昨年リリースされた振動弐百とのコラボレーション・アルバム『Freedom』(今年に入ってScientistによるそのダブ盤『Freedom Dub』もリリース)で新境地を見せつけたJunior Dee。好評だっただけにこの路線を続けるかと思いきや、届けられた、意外な事に初のソロ・フル・アルバムとなる『The Captain』は、彼の原点回帰とも言うべき小気味の良い“ダンスホールな”ヴァイブスが溢れる“らしい”快作となった。 |
「ずっとライヴをやってきて、自分のライヴそのままのスタイルの作品にしたかったって言うのが元々あって。『Freedom』はライヴではあまり出てこないところの方が多かったけど、今回のアルバムはライヴの雰囲気を出したかったんだ」と語る通り、全編新旧様々な正調ダンスホールなオケに乗せ、実に自由に、僕らの知っている“Rub A Dub Master”の異名通りのJuniorが堪能できる曲揃いだ。更には今作からNanjamanが代表を務める“爆音Syndicate”にレーベルを移したのも、ダンスホール回帰に拍車をかけたというのもあるだろう。 「昔からNanjaと一緒にライヴしに行く事が多くて、自然に『じゃぁ、やろうよ』って話になって(同レーベルの配給元の)ノーブランドの人を交えて熱く語ってくれて、『アルバム作ろう』ってなった」 と言う訳で本作はセルフ・プロデュースで、レーベルは爆音Syndicate。Juniorらしさがフルに発揮できたわけである。 「オケは殆ど全部自分で決定して作ってもらったんだけど、NanjamanとのコンビネーションだけはNanjaが『今回はこのオケでやろう』って言って決定したんだ」という「Murderer」はGlen Brownがプロデュースした“Dirty Harry”トラックのリメイクの直球サウンド・アンセムになっている。 「Nanjaとのコンビはこれで3曲目になるから、今までのとは違う感じにしたかった、ドシッと重たい感じのレゲエにしたいって言うから、それだったら振動弐百に作ってもらおうってなった。コンビの中では一番気に入っている」 こういうモロなサウンド・チューンや、疾走感たっぷりの「On The Bass」の様なダンス・アンセム。アンチ・コカイン&スピードの「No Touch Coke」等、レゲエDeeJayらしいテーマの他に、今回のアルバムで言うとソカ・フレーバーの「空」とか「バッタリ」なんかに顕著にあらわれているのだが、日常の一部から面白味を拾い上げて綴る独特のスタイルも遺憾なく発揮されている。 「基本的にサウンド・チューン、ガンジャ・チューンばかりでしょ、みんな(笑)。 人と違う事やろうって意識はあるけど、自然に出てくるまで待つかな、俺は」 子供達のスキットから始まる「フレッシュベジタブル」みたいな野菜アンセムもそんなJuniorならではの曲だし、野菜ネタはSuper Catの「Vinyard Party」(Rub A Dubパーティを野菜達で例える下りがある)やTony Rebelの、そのものズバリ「Fresh Vegetable」(こちらは愛も野菜と同じで鮮度が大事って内容)なんかでオールドDeeJay達も好んで使ったネタ、なんて深読みも出来るって仕組み。 「男と女のラブゲーム」はPhillis Dillon「One Life To Live」に日本語歌詞をつけて、シンガーかりんを迎えてのコンビネーションで軽快な仕上がりだ。 「かりんは東京のジャズ・シンガーで、こんどクルーエル・レコードからリリースを予定している女の子。で、3年ぐらい前に一緒にライヴやって良かったから前のアルバルにも入れてもらって、今回もお願いしたんだけど、テイストが土っぽい感じでね。あんまりレゲエのサークル内の人じゃないんだけど、いきなりステージでDeeJayとかしだすけどね(笑)」 他にも昨年のHome Grownのアルバム『Time Is Reggae』で参加していた「熱帯夜」、V.I.P.制作のコンピレーションに入っていた「Run De Corner」、爆音Syndicateレーベルから7インチでリリースされていたMr.Jをフィーチャーした「世界中でWar」と、正にここ数年のJunior Deeの集大成であり、旬を上手く切り取った傑作と言えるだろう。ちょっと前のいい方だけどマイク4本半!って感じですね。なお、実はホントにシークレットに1曲入っているようだから、それも探してみて下さいとのこと。 最後にJuniorからメッセージを。 「一番自分っぽい作品ができて……(しばし考え)特に無いかなぁ(笑)。音がいいから爆音で聴いてくれ、かな。これ聴いてライヴ来て下さい。今年は特に小箱でガンガンRub A Dubやりたいからね」 8月4日には横浜Club 24でリリース・パーティが予定されているので、ぜひ生でそのRub A Dub Master振りを味わってもらいたい。 |
|