|
|
|
|
以前ブルーハーブのMCボスがこれからの音楽シーンを担うアーティストとしてMoochyの名前を上げていた。彼の1stアルバム『Momentos』はキューバを中心にレコーディングされた。何がクロスし、どう連鎖して、その輪が繋がっていったのか? それは新種の混血(ハイブリッド)ダンス・ミュージックの誕生であった。これは今年のクラブ・シーンの目玉だ!!! |
なんでキューバに行くのか、と言われて答えが簡単に出る人は、アーティストかも知れないが、同時に広告代理店に勤めることも出来る(これは皮肉や揶揄ではありません、念のため)。この国のもっとも忙しい、そして評価の高いDJが広告代理店勤務だというのは、なんというべきか、まずは他のDJは本当にどうしちゃったんだろう?ということになるだろう。プランニングしたり、丸投げしながらDJなんて出来るよ、とDJが簡単なわけじゃないだろうが、そう思わせてしまうところはあるのでは。 |
|||
|
|||
「DJがビジネスとして成立しているわけだけど、僕たちはベビー・ブーマー・チルドレンなわけで、ドラムン・ベースもグランジも僕たちの世代が世界中にいて、それを支えて来たわけです。逆に言えば、東京のアンダーグラウンド・シーンみたいなことろで、終わる気は全然ないし。そういうのって全くの予定調和だと思うんですよ」 Moochyがクラブ・シーンに現れた時は、ドラムン・ベースのDJとして認知されたわけだが、それにしても耳が少しでも音楽を聞くことが出来るような人なら、彼のDJの凄さには驚いただろう。私事で恐縮ですが、僕は色々なDJのミックスCDを持っているが、そのなかでも昔レコード店のCiscoが作ったKarafutoとMoochyのミックスCDは宝物だと思っている。また、彼が何気なく行う、ラウンジ・セット(などと書くと大雑把なのだが)が凄いことになっているのは、それを少しでも聞いたことがある人なら分るだろう。ありとあらゆる音楽がミックスされる、とはよく雑誌の文句に書かれていることだが、それを実際にやっているのをみたのは、Moochyだった、と僕は言うことが出来る。おそらく、ロンドンのDJで1人か2人、そしてJazz Brothersもそうしたプレイをするのだが、Moochyのミックスの混迷さ加減が忘れられないのだ。 |
|||
|
|||
彼のユニットNXSも何度もライヴを観に行っているが、あの混迷している感じは何なのか? 僕に言わせれば、それがアーティストの誠実さということになる。特に音楽家についていえば。この作品、彼の初のソロ・アルバムもそうなのだった。 「国とか国境とかナンセンスだと思ってます。このレコーディングでキューバに行った時、向こうの奴に言われたのが、『お前の音楽はビューティフルだな』っていうことで、それはけっこう我が意を得たり、というか、日本では『ハード』とか『ドープ』とか言われたりしていたんだけど、自分ではそんなことは意識していなくて……もちろん、お互いの英語で喋るわけだから、拙いところもあるけど、それでも少しずつ話せたりして」 世界が多様化していることは確実で、それを躍起に単純化しようとしているのが(例えば)アメリカ合衆国である。しかし、この世界には西欧のメディアの話題にもならない国や人々が大勢いるわけで、僕たち日本人はそれを西欧という枠からしか見ることが出来ないと思っていたから、もしくはそう志向していたから、見えなかったし、聞こえなかったし、喋れなかったのである。 「人間を肌の色で差別したり分けたりするなら、それより血液型で分けた方がいいと思ってる」 それに、そうしたメディアに出て来ない人々も世界の他のパートにコンタクトをとろうとしなかった。しかし、そういうところにこちらから出かけて行ったらどうだろう? そして、それはとても大切なことだと思う。自分や自分の仲間ではない者の経験を自分のものとして考える能力が備わっていなかったら―― と僕が尊敬するある人が昔書いていた――世界はどんなに平べったくなっていただろうか? そして、どんなに個人の世界は狭くなっていただろうか? (文中の発言は全てMoochyのものだが、文責は筆者) |
|||
|
|
6.2 ON SALE
"Momentos" JUZUa.k.a MOOCHY [CrossPoint / Overheat] KOKO-0002 ¥2,520(TAX IN) |