミックスは今後更に拡がっていくのでは、と一人合点したGood Job

 最後はギターのI-Watchが、盟友Makochingと共に新たに興したレーベル“ルード・フィッシュ・ミュージック”の旗揚げ第一弾企画『Reggae Cruising』で。I-WatchMakochingを中心に、時にTancoYukkyもサポートし作り上げられるサウンドは、風通しが良く、見晴らしも良好な、新しくもどこか懐かしいタイプのダンスホール(プロデュースは全てI-Watchが担当)。参加したアーティストたちは、リリースが活発化しているGokiから、JPGuan Chai、ニューEPが出たばかりのRudebowy Face、湘南乃風からはShock EyeHan-Kunがソロで、あとJunior DeeBamiudaDubsensemaniaRas KantoMoomin & NG Headの計11組で、6つの新作リディムをタイプの異なるアーティストが2組ずつ歌う、という気の利いた構成になっている。

また全曲ジャマイカで名うてのエンジニアたち(ボビー・ディジタルからデルロイ“ファッタ”ポッティンジャー、リチャード“シャムス”ブラウニー、ガーフィールド・マクドナルド、
Dr.マーシャル、ミッキーの計6人)が腕を振るっているため、同オケでもかなり印象の異なる“レゲエならではのミックス・センス”が楽しめる仕掛け。彫師=彫めいのイラストもいい感じの、レゲエにいなたさを求める向きにはピッタリの極上盤。次なる動きに早くも期待しておきたいトコロだろう。

 以上ササっと紹介してきたが、アナタのハートに刺さったのは何本? 百聞は一聴にしかず。気になった人はどこからでもいいから聴いてみよう!



"Clone Of Grown"
Home Grown
[Overheat / OVE-0094]
"鳶がクルリと"
Home Grown
[Ponycanyon / PCCA-02184]
"Reggae Cruising"
V.A.
[Victor / VICL-61715]