●とても丁寧に出来ていますが、制作期間はどれくらいかけました?
Anthony B(以下A):今まで俺のことを知らない人たちにも届くことを狙ったから、1年以上かかったよ。トゥゲザーネス・レコードと一緒に組んで、様々な人たち、文化が一緒になれることを願って作った。たとえば、日本の文化とラスタの文化は違うけれど、分かり合えるところも多いはずだからね。
●先行ヒットした「Someone Loves You」で、これまでとは違う面を見せたましたよね。
A:母のお気に入りの曲で、いつも歌っていたんだ。すばらしい女性なのに、ひどい扱いを受けたり、感謝をされなかったりする女性はたくさんいる。そういう女性達を励ますために作った。
●ジャマイカのステージで「ラスタだって踊るんだぞ!」と言って、みんなでダンスをするセグメントがありましたが、踊りやすい曲も意識的に入れました?
A:ちゃんと入れているよ。女性に対する愛情を歌ったり、楽しい曲を作ったりすることと、ラスタであることは矛盾していないと思う。生活様式は違うけれど、同じ人間なんだから感じ方は一緒なんだ。ボブ・マーリーが示したように、みんな共通の悩みや問題を吹き飛ばすような音楽をラスタの視点で作るのが大切なんだ。
●ミリーの「My Boy Lollipop」や、テナー・ソウの「Ring the Alarm」を使ったのは、自分のアイディア?
A:周りと相談しながらやったけど、古い曲に自分の解釈をつけるのは好きだね。
●「Love I More」はカルチャーの曲みたいで、まるでジョセフ・ヒルがコーラスをつけているように聞こえますが。
A:いや、あれは同じレーベルのキング・ダヴだよ。カルチャーの音楽は大好きだから、そう言われるのは構わないけれど。
●ワイクリフ・ジョンとはどうやってリンクアップしたの?
A:前から顔見知りだったけれど、この作品でトゥゲザーネス・レコードが正式につないでくれた。一番尊敬しているヒップホップ・アーティストだから、嬉しかったね。文化的な背景や育った環境が似通っているから、お互い分かり合える部分がたくさんあった。ゲットーで育って、子供の頃に十分に食べられかった経験をしていたり、だからこそ、何かをしようという情熱がすごく強かったりするところとかね。
●スヌープ・ドッグとの共演はどうでした?
A:カリフォルニアまで行って、一緒にスタジオに入ったよ。
●なんか、めちゃくちゃ煙そうですね(笑)。
A:その通りだね(笑)。彼とは、ヴァイブを得るための方法を共有しているんだ。
●最近のあなたのヴィデオはヒップホップ並みの質ですが、やはりそういったプロモーションも大切だと思いますか?
A:インターナショナルなマーケットでアンソニー・Bは新人だから、同じ土壌に立つためには、そっちのスタンダードに合わせる必要がある。ジャマイカの音楽はクォリティーで引けを取らないし、「サンフェス」みたいな大きなコンサートもある。そこから一歩上がって、メジャーなレコード会社にインパクトを与える努力をする時期だと思う。誰かが率先して、レゲエ・カルチャー全体を引っ張らないと。
●あのヴィデオはジャマイカのカラーが薄すぎる、という批判もあったようですが。
A:いや、俺なりにジャマイカのものを取り入れる努力はしたよ。服だってヴェルサーチとかじゃなくて、Cooyahとボブ・マーリーのブランドを着ているし。二つのカルチャーをうまく結んで、お互いに紹介したかった。いまどきのジャマイカ人は自然にアメリカナイズされているわけで、そこを否定しても嘘になる。ラスタマンがラバダブ・サウンドで歌っている図、なんてのは現実的じゃない。100%ジャマイカ産のヴィデオは「Mr.Heartless」とかでやり尽くしているし。
●西部劇っぽいイントロの意図は?
A:映画を観るような気分で、アルバムを楽しんで欲しいと思って。昔からのファンには、俺が変わらず同じ奴で自分のカルチャーに根ざしながら、クリエイティヴな面を出していることを伝えたかった。
●アルバム全体で一番伝えたかったことは何でしょう?
A:クリエイティヴィティーの大切さ。日本人はクリエイティヴだから、そこはよく理解してくれるんじゃないかな。世代によってアイディアや視点は違うから、当然、表現方法も変わってくる。アンソニー・Bは、ボブ・マーリーやピーター・トッシュ、ブジュ・バンタン、シャバ・ランクス達のイメージの陰に埋もれたくないんだ。自分自身の力でシーンに貢献して、はっきりと足跡を残したい。このアルバムは、そのために作った作品なんだよ。
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