2005年3月号


Lady Saw

Greetings Folks,
日本人にも馴染み深いミュージシャン&プロデューサーClive Huntが11月にジャマイカで撃たれた。彼は "Azul" や "Lizzard" というニックネームを持ち、Wackies、The Abyssinians、Alpha Blondy、Khaled、そしてJimmy Cliffのチューンを手掛けたことで知られている。彼はSt. CatherineのBog Walk地区にあるレストランから仕事仲間のGregory Edwardsと共に外に出た際、何者かに呼び止められ銃弾を浴びた。Gregoryは即死、Cliveは8発の銃弾を受け重体。犯人はまだ捕まっていない模様だ。ジャマイカからのニュースの伝達にはいつも時間を要するのだが、この原稿を書いてる時点で彼の容態は安定し、回復に向かってるようだ。早く傷が癒えることを願う。

どうやらIsland レーベルの創始者Chris Blackwellが2005年にヨーロッパ、アメリカ、そしてカリブ海諸国でBob Marley生誕60周年記念イベントを行おうと企んでいるらしい。このツアーが以前の“Legend”ツアーのような安っぽいモノに終わらないことを願う。彼の最たる功績にはWailersを国際的な音楽市場に紹介したことがあげられるだろうが、アーティストの利権の悪用で一部の関係者には非常に評判が悪い。その筆頭がPeter Toshであり、彼はBlackwellのことを“Chris Whiteworse”と呼んでいるらしい。

25年間にわたる活動休止の後、やっとDEB Musicレーベルが再始動した。Dennis (Emmanuel) BrownとCastro Brown(血縁関係はない)によって1977年に設立されたレーベルは(彼の頭文字をとってDEB)発足当初から最高のルーツ系音楽をリリースするこで定評があった。Dennis自らの『Wolf And Leopards』 Junior Delgadoの『Taste Of The Young Heart』、そして Gregory Isaacsの傑作『Mr Isaacs』等が以前のラインナップにあった。レーベル復活による、この他にも12インチ・アナログ盤やお蔵入りとなったレア・チューンもリリースされるはずだ。Castro Brownは、ジャマイカで初めてスタジオを全てデジタル化したミキサーの内の一人であり、LucianoやLady Sawと短いながらも仕事を共にしたにもかかわらず、Dennisに比べるとプロデューサーとして目立った活躍はなかった。彼はロンドンに腰をすえ、繁盛しているカリビアン・レストランを経営する傍ら復活したレーベルの指揮をとる。もう昔のように他のレーベルと争う必要もなく、オリジナルのジャケ・デザインでリリースされる上質の復刻盤をコツコツと発表してくれることだろう。待った甲斐があったというものだ。

このレポートの読者なら、僕がいかにUKのレゲエ・イベントが準備のお粗末さ故に中止になったり、出演者、日程、及び会場の突然変更が当り前なことを嘆いているかがお分かりだろう。そして、ヨーロッパ本土でのイベントがUKのものに比べて比較的オーガナイズされていると僕が評価していることも承知なはずだ。しかし、南フランスで開催されたJamaican Sunrise Festivalはその評価を帳消しにしてまった程プランニングが酷かった。T.O.K.、Ward 21、 Chuck Fender、Richie Spice、Mighty Diamondsらは全く姿を見せず、Big Youthの代わりにAl Campbellが登場したりと、支離滅裂なイベントに終わった。それ以前の同イベントはうまい具合に機能していただけに、2004年の酷さが際立った形になってしまった。おそらく2005年は開催されないだろう。

ロンドンのNotting HillやCamdenエリアの優れた中古レコード屋として何十年もの歴史を誇るHonest Jons Recordsは2、3年前からジャマイカのヴィンテージ音楽を再発売し始めた。それらにはかなりのレア物が含まれており音楽的にも高水準のものばかりだ。最新タイトルはThe Skullsによる『Black Slavery Days』で、現在7インチではほぼ入手不可能な1970年代のヘヴィーなルーツ系チューン満載だ。アルバムのタイトル・トラックはBurning Spearテイストの曲だが、Spear以上にエモーショナルな一曲だ。

友人がSoul Jazzからリリースされた『Studio One Disco Mix』について僕の意見を聞くために電話をかけてきた。彼は本作に収録中の僅かな曲のみが純粋な“Disco Mix”であるのに、何故そのようなタイトルがつけられたのか理解に苦しんでいた。“Disco Mix”とは70年代にポピュラーだった長めのヴァージョンのことであり、もっと広い定義ではA面の最後に収録されているDUBヴァージョンのことも指す。ただ、その年代のA面をベタに復刻し、それらを全てDisco Mixというのは少し乱暴に思える。しかし、全てが粒よりであるこのアルバム収録のチューンをアナログ盤で持っていなければ、このCDの購入をお勧めする。Alton Ellis、Winston Francis、そしてSugar Minottらの常連の他、George Dudley、Doreen Schaffer、George Allen、Lloyd & DevonらがCDに初登場している。

様々な情報源によるとGreensleevesの昨年の利益が£250万にのぼっているらしい。僕は誰もあのレーベルのレコードを買っているとは思えないのだが!

90年代に「Coca Cola Shape」のようなヒットを飛ばしたSimpleton(本名はChristopher Harrison)が11月7日に呼吸器官系疾病により死亡した。彼は、友人たちとレストランで食事をした直後に倒れ、救急隊員の懸命な緊急処置もむなしく、救急車の中で息を引きとったらしい。29歳だった。

英国の音楽業界が昨年負った一番の痛手は、ラジオDJ John Peelの死だ。僕は馬鹿なことにこのことについて前回のレポートで触れることを忘れてしまった。65歳で去った彼は友人、リスナーから「素晴らしい不浪人」と愛されてきた。彼のBBC Radio OneとWorld Serviceの選曲は独自のものだった。彼は彼の好きなものをプレイし、「Sessions」という番組で様々なアーティストのブレイクのきっかけを作った。その中にはMisty-In-Roots、Steel Pulse、Aswad、そして彼が一番贔屓にしていたグループCultureがあった。彼の追悼番組はラジオ、TVかかわらずに大量にオンエアされ、マスコミの取り上げ方も尋常ではない。すでに彼の死は多くの人々を悲しませているようだ。  Till Next Time, Take Care.(訳/Masaaki Otsuka)


Dennis Brown, Gregory Issacs & Maxi Priest