ファースト・アルバム『Sword Man』から早6年…そんなブランクを微塵も感じさせない真のエンターテイナー、Papa Bがアルバム『Neo Entertainer』を完成。早速、彼に本作について話を聞いた。

 Papa-Bのインタヴューだ! 僕は何故か彼と会うと凄く嬉しくなるのです。彼はいつも音楽の事を考えているような気がするけど、実はごく当り前の様に世の中で起きている事、身近に起きている事も深く考えている。普段何気なく生活している中で見過ごしてしまいそうな事にも目に止め、それを真剣に考えているからこそ、彼の考えている事が音楽になって僕たちの耳に届くのだ。だからついこの前、彼が僕に語ってくれた事が暫くすると曲になっていたりするのだ。そしていつも彼の新作を聴く度に思うのは、Papa-Bと言う絶対的キャラクターを感じつつも、常に新しいスタイル、アイデアを提示しているって事。勿論、良い意味での裏切りはあっても、音楽を楽しませる事に関しては一度も裏切られた事が無い。

多分、彼のファンは皆、彼のそういったところの凄さに気付いている筈。そうすると必然的に何故こんなアイデアが出てくるのか? 更に突拍子も無いような事を堂々とやってのけ、聴く者を納得させちゃう彼の頭の中はどうなっているのだろう?と非常に興味が湧いてくるというものではなかろうか。現在現場で大ヒット中の「お経でポン」も結構ビックリさせられながらも思わずニヤッとさせられたのだが、今回の『
Neo Entertainer』では、阿波踊り、ソーラン節を題材にした曲の他、単にサングラスを無くした事を随分シリアスに唄ったりと、こんなテーマを思いつき、尚且つ形に出来るって言うのは、やはり常人ではない。

 「“Our Dance”はね、最近だとエレファント・マンがダンスの曲をやっているけど、日本でもそういった曲があっても良いと思ったんだよね。でも、1曲だけじゃ物足りないし、自分の故郷にもソーラン節があるし、そう思って“ソーランダンス”も作ってみたんだよね。2曲あると現場での流れも作り易いしね。踊りの説明ってリリックにすると体操みたいでかっこ悪くなりがちだから、難しかったよ」

 と言いながらも仕上がりはお見事。難しかったと言えば、冒頭を飾る新たな自己紹介的チューン「Neo EntertainerSuper 高速マシーン」も色々大変だったようだ。以下はその「Neo Entertainer」の話と今回のアルバム制作裏話。

 「最初にSami-TGuan Chaiがオケを作っててね、これ、今度のFire Ballと同じオケなんだけど、出来上がったらテンポが速くてね、早口で行けてもキーを合わせるのが難しかったりしてね。いつもより高いキーでやってみる事にしたんだけど、最終的に上手く行ってね。でもライヴで上手く行けるか怖くてさ。でも結局、ライヴでも上手く行ったし、多分これからもっともっといい感じでガンガン行けるだろうし、この曲、気に入ってるんだよね。今回のアルバムでは限界って言うか、限界は無いんだけど、今迄やってなかった事をやってみようってのが強くてね。それがやりこなせたと思うんで自信にもなったし、他にももらい物も有ったりしてね。

もらい物ってのは今回、
Yoyo-Cと一緒にやっているチューンが有るけど(“麗しの美女”)、ふと彼のフローが何となく頭に出てきて、それで何か出来ちゃったりとか、スタジオの帰りに車の中でSamiJungle Rootsのオケ聴きながら、ふざけたノリで裏声なんか出して唄い合ってる内に、裏声も今度やってみようかなとか…。影響も受けたし、また新しい事に挑戦したよ。今回はロックの曲(“One More Chance”)もやっているよ」

 彼は実に音楽の趣味の幅も広い。だから自分が音楽を作る時、ネタが詰まった引出しが実に多いのだ。そんな引出しの中の一つから作ったであろう「Lost My Sun Glass」の話、そして音楽の持つメッセージについて、更に音楽を作る時に考えている事を語ってくれた。

 「地方へ行った時にサングラスをなくしてさ。それで唄にしてみたんだけど、何かこういう馬鹿らしいような事も唄にしたいんだよね。でも大事なサングラス無くしたらやっぱりショックじゃない。俺は曲を作る時に回りの人やお客さんの事を考えるんだよね。“コレ、こうやって唄ったら皆どんな反応するのかな?”とかさあ。お客さんがビックリするような事とか、そういうのを作りたいんだよね。メッセージって、自分がこう思っても他の人達はどう捉えるか分らないしね。でも、たまには怒ってみたりしたいよね。そういう曲も無いとアルバムに締まりが出ないしね。怒る人に憧れるような事も有るけど、俺は唄で燃焼しているから。普段から怒っていたら唄ってなかったかも知れないし。

“お経でポン”はちょっと悪ノリで厭味なキャラで行ってみたんだよね。ロックな“
One More Chance”も頑張ろうみたいなメッセージだけど、ただ頑張ろうじゃ伝わりきらないでしょう。俺の場合、悔しい事とかをマイナー調で唄うんじゃ無くて、逆に明るい曲調で唄いたいんだよ。“風の国のランボー”も家族や身近な人と離れて頑張っている人達へのメッセージなんだけど、『プレデター』ってヒーロー物の映画に出てくる凄く切ないワンシーンが有ってね、それを…そこだけでも唄にしてみたかったんだよね」

 DJでありながらもメッセージだけに固執するのでは無く、如何にして聴衆を楽しませられるか、を求め続けるPapa-B。例え下らない題材を唄にしても彼は「音楽ってのはこれが楽しいだろ?」と聴衆へ投げ掛けているのでは? 正に「音を楽しむ」と書いて「音楽」ってのはこの事だとか思うのだが…。だから、彼が唄で伝えようとしているメッセージとは「音楽」そのもののような気がしてならない。漠然とでもそんな事が伝われば良いし、実際このアルバム聴いて貰えれば、ここでは伝わりきれない事も伝わる筈。皆さん、これ、大絶賛間違いなしですよ。ホント。




"Neo Entertainer"
Papa B
[Toshiba EMI / TOCT-25369]