昨年リリースされたファイヤー・ボール『Fist And Fire』とパパ・B『Neo Entertainer』は、それぞれのキャリアのなかでも節目となる作品だったように思う。前者にとってはそれまで積み重ねてきたアルバム制作のスキルをさらに磨き上げるものとして、また後者にとってはマイティ・クラウン・ファミリーとの共同作業によっていかにひさしぶりのフル作を作り上げるか――つまり、どちらも両者にとっての“勝負作”であったわけだけど、その結果については読者のみなさんもご存じだと思うのでここでは書かないでおこう。
さて、ここでの本題は彼らにとっての“その後”となる、2枚同時にリリースされたシングルのお話だ。まず、ファイヤー・ボールの「Joyful Days」。表題曲はジャングル・ルーツの面々を従えた大らかなナイヤビンギ曲で、4者4様の歌心がじっくりと染み込んでくる1曲。それぞれのフレーズがそれぞれに絡み合いながら、ファイヤー・ボールの“これから”を歌い、そして普遍的なテーマへと導かれていく。この曲もまた彼ら流の“勝負曲”といってなんらさしつかえないと思う。一方カップリング曲の「Respect」はサミー・Tと森俊也がトラック制作を手掛けたジョグリン・チューンで、「Joyful Days」とは180°違う仕上がり。アップ/スロウ共にしっかりとしたものを作ってきたあたりに、『Fist And Fire』で培った成果が透けて見えるような気がする。ちなみに「Fist And Fire」から「Kick Up」まで全9本のビデオ・クリップ、2004年の「横浜レゲエ祭」でのライヴ・パフォーマンスを収めた初のDVD作品『FB The Music Video A.D.2001-2005』も同時リリース。DJケンタロウの "Visuratch Remix" なるものも収録されているが、どんなブツかはそれぞれでご確認を。
そして、パパ・Bの「Live Up & Rise」。バックを務めるホーム・グロウンと共に廃虚での演奏を繰り広げる表題曲のビデオ・クリップをすでに観た方もいるかもしれないが(全員“冬仕様”ファッションだったのがおもしろかった)、「爆弾は沢山だ/沢山を吹っ飛ばした/後は怒りや悲しみが悪魔の企んだ悪事と合わさっては繰り返す War 仕返しだ/歴史の紐解いて見てみな/昔々から戦いだ」とリリックをダラダラ引用したくなるようなチューン。一言で言ってしまえば“No War”ものなわけだが、もちろんそれだけじゃなく、日常と地続きの視点からユーモアも交えながら語りきってしまうあたりはパパ・Bの真骨頂だ。また、ファイヤー・ボール「Joyful Days」と併せて聴いてみると、彼ら5人がなにに警告を鳴らし、なにを伝えようとしているのか見えてくる気がする。その意味で「Joyful Days」と「Live Up & Rise」は対となるチューンと言えるだろう。カップリングはトゥルースフルとのコンビ・チューン「Robo Robo ニ・ン・ゲ・ン 2005」と同曲のダブ。
……と、なんだか堅苦しく書いちゃったけど、もちろんどちらも単純にイイ曲/ヤバイ曲ですので、構えずに楽しんじゃってOKなことを最後に付け加えておきます。
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