ALBUMS
1. DJ Premier & Mr Thing / The Kings Of Hip Hop (Hostess)

「ある特定のジャンルのDJ/クリエイターが自分のコレクションの中から“取っておき”の曲を披露する」という企画の『King』シリーズの第3弾。これまでの2作はいわゆるセレクト・アルバムの体裁だったが今回はノン・ストップ・ミックス仕様。しかもDJプレミアが70'sソウルを中心としたネタ系ミックスで、UK代表=ミスター・シング(元スクラッチ・パーヴァーツ)はレイト80's〜90'sのヒップホップ・クラシック・オンリーで勝負、という技アリな企画。流石は“B.B.E”!
2. KZA ft. D.O / Scramble Crossing Vol.2 (えん突)

フォース・オブ・ネイチャーのKzaが“ギャングスタ・ラップ”をテーマに西や南のいかつい音源をミックスした『Scrumble Crossing』の第2弾が4年越しで登場。“ヴァイナル・マスター”の異名を取る彼だけにセレクションの妙にヤラレること請合い(Indo G、とか…)。タギる系の中に少し哀愁を混ぜる辺りも絶妙で、聴くだけで893な気分に…。ホストはこれ以上ない適役=D.O。4年殺しの逸品『Vol.1』もこの機会にドーゾ。
3. DJ Yukijirushi / Enter The Reggaeton (Life)

キテますね、レゲトン!(祝ダディ・ヤンキー、ルーニー・チューンズ邦盤化)。でも「何から、どこから聴いたらいいのかワカらない」というヒップホップ/R&Bファンのヒトに強くお薦めしたいのがこの一枚。「Player's Ball」「Sneaker Pimp」他のレギュラー・パーティやラジオでレゲトンを推していたご存知Yukijirushiだけに“ヒップホップDJがレゲトン・オンリーのセットを組んだらこうなる”という最高の見本となっている。これで「Oye Mi Canto」や「Gagolina」だけじゃなく「Dale」とかでもっと盛り上がるようになるハズ。
4. Da Beatminerz / Fully Loaded With Static (Lexington)

再評価著しいミッド90'sのNYサウンド、ではあるが、その中でもブートキャンプ/ビートマイナーズに格別の思い入れを持っている人も少なくはないだろう。“ロウカズ ”閉鎖後、“コプター”なる独立レーベルへと動いたビートマイナーズの2ndは、そんな彼等がここ数年交流を強くしていたアーティストたちを呼び込んだ決して/スタルジー云々を感じさせない力作に。KRSワン、J-ライヴ、ダイレイテッド・ピープルズ、チャリ・ツナ、ジーン・グレイ、ミスティック等々、かなりコンシャスな人選もストイックなビートに合っている。
NOW PRINTING 5. J-Live / Head After (P-Vine)

トゥルー・スクール、と言えばこの男。前作のボーナス映像でジャグリングしながらヴァースをキックするシーンを見て改めてそのB-Boy度の高さ(と言うか…)に敬服したばかりなのだが、“ペナルティ”移籍第1弾となる本作ではより成熟した“B”な“J”が堪能出来る。レーベル・メイトのビートナッツ同様、ソウライヴの生演奏を導入(Jの方が先だったが)しつつ、ジェイムス・ポイザーやオデッセイ、ヘゼキアらが関ったサウンド・プロダクションは確かにこれまでとは趣の異なる“新しい”もの。
6. Muneshine / Opportunity Knocks (Handcuts)

ライト・ヘデットのトラックメイカーとして知られ、最近ではフォーカスでの活動で注目を集めていたカナダはトロント在住のムーンシャインが初のソロ・アルバムをリリース。自身はMCに徹し、トラックをワックス・リフォームの仲間=イル・マインドやMフェイズ、そして敬愛してやまないピート・ロック、DJスピナらに託したdのには勿論ワケ、がある。(本人はインスト一曲のみ)有機的で太い音に支えられて繰り返し主張するのは「自分にとってのヒップホップとは何か」という命題。違いのワカる男の会心作也。
7. Living Legends / Classic (Cisco)

カグラウチ、マース、イーライ、PSC、スキャラブ、エイソップ、サンスポット・ジョンズ、ビカソの8人の侍が5年ぶりに集結した10年選手団=レジェンズ名義作(2nd)。そのオリジナル面子によるオリジナルなラップ・ワールドはやはり他では得難い味わいに満ち満ちている。マッドリブがトラックを手掛けた「Blast Your Radio」が話題を呼んだばかりだが、実際本作のバリエーションはその1曲では推し量れるものではない。時間旅行的側面もありつつ、放せられる言葉の熱量にうなされたりも…。看板に偽りナシ。 
8. DJ Format / If You Can't Join 'Em... Beat 'Em(Hostess)

前作『Music For The Mature B-Boy』に“あの頃のヒップホップに望んでいた進化形”を見た思いがする、と話す成熟したB-Boy(というかオヤジ?)がどんだけ多いことか。そんな御仁はこの2ndで再び満たされる事でしょう。ファンク、ソウル、ジャズを基調としたどこかあたたかいトラックに、カナダの俊英アブドミナル(ロンドン生れ)やD-サイシブ、そして今回も登場のチャリ・ツナ&アキルのジュラシックMCズ(?)らのパフォーマンスがジャスト・フィット。凝り性ぶりがより発揮されるインストも少ないながら充実。
9. Zimbabwe Legit / Brothers From The Mother (Miclife Recordings)

あなたは覚えているか、あのアフリカのB-Boy兄弟を。彼らがオーガナイズド・コンフュージョンと共にこの地を踏んだのは12年も前の話。で、その際に同年夏('92年)には出るとアナウンスされていたフル・アルバムが、つ、つ、遂に。と言う事でミスタ・ロングが手掛けたあの曲や、DJシャドウの初期仕事として人気の高いあの曲もしっかりと収めた本作は、どんなミドル系の再発よりも“Rare”に違いない訳で。英語にジンバブエの現地語をミックスしたラップ・スタイルは今聴いても相当フレッシュ。彼らもある意味、ネイティヴ・タンだったのだ…。必聴。
10. 565 Familia / Gangsta Boogie (Future Shock)

妄走族の進攻作戦が止まらない。そのゴッド・ファーザー=565のリーダー作は、565 Familiaという名義通り、彼のファミリー総出のガッチリ濃い“Raw”な作品に仕上っている。とにかくストレートで聴かせるリリックがズバズバと刺さる作品、である。プロデューサー陣はDen、ZorroからSubzero、Romero SP、Equal、Itacho、DJ Yuzeで、一曲一曲にドラマとアティチュードがある、という点でも一徹したイズムが感じられる。『Gangsta Boogie』というタイトルの直球さも大きな魅力だ。
11. DJ Ryow / Project Dreams (MS)

東海エリアに根を張るボーラーズ、エンドレス・ファイルのDJ/プロデューサー=DJ Ryow初のプロデュース・アルバム。全てのトラックを彼自身が手掛けたミックス・テープのノリで、シャウトが挟まってゆく構成はどこまでも“現場”的で思わず熱くなる。そうしたストリート直送の熱気は、ビート命のRyowのトラックに乗る"E"qual、Akira、Watt、Sygnal、AK-69、Dabo、般若、C.T.、Ryuzo、Ruff Neck、4WD等々のセッションで直に感じて頂きたいものだ。M.O.S.A.D.の名曲「If I...」のニュー・ヴァージョンもオーラスに収録。
12. カルデラビスタ / 千差万別(D.M.R. / Ultra-Vybe)

ダースレイダーが主宰する“ダ・メ・レコーズ”のアルティメイト千円ポッキリ・シリーズの太郎&Ken The 390に続く新作は、柏のフリースタイラー、カルデラビスタのデビュー・アルバム。程よく通りの良い声で、“尖る”“走る”といったパンキッシュなキーワードから受ける通りのMCイングを見せる彼はやはり注目すべき才能の持ち主。そんなアグレッシヴで、ドクトクのリズム感が光るラップを支えるトラックは全てダース、いやFunk入道によるもの。箱庭でもオモチャ箱でもなく“闇鍋”感が強いのはダメレコならでは(?)。いや、それでもこれはまた新境地なのでは。