ケヴィン・リトルによってようやく脚光を浴びたソカ・シーンで10年以上に渡り活動を続けるルピーがアトランティックと契約し、『1 On 1』で世界デビュー。早速、彼に本作について語って貰った。

最初に影響を受けたアーティストは?
Rupee(以下R):最初に買ったレコードはプリンスの『パープル・レイン』だったよ。僕はドイツ人の母とバルハドス人の父の間に生まれたんだけど、幼い頃はイギリスとドイツを往復する生活を送ってて、そこで色んな音楽に触れるようになったんだ。母はボブ・ディラン、ローリング・ストーンズ、ビートルズが好きで、父はボブ・マーリィーや、ジミー・クリフをよく口ずさんでいたよ。上に2人の兄貴がいて彼らからはヒップホップをよく聴かされたね。

バルバドスのソカ/レゲエ・シーンはどんな感じ?
R:パワフルの一言だね! 「クロップ・オーバー・フェスティバル」というサトウキビの収穫祭が毎年6月から8月にかけて行われるんだけど、これは奴隷制度が存在していた頃から受け継がれているイヴェントなんだ。多くのミュージシャンはこの時期にめがけて作品をリリースしたり、ライヴやバトルも行われるんだ。これがバルバドスで一番大きなミュージック・イヴェントだね。この時期になるとバルバドスのミュージック・シーンがどれだけ大きなものかが毎年分かるくらい。アーティストだと、クロス・ファイファー、アリソン・ハインズ、リル・リック、スクウェア・ワンがビッグだね。それ以外にもヒップホップやR&B、ダンスホール・レゲエが盛んだね。

これまでにリリースした3枚のアルバムを今改めて振り返って一言。
R:2000年に出したのが『Blaming On The Music』、2ndが『Leave A Messase』、そして3rdが僕のウェブサイトのURLでもある『thisisrupee.com』。どれも思い入れのあるアルバムだよ。95年から2000年にかけてはCoalishunというバンドに参加していた。因みに今の名前ルピーは本名のルパートを文字ったものだけど、死んだ母親がずっと呼び続けてくれたニックネームなんだ。ルパートは「著名な人物」を意味するから。その名前に恥じぬよう頑張ってるよ。

自分の“人生を変えた出来事”とは?
R:両親の死、だね。5年位前に父がエイズに感染して母にも感染してしまったんだ…。精神的に大きな打撃だった。それは僕の書くリリックにも反映されていると思う。今まで以上に全ての事に対して一生懸命にならないと、と強い気持ちを持つようになったから。2人はいつもここ(ハート)にいるよ。

「Tempted To Touch」を書いたのは、どんな気分の時だったか覚えてる? R:うん。これは圧倒されるほど魅力的な女性に囲まれた時の男の衝動心を表現したものだからね。美しいものにはつい触れてみたくなる、そんな気分を歌ってるんだ。

今作のタイトル『1 On 1』に込められた想いは?
R:僕とリスナーが“1対1”の関係を築き上げられるように。少なくともこのアルバムを聴いている間はね。僕の経験やメッセージをリスナー1人1人に伝えたい、というのがコンセプトなんだ。

サウンド・プロダクション面で特に意識したことは?
R:ピュア&ラガ・ソカ、そしてダンスホール、と様々なサウンドを取り入れている事かな。僕自身、Macを使ってビートを作ってるしね。自宅で打ち込んだビートをスタジオに持っていってエンジニアやプロデューサーたちに完璧なものに仕上げて貰うんだ。あと勿論ライヴ・バンドもあって、それは“ドット・コム・バンド”って言うんだけど、彼らの演奏もホットだよ。バルバドス・ライヴ・バンドなんだ。

参加してるプロデューサーについてもコメントを。
R:ダロン・グラントはバルバドスのプロデューサーで、本当に才能のある男。クリス・オーマンは仕事する度に尊敬が高まる人物で、前作『thisisrupee.com』でも多くの曲を一緒に作ったんだ。サラーム・レミの事をコメントするのは光栄の一言だね。プロデューサーとして、友人として、何より人間として素晴らしい人だからね。今回も彼が未知の事柄を経験させてくれたんだ。

アルバム収録曲についても少し解説して。
R:「Jump」は「クロップ・オーバー・フェス」のスピリットを感じさせる曲。そのフェスティバルでは「ロード・マーチ」ってバトルがあって、この曲がそこで“ロード・マーチ・ソング”に選ばれたんだ。1年のうちにバルバドス、マイアミ、ニューヨーク、トロントで選ばれたんだよ! 「Always Be There」は他界した母に捧げたパーソナルな曲。「Tempted To Touch」は僕に成功をもたらした曲。実はアルバム収録曲のうち10曲以上が何年かあたためた上でリリースした曲なんだ。アルバムとして完成させるのに4ヶ月も費やしたけどね。全てのプロセスで本当に様々な事を学べた事に感謝している。願わくばこのアトランティックからのニュー・アルバムだけでなく、過去の3枚のアルバムも引っ張り出して僕の全てを知って欲しいね。




"1 On I" Rupee
[Warner / WPCR-11924]