「待望の」って言葉はよく使うけど、空前のジャパニーズ・レゲエ・ブーム(?)、リリース・ラッシュの中、ホントに「待望」されていた男の2ndアルバムが遂にリリースされる。“ハマの兄貴”と呼ばれるこの男、Nanjaman。前作『StraightUp』から約2年振りとなるニュー・アルバム『Eliminator』は、待ってた甲斐があったどころか、予想を遥かに凌駕する大傑作として完成し、その中の数曲は「レゲエ祭」を始め、様々なこの夏のレゲエ・イベントで披露され、ファンの期待は既にマックスに達しているだろう。
今回はそんな“兄貴”にナマの声で、このアルバムについて語ってもらおう、との企画でインタビューに向かったんだけど、相変わらず話は逸れまくり、脱線しまくりでとりとめのない感じになってしまったかもしれない。それに、何しろ多忙な“兄貴”のこと、ひっきりなしの出演依頼や、ステージの打ち合わせの電話、ファックスの嵐に対応しながらの話となったが、実に真剣にこのアルバムのテーマ、皆に聴いて欲しい所などを語ってくれた。
間にマキシ・シングル「World Leader」を挟んでいたり、客演も多かった為かそんなに久しぶり、って感じはしないけど…
「他の人だと一年に一枚出したりするのかもしらんけど、オレにしては早い方っちゅうか(笑)」
「どういうアルバムにしようとか、あんまりなかったんやけど、逆に色んな曲が入ってるやん。オケも "Mad Instrument" みたいな新しいのも入ってるし、Rockersのテーマみたいなのも入ってるし。今の若いコらって昔のオケ知らんかったりするかもしれないから、レゲエって色んなタイプがあるんやで、ってとこも聴いて欲しいってのもあるねん。あと、オレは昔のオケばっかり使う、みたいに思われてそうだから、新しいのもいけるで!と。RiddimはRiddimで一緒やしね」
実際、Nanjamanのジョグリン・オケでの曲はハマリ曲が多いし、逆に得意なんじゃないか、とも思う。今回も、その "Mad Instrument" による「よく振ってくれ」やAckee & Saltfishとのコンビネーション「One Night Show」など言葉遊び中心の曲にNanjaのもう一つの持ち味が上手く表れているし、何しろステージでの盛り上がりは必至だろう。
当然、そういったパーティ・チューンばかりではなく、イラク問題を真正面から取り上げ話題となった「World Leader」を始め、貨幣制度自体に疑問を投げ掛ける新曲「Money Just Money」、日本人としてのアイデンティティを問うJap Jamレーベル時代の名曲「Born Japanese」の再演等々、前作に比べてもより深い問題提起を促すような曲が多いのも今作の特徴だろう。
「やっぱ、レゲエは楽しい音楽だし、それはそれでいいんだけど、実際イラクとかエグイ事になってるやん。それの原因ってなんやねんみたいな。そんなんも歌うのもレゲエって音楽だと思うから。もっとみんな色んな事も考えた方がいいやん」
「お金の事にしても、無ければ困るんだろうけど、そう言う仕組みも誰かに押し付けられてるのかも知れんしね。レゲエはそういう体制をぶっ潰す音楽な訳だから」
過去の曲、Nanjaクラッシックスとでも言うべき名曲達の再演もバランスよく配置されているのも新しいファンにとっては嬉しい所。中でも「Boxing」は、D-O氏作のトラックの出来映えもあり、元のテイクを凌ぐ緊張感と、まるで本当のボクシングの試合を見ているかのような臨場感を出す事に成功している。因みに同オケでは平塚のマイクロ・タックス所属のセルモン、伝説のミックス・テープ『Bumper Hit』に収録されていたJr. DeeとMr. Jによる「世界中でWar」の再演、そして、年内にアルバムも予定されてるSynditate Girlsが7インチでリリースされるので、こっちも合わせてチェックしておいて欲しいとのこと。
そして、ラストを飾るのは、あの名曲「行きたきゃ行け」の続編とも言えそうな珠玉のバラード「離れていてても」(涙)。あの歌の2人はどうなったんだろう、と思っていたファンも多いだろうけど、こんなに切なく優しい歌が届けられた。
「半分はホントの事(照笑)。昔のレコードとかってA面、B面5曲ずつで、最後にロック・バンドでもバラードが入ってたやん。ああいう感じで入れるようにしてるんだけど、こういうのが一番苦労するわ(照笑)。あんましクサいことも言えんしね」。そう言いながらも、男の強さと弱さ、そして優しさにあふれた名曲の誕生で、こんな事を歌われたら、女の子はたまんないよね。
とにかくインタールードを含めての全14曲。ミックスは全てBobby Digital、他ジャンルとのコラボも無し、参加アーティストAckee & Saltfish、Chucky Smart、Jr. Deeとファミリーの様なメンバーで固めた今回のアルバム。スペースの関係で一曲一曲をちゃんと紹介する事が出来ないんだけど、申し分のない“レゲエ の”アルバムであり、更にそんなジャンルの壁など易々と超えてしまうだろうポテンシャルを秘めた傑作である、と断言してしまおう。
それでは最後に、この秋も様々なレゲエ・イベントでNanjaに会う事も、新曲を聴く機会も多いだろう皆にメッセージを貰っといたから、“兄貴”の言う事をよく聞いて、Nanjaワールドを楽しんでもらいたいし、そしてちょっとでも考えるきっかけにしてみて欲しい。
「結構オレの歌は、長い事歌ってる曲が多いからね。でも新しい歌も、頑張って6曲作ったから。今からまた、何年も歌うやろうから、新しい曲も聴いてくれよな」。聴いとかなあかんで。真剣。
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