Hakase-Sun(以下H):どうでした?
●80年代前半に日本のラフ・トレードが出したレゲエのコンピレーション盤で『サマー・ブリーズ』ってあったの知ってます?
H:(笑)あったあった、ジャッキー・ミットゥとかタンタンとか、あと何故かドン・カルロスとかも入ってた奴(笑)。
●そうそう。僕にとっては初めて出会ったユルいレゲエというか、恐くないレゲエだったんですけど、あの時に感じた気持ち良さと本物に触れた嬉しさが蘇りました。で、1st『Plays Boyz-Toyz REGGAY!』で70年代初期のレゲエ的世界、2nd『Do Re Me Rockers』でもう少し後、78年頃の埃っぽい世界を展開して、さて今回は?と思ってたのですが、80年代のアリワ作品とか80年代半ばのシュガー・マイノットのラヴァーズ作品とか、そんな感触でしたね。
:うんうん、意外と80'sっぽいね。使った機材も80年代のが多いし。録音は相変わらず殆ど自宅でやってるんだけど、今回、家向きってよりも外向きってのを意識した。少しBPMを速めにしたりね。
●3枚目とあって気合いの入れ様も違う気がしました。
H:かなり入れましたね。特に収録時間とか…69分も入ってるし(笑)。曲も全部長めにしたんですよ。5分以上聴けるリズムっていうか。リズムはいちいちこだわらなくてもいい所にこだわったっていうか、例えばメモリ1ミリとか(笑)。一度売り払ったMPC3000を買い直したり(笑)。あと前はコンボ・オルガンが中心だったけど、今回はもうちょいハモンド・オルガンが中心で。ハモンドも色々あってね、やりたい方法が色々あって、もろジャッキー・ミットゥみたいのもやりたいし、あと凄いオーセンティックなものをやりたいと思ったのね。Hakase-Sunのコンセプトって唯々レゲエそのものをやりたいんだよね。シラフで素っぴんのレゲエ。そういうのをやるのが一番奥が深いんじゃないかなって。段々近づきつつあるかな、とは思うんだよね。でも、もっと近づきたいんだよ。だから日々研究してるの。
●構成的には?
H:割りと後半の方がレゲエ度は高いですね。前半は割りとポピュラーと言うか、普通の人に聴いて貰っても喜んで貰える様な。
●そういう意味ではオープニングを飾る「Shanty Shanti I」は特に80年代ポップス的なキャッチーな色合いがありますよね。
H:分かり易いですよね。女の子ウケするかもね。女の子って楽しいとか気持ちいいとか、そういう所で素直に反応するからね。で、7曲目の「Magic In The Air」から男向けのレゲエ・サイドになるって言うかね。
●ベースがガツンとくる曲ですよね。
H:やっぱ最終的にはリズムですからね。リズムが来ててナンボってもんでしょ? リズムが良ければキーボードなんて関係ないですよ。
●え? ホントですか?
H:キーボード、好きじゃないからさ(笑)。たまたま弾けるだけで(笑)。でも今回気付いたんだけど、メロディに歌心があればインストでももつかなって。やっぱりいいメロディって人を喜ばせるんですよ。人の快感原則ってあるじゃないですか? 演歌とか(笑)、そういう大衆的なものって好きなんですよ。
●そういう意味では、「In The Daylight」はいいメロディがいっぱい出てきて…。
H:ああ、裏メロとか(笑)。なんか聴いた事があるような(笑)。キャッチーなメロディになればなる程、「これ、どっかで聴いた事があるような」って(笑)。
●今回も歌ものが1曲入ってますね。ザ・マイスティースの次松大助が歌った「A Perfect Day For Cat's Cradle」。次松君とはマイスティースの「春の光」のリミックスで知り合ったのですか?
H:その前に大阪で対バンやったんですよ。次松君は去年ぐらいから狙ってたんで予約してて、直前まで「本当にやってくれるの?」って3回ぐらい確認したりして(笑)。次松君っていい歌手なんだよね、胸の琴線振れまくりみたいなさ。歌手として天性のものを持ってるよね。歌詞もまた良くってね。
●ミックスは今回、リントン・クゥエシ・ジョンソンやリトル・テンポの仕事でもお馴染みのヘンリー・ホルダーを起用してますね。
H:ヘンリーとはまたやってみたくなってね。スタジオもスパークサイドなんで、場所柄黒人の臭いのある所だから、そういうヴァイブスってあるじゃないですか。ヘンリー・ホルダーという耳のいい、しかもアフリカ人の血の流れた男の野生の血を俺のアルバムに入れたらどうなるのか?って(笑)、そんな企画ですよ。久し振りの仕事だったらしいから張り切ってくれてね(笑)。
●確かに。本当に過去最高傑作だと思いますよ。
H:そりゃあ、前より悪く出来ないでしょ(笑)。でも、お洒落にしたかったんだけど、出来なかった。
●そうですか? 今どきのカフェでもバンバン掛かりそうですけどね。例えば代官山辺りとかでも。
H:あっ、代官山のカフェなら、ちょっと嬉しいかな(笑)。
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