ビグザム、XBS、スウォード、マッカチン、ゴアテックス、デリ、ダボ、スイケンという個性豊かで実力派な8人のMC集団、ニトロ・マイクロフォン・ アンダーグラウンド(以下ニトロ)。'80年代末期から脈々と受け継がれてきた東京のアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンの正統な継承者である彼らは、'90年代後半に自然発生的にグループとして形成され、そして'99年にリリースしたアルバム『Nitro Microphone Underground』によって、東京のヒップホップ・シーンの頂点に踊り出す。『Nitro Microphone Undergroundd』のリリース以降、個々のソロ活動を重点的に行なってきた彼らが、遂にセカンド・アルバム『Straigt From The Underground』によって帰ってきた。
約1年という、忙しい彼らにとっては決して短くない期間で制作された今回のアルバムだが、クラシックとも呼ばれるファースト・アルバムからのプレッシャーは「無意識でした」(ダボ)と語っているように、ごく自然体な姿勢で、前作よりも更にパワーアップした現在進行形のニトロが詰まっている。しかも、それが「俺らにコンセプトなんてあるわけない」(スウォード)の言葉通り、ノー・コンセプトで作られているのだから驚く。
「ニトロの(曲の)コンセプトは最初に書き出した人に皆が寄り添うっていうのが基本だから」(ダボ)
「その最初に書いた人のリリックでっていうのも、あったり無かったりで。皆、勘なんじゃないですか?」(デリ)
皆が「勘」を頼りに阿吽の呼吸で一枚のアルバムを作っているというわけだ。しかし、だからこそ8人の絶妙なバランス感と間合いによって、ニトロ独特の混沌とした空気感が生まれているとも言えるだろう。
実は、その「勘の良さ」はプロデューサーにも求められていて、「白紙で依頼」(マッカチン)された様々なタイプのプロデューサー達がトータルでニトロの色を作るという重要な任務を負っている。その中でも、1曲目を飾るアルバム・タイトル曲「Straight From The Underground」は、過去にも「Live '99」などの印象的なトラックをニトロ作品として残してきたDJヴィブラムによる強烈なブレイクビーツ・トラックに、8MCが凄まじいマイクリレーを披露している。
「ミタ君(DJヴィブラム)は意外と合いましたね。誰が言い出したか覚えてないですけど、1曲目っぽくないですか?」(デリ)
「(ニトロが)巻き込まれた」(ダボ)
DJヴィブラムの他にDJワタライ、DJハヂメ、Mr.イタガキらニトロ作品ではお馴染みのプロデューサーが揃う中、ニトロのメンバーとは非常に縁の深いムロが「10%無理」で初めてプロデューサーとして参加し、更にラップも披露しているのも注目だ。
「(ムロの参加は)タイミングですね。成り行き。ラップも誰からともなく。っていうか、今回のフューチャーリングは全員誰からともなくリリックを書いているんで。そういう空気感がレコーディングにあった」(ダボ)
ムロの他にも「ナイバビFive」をプロデュースしたカシ・ダ・ハンサムが「ご自分のアイディア」(スウォード)で自らラップを乗せ、「毒々」にはあのトコナXまで参加し、強烈なライムを残している。
「トコナがスタジオに来て、いきなりフックを『ガ〜』って歌って、帰っていったんだよね」(スウォード)
そうやって、ニトロが周りを巻き込み、更に周りもニトロを巻き込み、その相乗効果で今回のアルバムは完成した。
実は今回のインタビューは、ニトロのメンバー全員が集まったロサンゼルスにて行なったものだが、彼らはこのロサンゼルスにて「Still Shinin'」のプロモーション・ビデオ撮影の他に、ドクター・ドレなどを手掛ける名エンジニア、ブライアン“ビッグベース”ガードナーのマスタリング作業にも立ち会っている。
「音は……深いよ。マスタリングでする仕事って決まってるけど、プラス・アルファがビッグベースにはあった」(マッカチン)
「聴けば、やっぱり判る」(XBS)
筆者はマスタリング前後の音を聴かせてもらったのだが、全体の統一感が増しているのは明らかで、そんな音への細部のこだわりもこのアルバムの完成度を高める一つの要因になっている。
最後にメンバーを代表してダボからファンへ一言。「待たせたな!」
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