ビーニ・マンが帰ってきた。「お帰りなさい!」と大声で歓待したい気持ちなのは、私だけではないだろう。昨年は「Dude」でシーンのトップに返り咲いたと思ったら、年明けにあわや、の自動車事故。超人的なスピードで復活し『Back To Basic』を作り上げシーンに帰ってきたビーニに、ニューヨークのヴァージン・レコードのオフィスで話を聞いた。

 快復おめでとうございます! 日本のファンに怪我の状況と快復までの経過を教えて下さい。
Beenie Man(以下B):アメリカから帰ったばかりで、道が工事中でS字に規制されているのを知らなくて、いつもどおり真っ直ぐだと思い込んで突っ込んで横転しちゃったんだ。肺と鼻がつぶれて、唇が裂けて傷だらけになったよ。

今の調子はどうですか?

B:100%だよ。

Back To Basic』というタイトルの由来は?
B:その名の通り、基本に帰ったってこと。『King Of Dancehall』も候補に挙がっていたんだけどね(笑)。他のアーティストもがんばっているけど、「キングが帰還した」という意味合いで。

前作は個人的には好きだったのですが、
R&B寄りだから好きじゃない、という意見もありましたよね?
B:そういう人達のために今回のアルバムを作ったんだ。俺もあのアルバムは好きだけどな。かなり頑張って作ったし。

昨年末、「スティング」の騒ぎを収めるなど大活躍でしたよね。ダンスホールの人気者という地位だけに留まらず、国民的ヒーローという印象を受けました。ファン層も幅広いようですし…。

B:年寄りから子供、赤ちゃんでも俺のファンはいるぞ。それだけ層が広いから、音楽も自然と広がっていく。日本なんか良い例だよね。熱心なファンがいるから、いつ行っても歓迎されるし、ショウでの反応は最高だ。

戦略的な点から訊きたいのですが、ショーン・ポールやエレファント・マンが、インターナショナルなマーケットでダンスホールのカラーが強いアルバムを作り、かつそれが売れた事実についてはどう思っていますか?

B:いいことだよね。マジでさ。俺一人で(インターナショナルなマーケットで)頑張っていた時は、ダンスホールだけではうまく行かなかった。だから他の音楽とミックスしたんだ。それが、他のアーティストも出てきて、だんだん音楽が浸透して、ベースがしっかりしたおかげで、助けなしでも自分の音楽が出来るようになった。

昨年、ローカル・シーンで多くのヒットを放ったのは、意図的にしたこと?

B:意図的にやったことだよ。ジャマイカでビジネスを奪回しなくちゃ、って思って本気になった。エレファント・マンが頑張って、他の奴らも頑張っていて、「じゃあ、ビーニ・マンはどこだ?」みたいな空気があっただろ? 「俺はここに居るけど?」って感じで、ナンバー・ワン・ヒットを放って、国中を狂喜させたわけ。ジャマイカ人は俺に10曲も15曲も作ってもらうことを期待していない。1曲大ヒットがあればいいんだ。

年末、ジャマイカのステージでアコースティック調の新曲を歌っていましたよね? とてもいい曲だったので覚えているのですが、アルバムには収録しますか?

B:Back Against Wall」だろ? 俺もあの曲は好きなんだ。さっき、会議で話題に出たけど、今のところ入れないらしい。日本のライター・ギャルも褒めていた、ってもう一度プッシュしてみるよ。

Love All Girls」でどうして日本人の女の子をビッグ・アップしていないのですか?
B:みんなをいっぺんにビッグ・アップするのはムリだからだよ!(笑) しまったな、あちこちから「なんで私達のことは言ってないの?」って訊かれるんだろうな。今度から、もっとあいまいな言い方をするようにしよう。

ボーグルやジョン・ハイプを中心に新しいダンス・ブームが起きた理由は何でしょう?

B:あれはジョン・ハイプがやったことだ。ボーグルもいいけどな、はっきり言って年寄りだ。ジョンのダンスの凄いところは、一つ考えたら5年は持つタイプのダンスだってこと。

Row Like A Boat」もその手の曲ですが、他にあなたが考えたダンスはありますか?
B:いっぱいあるよ。Give Dem Runも俺が考えた。

では、エレファント・マンはちょっとズルイわけですね?

B:そうだ、奴に全部取られちまった(笑)。奴が殆どのダンスを曲にしてしまったから、他の人が手を出せなくなった。で、そのうちネタが尽きて、自分ですでにやったことを繰り返し始めているから始末が悪い。

インターナショナルなマーケットで成功しつつ、コアなレゲエ・ファンの期待も裏切らないコツは?

B:(声を潜めて)ジャマイカに住み続けること。

時々、身の危険を感じませんか? 今年の頭に、ショッキング・ヴァイブスの幹部が殺されましたよね。

B:確かに足を引っ張ろうすとする人はいるよ。大切な仲間や親友を殺して弱めようとする。でも、ネガティブな奴がポジティヴな奴に何か仕掛けても、結局ポジティヴなパワーに負けるんだ。

彼はプロダクション・マネージャーだったんですよね?

B:そうだ。人手が足りなくなって、仕方ないから俺がデスク・ワークもやっている。

本当に? 携帯派ですか? それとも
e-メール派ですか?
B:携帯派だ(笑)。

今のブームと90年代初頭のブームの違いはなんだと思いますか?

B:今はもっと音楽がフリーでオープンな雰囲気だと思う。昔は、スターが一人、もしくは二人のトップがいるケースが多くて、そうでなければいけない雰囲気が強かった。ブジュか誰か、俺かバウンティか、そうやっていちいち絞っていただろ。今は、もし自分のことをバシッとやっていたら後は構うなって感じだ。

 なるほど。でも、ビーニ一人勝ちはマズイでしょ。バウンティー番長、挽回して下さい。待ってます。


"Back To Basics
Beenie Man
[Toshiba EMI / VJCP-68663]