2005年6月号


Freddie McGregor
Greetings Folks,

クリスマス後の数ヶ月はUKレゲエ・シーンで主だった動きがないことが“伝統”になっているようで、静かなものだった。優れたライヴは少なく、新たに生まれるインテリジェントなレゲエがないまま、昔のレゲエをリバイバルする動きは活性化するばかりだ。Beres Hammondや最近活躍目覚しいRichie Spiceらが質の高い音楽を提供し続けているが、25歳以上のオーディエンスに相応しい内容のものは乏しい。僕らオトナは次々にリリースされる復刻盤からいいモノを見つけるしかないようだ。

以前にこのレポートでUpsetterのアイテムを紹介したが、Trojanは本当にせっせと復刻作業をこなしているようだ。最近発売のタイトル中からはRASのFreddie McGregor作品のコンピレーションなどがいい。TrojanがCDをリリースしていることぐらい誰でも知っている。しかし、彼らはかなりレアな7、10、12インチを現在もプレスしているのだ。そのTrojanによるジャケットやレーベルのミスプリントに至るまで精密にオリジナルを再現したアナログ盤の最新作は、Leroy Sibblesの『Garden Of Life』とLee Perryの『Chris Blackwell Is A Vampire』だ。特にPerry作品を何故、彼らが復刻できたのか非常に不思議だ。1980年代の半ばにリリースされたこのレコードは、IslandレーベルのボスBlackwellを野蛮人のように描いた漫画風のジャケットを使用した問題作で、発売後数日で店頭から撤去されたいわくつきのアイテム。僕はこのオリジナル盤を今まで大切に保管してきたのだが、今そのレプリカを数分の一の値段で購入できるとなるとは! 他に、オリジナル盤は相当高価なLee PerryのプロダクションによるClive Hyltonの『From Creation』も再発されている。『From Creation』は、もともとアセテート盤しか存在しておらず、ファンには嬉しいところだ。Hyltonは名前をColour Redに変更してJetstarから90年代後半にアルバムを出したが、Perryの息のかかったHyltonのチューンは探すに値するいいモノばかりだ。これらのアナログを店頭で見かけたら躊躇せずに購入すべきだ。

非常に評価の高いレゲエ/スカ/ロック・ステディ・バンドIntensifiedを生んだ“イギリスの庭”とも形容されるのどかなKent地区から新たなスカ・バンドが誕生した。7人編成のEscalatorsだ。彼らは同地区にある昔の町並みが美しい港町Whitstableで大盛況のライヴを行った。ドラムスとホーン・セクションが素晴らしく2人の女性ヴォーカルEscalettesが花を添えていた。このバンドの将来性には大いに期待できる。このレポートで最初に読んだことを覚えておいて欲しい! ちなみにIntensifiedは最近復活したBlue Beatレーベルと契約をかわす話し合いをしている模様。

Studio Oneアイテムはずっと昔から探すことが大変だった。Askew RoadとShepherds BushにあるMr. Peckingsというストアが棚一杯のレコードをストックしていた時代でもそのことは変わらなかった。もし、あなたがそれらの店の常連であって、大量のレコードを買っていなかったら、Studio Oneのオリジナル盤とは無縁だったはずだ。1985年にHeartbeatがCDでStudio One音源を復刻し始めてからこのレーベルに“新たな時代”が訪れたようで、オリジナル・プレスの粗悪さにややあきらめかけていたファンに朗報だったに違いない。1990年頃までにはStudio Oneコレクター市場は確立したといえるが、まだこのレーベルはアングラの臭いを醸し出していたと思う。コレクター達はStudio Oneを語るとき、何か神聖なものを崇めるような口調で話していたのだ。そして、Soul Jazzが様々なコンピレーションを発売し出した頃には、誰もがまるで昔からStudio Oneを聴いていたかのように振舞っていたのだ。まあ、よくあるパターンだ。しかし、ポップ音楽雑誌の『Mojo』3月号にStudio One音源15曲のサンプルCDが付録としてついていることには非常に驚いた。信じ難いだが、この雑誌はUK中の本屋やキオスクで販売されている! CDにはErnest Ranglin、Gaylads、Lone Ranger、Jackie Mittoo、Delroy Wilsonらによる素晴らしい楽曲が収められており、CDと雑誌には“レゲエの歴史の中で一番重要なレーベル”、“レゲエを永遠のものに変えたレーベル”として紹介している。もう、Studio Oneはアングラではなくメイン・ストリームなものだろうか?

Hot Pop-Cooking VinylとWagramレーベルについてはネットで検索すればもっと沢山の情報を得られるだろう。1990年にGreensleevesとShanachieによりリリースされたGlen Brownの手による3枚組CDの一部がUKを除いたヨーロッパのショップの店頭に並んでいるようだ。フランスの雑誌でGlen Brown & Friendsの『Rhythm Master Volume One』のレビューを発見した。Volume Oneということは他にTwoもThreeも存在するようだが、これは以前に発売されたシリーズをそのまま再発したものではないようだ。オリジナルではヴォーカル、DJ、インストのように分類されていたが、新たなパッケージでは、リズム・トラックごとに分類されている。次回のレポートでこれについてもっと詳しく紹介する予定だ。このシリーズをネットで探しあてることには十分価値があると思う。

Soul Jazzからの最新Studio One復刻リリースはLincoln 'Sugar' Minottのコンピレーション『At Studio One』だ。粒ぞろいのチューンが収録されているが、Studio Oneのコアなファンには少々物足りない内容だ。いくつかの曲が初CD化であることに救いがあるように思うのだが。

 Till Next Time, Take Care..........
(訳/Masaaki Otsuka)



Delroy Wilson