●今回、デリシャス・ヴァイナルと契約した経緯から教えて下さい。
Mr. Vegas(以下V):知り合いの知り合いが話をつないで…というパターンで去年の9月に話がまとまった。アルバムにはその前から取りかかっていて、1年半かけて仕上げた。
●以前、よくコンビを組んでいたショーン・ポールの成功はやはり刺激になりました?
V:もちろん。俺も「Heads High」で有名になったけれど、やっぱり次を狙わないと。ショーンの成功は喜んでいるけど、ちょっと有名になりすぎたよね。あそこまで売れたいとは俺は思わないな。
●シンガーとDJを平行してやるスタイルにしたのはどうして?
V:俺はラヴ・ソングだけを歌うタイプのシンガーにもなれるけど、色々なスタイルをミックスさせてエネルギッシュで踊りやすい曲をやる方をあえて選んだ。
●バーリントン・リーヴァイを敬愛しているようですね。
V:俺にとって彼がベスト・シンガーだ。一番影響を受けている。
●「Sweat」での共演はどうやって実現したのでしょう?
V:98年くらいから俺が“尊敬するアーティストは?”と訊かれる度に彼の名前を挙げていたのを、どこかで読んで好感を持ってくれていたんだ。とうとうコンサートで一緒に仕事をする機会があって、それ以来、アドヴァイスをもらって仲良くしている。
●では、気が合うプロデューサーは?
V:ダニー・ブラウニー。今、ヒットを作っているタイプではないけど、彼は本物のプロデューサーだ。最近のプロデューサー達はサンプリングして器用にまとめるのは上手だけれど、キーの取り方も知らない人が多い。スタジオに入った時、全然外れているのに“こういう感じで歌って”と言われて困ることもある。ダニーやスティーヴィー&クリーヴィー、キング・ジャミーといった人達はその辺りは厳しくてきっちりしているよ。
●ローリン・ヒルのアルバムに参加したヴェダ・ノヴェルスも参加していますね。
V:彼はレゲエのフィーリングが分かるからね。あと、アメリカ人ではストリート・コンサートでたまたま会ったジーノという若手も参加している。
●「Thank You Girl」でフィーチャーしたフォクシー・ブラウンとは仲良し?
V:もちろん。彼女はヒップホップ・アーティストだけど、自分のルーツを大事にしてダンスホールをずっとサポートしてくれている。
●ドネル・ジョーンズの「You Know I Love You」のカヴァーは、ボブ・アンディのメロディーを使いながらも元曲の良さも残していてバッチリの出来ですね。
V:カヴァーする時は、俺のカラーを足しつつ元の曲を損なわないように気を付けている。サンチェスはその点が完璧で、カヴァーなのに自分の持ち歌に出来るよね。曲を選ぶ時も、俺は流行っているという理由だけでは歌わない。ガールフレンドに電話で歌いかけられるくらい、自分に似合った曲を探すんだ。
●リル・ジョンとピットブルが参加している「Pull Up」のリミックスを収録したのはなぜ?
V:出版権は俺にあるからね。あの曲は「Pull Up」が流行り始めた時に二人がミックス・テープ用にあの曲を作って、それが代わりにラジオで流れるようになった。連絡がなかったから、ちゃんと弁護士を立てて話し合うハメになった。
●ピットブルはあなたにケンカを売る曲も作っているようですが。
V:そうらしいね。でも、俺は相手にしている時間はないから。
●ここ数年でBET (Black Entertainment Television) がジャマイカで浸透して、ヒップホップとダンスホールの関係は近くなっているのはいいことでしょうか?
V:いい面も悪い面もあるね。BETが一般化した時、ジャマイカのクラブでヒップホップがかかる率がぐっと増えてちょっとマズイ感じだったけど、その逆の流れでアメリカでもウケるダンスホールが出てきた。そうこうしているうちに、エレファント・マンやジャン・ハイプが一斉に踊るダンスを流行らせ始めて、またダンスホールが盛り上がったんだ。
●アメリカで流行っているわりには、ジャマイカのアーティストやプロデューサーが十分にチャンスやクレジットが与えられていない気はしませんか?
V:あまり言いたくないけど、俺達はなめられているんだよ。流行りモノだと思われて、ショーン・ポールが次にコケたらブームはお仕舞いとか言われる。俺達がヒップホップのビートを使っても絶対にアメリカのラジオでかからないけれど、逆の場合は断りなしでも構わないんだから。俺がいい例だ。ピットブルはビートを使っただけでなく、曲のコンセプトまでそのままだった。それで、俺が正当な権利を主張した途端、反撃されたうえ、デリシャス・ヴァイナルの親会社のインタースコープに俺が問題を起こしていると思われてドロップされた。それで、インディー扱いになったんだ。
●そうですか…今年、来日しましたが、日本の印象はどうでした?
V:楽しかったよ! お世辞じゃなくて、帰ってからすごくいい場所だったって言いふらしているくらいだ。びっくりしたのは、レディー・ファーストの習慣がないこと。俺のスーツケースを女の人が運ぼうとしたのはかなりビビッたね(笑)。
|