Tuff Session

 昨今の東京では、気さくでカジュアルなレゲエ・バンドが元気だ。今回アルバムをリリースした3組――Tuff Session、Tetsuniques、Risingtones――もそんな魅力を持ったバンド。この季節にベスト・マッチングなほがらかレゲエ・バンド3組をご紹介しよう。

まずはメジャー・デビュー作となるファースト・フル・アルバム『Smile Arch』をリリースしたばかりのTuff Session。結成は2001年、その後何度かのメンバー・チェンジを経て現在の6人編成となった。2003年にはミニ・アルバム『Tuff Session』をリリースしているし、都内で精力的なライヴ活動を行っているので、すでにチェック済みの方もいるかもしれない。彼らのサウンドの特徴は、ヴォーカルの内田コーヘイが紡ぐ気取りのない歌声と歌詞、そして彼が奏でるメランコリックなヴァイオンの音色。20〜30代男子のありふれた日常を一切の誇張なく描きながら、そのなかのさまざまな感情を色鮮やかに描き出していくその歌心、そしてそれをなんの衒いもなくポップに仕上げちゃうあたりが爽快だ。今作収録曲もライヴでさんざん練り上げてきたためか演奏面でもかなりガッチリしたものを聴かせてくれるんだけど、それがコーヘイの歌声の味わいをさらに押し出すことになっている。ラストをシメるお馴染みカーティス・メイフィールド「People Get Ready」の、スキップしたくなるようなリラクシン・インスト・カヴァーもなんともほろ苦い仕上がりで、どこか楽し哀しいヴァイオリンのメロディーが切ない聴後感を残してくれる。メンバーの人柄が透けて見えてくるような一枚だ。

Tetsuniques

 さて、次は小粥鉄人(元Rocking Time)とそのTuff Sessionのメンバーである内田コーヘイ、クリ、ヤギーを中心に2003年に結成されたTetsuniques。“結成”といっても当初はセッション的なノリで集まりはじめたというが、そのカジュアルなムードは彼らのキャッチコピーである“Relax & Dance”にもはっきりと表わされている。現在では“テツ”が付くということで西内徹(Reggae Disco Rockers、Trial Produc-tion)、北村哲(やっほーバンド)も参加、メンバーのうち半分を“テツ”が占めるという世界に類を見ないバンドとなった(笑)。で、かの「Ghost Busters」のカヴァー(ナイス・チョイス!)も収録されたシングル「Walkin'」に続いての登場となるファースト・ミニ・アルバム『Tetsuniques』は、メンバー各自のやりたいことをストレートに形にしたことで、全体としてとても風通しのよい作品となっている。普段はあまりヴォーカルをとらない鉄人とクリもマイクを握り、気持ちよさそうにその歌声を披露。なかでもクリがヴォーカルを担当する「地球」はつい口ずさんでしまいたくなるような良曲だ。また、Rocking Time時代の盟友、森俊也のミックスが全体をビシッと引き締めているのもポイント。いい感じにスウィングする鉄人のベースもやっぱりイイです。

Risingtones

 ラストは、これまた元Rocking Timeの津村正晃(キーボード)も参加する7人組、Risingtones。結成4年目にして初のアルバム『Rise You Up!』は、ヴォーカルのドリーの伸びやかな歌声を活かしたポップな仕上がり。涼し気なサマー・ヴァイブスを運んでくるようなオープニング・ナンバー「潮騒」はロック・ステディ調の1曲だが、続く「潤燈華」はルーディーなスカ・チューン。その後もグレゴリー・アイザックス「Night Nurse」をモチーフにしたというラヴァーズ「アカトキイロトミドリイロ」があったりと、サウンドのヴァリエーションがなかなか豊か。ただ、どこを切っても耳に残るキャッチーなメロディーが溢れ出してくるあたりが今作の魅力となっていて、耳触りはいいが心にも残る、といったタイプの作品だ。数種の音色を使いわけながらサウンドをうっすらとコーティングしていく津村のキーボードのプレイ、そこに2ホーンがほどよく絡んでいく全体のバランスも非常に良し。こちらもTetsuniques盤と同じく森俊也が関与、大胆にして繊細なダブ・ミックスを数曲で聴かせてくれる。

 そういえば、3バンドとも活動のベースはいずれも東京で、クラブやライヴ・ハウスなどでマイペースな活動を続けている。彼らのサウンドを考えるとこの“マイペース”ってとこが重要なわけで、バッキバキのスケジュールのなかで活動を続けていたらこんなサウンドは生まれないはずだ(いや、もちろん“それなり”には忙しいはずだけど)。だからこそ、(Tetsuniquesのコピーを借りれば)Relax & Danceなヴァイブを生み出せるわけで……いやいや、今回ばかりは大仰な表現はナシにしとこう。ライヴ情報をチェックしていればきっとどこかで彼らのライヴを観ることができるはずだから、ま、一杯ひっかけて気楽に楽しみましょう。



"Smile Arch"
Tuff Session
[Warner / WPCL-10182]
"Tetsuniques"
Tetsuniques
[Positive / HMS-0054]
"Rise You Up!"
Risingtones
[Delphonic / GNCL-1027]