'99年11月。新宿Liquidroomで、『Riddim』200号記念「こだま和文&His Friends」ライヴが行われた。
こだま和文にとって、Kodama & Gotaとしてのライヴ以来、3年ぶりとなるライヴだった。当日、こだまは、客入れのDJの段階から登場して3時間以上出ずっぱり。DJクラッシュ、NYから駆けつけたロイド・バーンズ、畠山美由紀、ランキン・タクシー、ムーミン、デヴ・ラージ、Shinco、Tico、エマーソン北村、Asachan等といった豪華ゲストを迎えて、ミキサーも宮崎DMX泉と内田直之が分担するという布陣。ぼくは最前列で写真を撮っていたので良く覚えているが、それは伝説的なライヴになった。
この時、こだまと豪華ゲスト陣を支えていたのは、やっほー!バンドという若いバンドのメンバーを中心とするバンドだった。
「ちょうどこのライヴの話が来るちょっと前に、ぼくらの音を聴いてくださいみたいにカセットを渡されたんですよ。それでぼくの方から連絡したんですけど、そういうことは滅多にないですね。
Kodama & Gotaはミュート・ビートでやったから、この時は一からバンドを作りたかった」
実はそれが大正解なのだった。この新作『In The Studio』の音源は、この時のライヴのためのリハーサルをワン・マイクのカセットで録ったものなのである。本番のライヴやゲネプロを録音した音源も存在しているようだが、あえて、ゲストが加わる以前の骨格となる音を作ろうとしている、こだまとバンドだけによるセッションを世に出したのだ。元がモノラルなので後からダブ処理を施す余地もない。当然、音はラフだし、本番のライヴのようなゴージャスな感じはないが、そのかわり、レゲエ/ダブに向かう初期衝動というか、ザラついた質感の中に潜む真実というか、森山大道の写真のような感じというか、ボブ・マーリーに例えるならアイランド盤ではなくリー・ペリーがプロデュースしていた『African Herbsman』の感じというか、聴くほどに深く入り込んでくる本物の音になっていたのである。まさにラフ&タフ!
「これは、初めましてみたいな感じでスタジオに入って、5日から1週間め辺りの音なんですよ。ベイシックなリズム隊とオレだけ。オルガンも殆どバブリングしかやっていないし、まだ飾りをつけていない。だから本番とは違う音なんだけど、テープを聴いたらものすごいんだ。誰かに聴かせるとかではなく、録音を意識しているわけでもなく、狭いスタジオの中で、どこまで入っていけるかっていう演奏をしているわけですよ。もちろん本番も良かったんだけど、最初の段階で凝縮されたテンションが記録されていて、そのテープがずうっと気になっていた」
『Riddim』200号記念ライヴが行われたのは、ソロとしては7年ぶりとなるアルバム『Requiem Dub』が出た直後で、その後、サウンド・システム的なソロ活動に邁進していくわけだが、その間、ずうっと気になっていたというテープは埋もれていた。それが今、このタイミングで世に出てきたというのも、良くできた物語に思えてくる。まもなく始まるこのメンバーでのライヴが楽しみだ。
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