●2人がいっしょにやり始めてからどれぐらいになるんでしたっけ?
Boy-Ken(以下B):いちばん最初は(須永)辰緒さんのRythemレーベルで作った「Follow Me No Massive & Crew」。それが91年かな? 80年代後半からちょこちょこ遊んだりはしてたんですよ。お互いね、変わってない部分は変わってないんですけど、音のセンスは時代によって変わってきてる。
Kang Dong(以下K):レゲエの聴き方もちょっと変わったかな? 昔はむりやりにでもレゲエをやってたから。一寸ジャマイカ病っていうかさ(笑)。
B:自分たちで「こういうのがおもしろいんじゃない?」とか「これからこういうのがくるんじゃない?」みたいに考えられるようになったかもしれないね。
●今回の『Everythin' Is Everythin'』ですけど、Yoyo-CやMoominといったレゲエ・アーティストだけじゃなくて、ZeebraやYou The Rock☆、Ai、Deli、Big-Oなどラッパーをフィーチャーしているのが印象的ですね。トラックメイカーもDJ Watarai、DJ HazimeにDJ Yutaka……。
B:でも、みんなにあえてダンスホールのトラックを作ってもらってる。ヒップホップのDJってクラブでプレイするときに自分たちが考える美味しいところを濃縮したミックスをするじゃないですか。だからトラックを作るうえでもその人が考えるダンスホール観が濃縮されてるから、わかりやすくておもしろいんですよ。
●それぞれのラッパーとの絡みもかなりおもしろい作りですね。
B:Aiちゃんと作った「エンジェル」なんて最初からすごくいい感触があったんだよね。そうしたらAiちゃんも含めた周りのスタッフが「ぜひ自分のとこのアルバムにも入れたい」っていうことになって。そう言ってくれたことがすごい嬉しくて、同じものを入れるのもおもしろくないから、それぞれに違うヴァージョンにしたりね。それが素直に、自然にできたのが良かった。「いい時代だな」って思ったよ。まさにジャー・ガイダンスって感じだよ。
●リード・シングルの「カリブの小さな島の唄」はトラックがソカ調で。
B:ジャマイカで生まれたレゲエがここまで届いて、俺は日本でこんな感じで楽しんでるぜ、っていう曲。都会のダンスホールですね。ずっと東京でやってる俺らのスタンスを出したかった。
K:レゲエの雰囲気は出したかったんですけど、プラス、カリビアンなムードを出したほうがイメージは膨らむかなと思って。レゲエにもカリブのいろんな要素が入ってるし、そこを膨らます感じで。俺ら的にはこれもレゲエだと思ってる。
●MoominとYoyo-CをフィーチャーしたTC Movements(Sami-T&Guan Chai)制作の「Dancehall Freak」は?
B:最高だよ。これは200%ダンスホール・ヴァイブスだね。Samiと「ヤバいぐらいのダンスホールがいいね」って話してて。現場でも家でも聴いててアツくなるような感じのね。そこにMoominにイケイケな渋い歌を歌ってもらっても合わない。逆にMoominワールドを入れたもらったほうがヤバさが増すと思ったんだよね。そこに俺とYoyo-Cがイケイケな感じで絡んでみた。Masterpieceとやった「Burn Bagga Dubi Dubi」もイイっスよ。個人的につきあいのあるサウンドだし、Kang Dongもつきあいはすごく古い。15年どこの騒ぎじゃないよね?
K:うん、Masterpieceっていう名前になる前からのつきあいだから。
●フィーチャリング・アーティストの選定は?
B:俺とKang Dongがだいたいのイメージを作って、それを話していった感じだね。ただなんとなく組み合わせただけのコンビネーションの曲を作りたくはなかった。ある世界観があって、そのなかにそれぞれのアーティストの世界観を入れてもらう感じで。
●いまダンスホール・トラックに乗ってみたいと思ってるラッパーも多いと思うんですよ。だからみんな楽しかったんじゃないですか?
B:そうだね、単純にみんなダンスホールが好きだし、クラブじゃ無視できないぐらいかかってるしね。でも、それは日本だけじゃない。みんなヤラれてるよ。でもこれはあくまでも2004年の俺たちだからね。来年は変わるかもしれないし、再来年も変わるかもしれない。時代に応じて変わっていきたいし、混ざるものは混ざっていく。だから楽しいし、ずーっとやっていけるんだよね。止まったものを追っかけていくのには限界もあると思う。俺たちがハマっている音楽は常に進化しているものだから。
●『Everythin' Is Everythin'』っていうタイトルの意味ですが……。
B:直訳すると「すべてはすべて」ってことだけど、「いろんな時代を経ているけど、今も昔も相変わらずだぜ」っていうことで。俺を知らない人でも今の俺を感じてもらえるはずだし、昔の俺を知ってる人にも、「おっ、変わらないね」みたいなね。で、これから先も変わらずやっていくよっていうことだね。
8月にBoy-Kenのこの『Everythin' Is Everythin'』をリリースしたV.I.Pは、9/24にはコンピ『Dazzlin' Gold -Ina Dancehall Style-』のリリースも控えている。ついに本格始動したV.I.P。“老舗の味”だけじゃない、フレッシュでオリジナルな作品を次々と投下してくれそうだ。目を離すな。
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