2004年7月号


Trevor Sparks


Greetings Friends,
今月は不運なことにいくつかの悪い知らせを報告しなければならない。まず、日本でも公演する予定だったPhyllis Dillonが、4月15日に死去した。彼女は世界中をツアーで廻り、同世代の男性ロック・ステディ・アーティストと比肩するほどの人気と実力を博していた数少ない女性アーティストの一人なので非常に残念だ。

1980年代後半のレゲエ・チャートをその甘いヴォイスでJammy、Whitfield 'Witty' Henry、Blue Mountainからなどのリリースで賑わせたTrevor Sparksが、心臓発作のため3月22日に亡くなった。彼は私から見るとメジャー・デビューするべきだった才能であり、Sean Paulのようなアーティストの先駆けだったと思う。もし、彼がSean Paulのような活躍する機会を与えられていれば華々しい経歴を残していたに違いない。音楽市場が振り向いてくれる前にこの世を去ってしまった。悲しい。

プロデューサーでありArrowsレーベルの長でもあるPhillip 'Arrows' Lintonも3月に死去した。彼はキンググストンのダウンタウンで射殺されたのだ。殺人犯はArrowsスタジオの前に茂る植木に身を潜ませ、Lintonの頭に数発銃弾を打ち込んだ後逃走したらしい。彼の死は音楽業界にも、彼が関わっていたサッカー・クラブ、Boys Town Football Clubにとっても大きなインパンクトを与えただろう。

申し訳ないが、訃報はまだ続く。Shocking VibesレーベルのディレクターでありBeenie Manのツアー・マネージャーでもあるPaul Tyrellが2月にキングストンで何者かに銃殺された。3月に行われた彼の葬式には働きものだったTyrellに敬意を表しようとNadine Sutherland、Judy Mowatt、Beenie ManやDean Fraserらが参列した。この事件は本当にShockingなVibesを世の中に放ってしまった。一体、ジャマイカに、そして音楽産業に何が起こっているのだろうか?

有名なStone Love Sound SystemのボスであるWinston 'Wee Pow' Powellが、Phillip 'Arrows' Lintonが暗殺されてから日が浅いうちに彼の殺害をほのめかす脅迫電話を受けたらしい。

お察しの通り、Beenie Manはひどい交通事故から着実に回復している。3月にジャマイカでは彼のために巨大なコンサートが行われ、6月までにはVirginからニュー・アルバムが発売される見通しだ。

レゲエ・アーティストによる最新“トリビュート”アルバムは、なんとBob Dylanものだ。アメリカ、ワシントン州にベースを置くRASレーベルの企画でBeres Hammond、Sizzla、Gregory Isaacs、Luciano、Michael RoseやTootsらが参加しているらしい。スターが参加したカヴァー・アルバムは作り方が甘いか、作り込みすぎのものが多い。特にこのアルバムのように全世界の半分ぐらいの人々がメロディを知っている曲をカヴァーする際には細心の注意が必要だ。元曲が素晴らしいので、そのカヴァーはそれに負けない位に優れていなければならないと思うのだ。

イングランドの西にあるウェールズではBob Marleyの父、Norval Marleyの家族がウェールズの出身だと主張している人々がいる。ミュージシャンで詩人でもあるGeraint Jarmanが初のウェールズ語のレゲエ・アルバム『Hen Walf Fy Nadau (The Land Of My Father)』を1978年にリリースし、81年に彼はBob Marleyへのトリビュート・アルバム『Gerddi Babylon (The Gardens Of Babylon)』を発表している。彼とウェールズ語の擁護者達こそがMarley一族のルーツはウェールズ、正確にはPrestatynという町だと訴えている張本人だ。この主張を当のMarley家の人々がどのように考えているかは知らされていない。

暫く御無沙汰だったMelody Makersだが最近、CedellaとSharon姉妹が脱退し、グループ名をBand Of Brothers(又はB.O.B)に変更し再出発したらしい。Marleys一家のZiggy、Stephen、Damian、JulianとKymaniがリードを務めるが、彼らは、それぞれのソロ・キャリアを捨ててはいないことを強調している模様。どのような曲が出来上がるのか非常に興味深いところだ。
Till next time, be good and take care......

(訳:Masaaki Otsuka)



Beres Hammond
【お詫びと訂正】
本誌RIDDIM(No.255)のUK REPORT(P26〜27)にて
本文に誤りがありました。上記の本文は訂正したものを再掲載しています。
お詫びして訂正いたします。