DJ Yutakaっていうと、侍を感じさせる長髪と、ゴリゴリのヒップホップ、というイメージばかりある人も多いだろう。確かにDJプレイでスクラッチと二枚使いをしまくる、という意味ではパーフェクトなヒップホップDJだが、今回、彼が連続シリーズで出している『United Nation』と別ラインでリリースしてきた『Episode. 1』のシリーズは、完全に歌がコンセプトになっており、意外性すら感じた。しかも、インタビューで会ってみると、あの長髪をバッサリと切り、実にサッパリした印象。

　「別に『Episode. 1』が俺のイメチェンとかじゃなくて、今まで持っていた物で出していなかったものを出そう、っていう考えの元に作った物なのね。DJ YutakaっていうとヒップホップのDJっていうイメージが強いじゃないですか。ヒップホップのDJと言えば、そうなんだけども、DJだけじゃなくてプロデュース・ワークもMotownでいっぱい勉強したし」

　そう。DJ YutakaはL.A.に飛んだ際、Motownで丁稚奉公をしていた時期があった。Zulu Nationとしての活動ばかりが取りざたされてきたが、こうした部分がついに引き出しの奥から伝家の宝刀を抜きだしたわけだ。

　「Motownではセッションの中でドラムだけしか任されない新米だったんだけど、ドラムって凄く大事だったから。自分がドラムのプログラミングを任されたときに、ただ打つだけじゃなくて、打つのも組み合わせも個性が必要だし、やっぱり俺は勉強させられたから。今から考えると、上物に何が乗ろうと、打ち物がダサければ生きてこない。インストルメンタルの相性みたいなのが数えられないほどあって。曲でも声が出てくるイントロの部分だけでヒットしてしまうものもあり、そういうところに気を使って日本でももっと曲を作るようにしようと思って」

　そうして完成したのが『Episode. 1』、というわけだが、この人選が非常に面白い！

　全体的にDJ Yutakaが既にプロデュースを手がけたことがあるアーティストばかりで、MoominやPushim、Minmiといったレゲエ勢から、Exileや倖田來未、大黒摩季といったポップスの世界で頂点をとっている人達もいる。しかも仕上がりは、今まで個々の作品で出ていなかったそれぞれの個性を、本当に巧みに引き出している。

　「とにかく考えずに人選をしたわりには、結構良い奴が集まったな、と思って。俺のアルバムに乗ると、10人のアーティストのまた違った部分がみられるサンプルのように作ったのかな。でも、結構おしゃれにはできていると思う。中でもMoominは一番すんなりできた、っていうか、あんまり気を遣わなかったね。俺がトラック作りをしたときに、俺のイメージを一番包み込んでくれたやつで、『Episode.1』の奇跡のはじまりにふさわしかったから一番に持ってきた。Moominは俺と一番価値観が似ているのよ。俺も湘南だし。Moominは一緒にサーフィンとかやっちゃってるから。あとPushimには圧倒されたよね。やっぱり違う！　Pushim用のトラックに、本当はブリッジがあったんだけど、Pushimが“ワンバーで通したい”っていうから、合わしたんですよ。そうしたら、マイクを突き抜けるような声、声量は本当に鳥肌立ったよ。MinmiはL.A.のプールサイドで書いたようなもんだね。Shingo. Sと俺と、三人でL.A.でプールに行って、あいつプールサイドで書いてたよ、歌詞を。俺らは泳いでたけど（笑）」

　この『Episode. 1』を通して、DJ Yutaka自身、色々と気付いた部分もあるという。

　「これを今までアメリカで歌ものはやってきたけど、日本ではほとんどやっていなかったんですよ。けど、今回の仕事でいろいろ勉強になったし、日本も来ているな、って感じましたよ。全然商業ベースで作ろうとは思っていなかったし、全員よくやってくれたよね。楽しかったよ。『2』も作るんだけどね。マスタリングはJVCの小鉄さんにやってもらったし、ミックスはうちのスタジオで全部やって、うちのスタジオではそれぐらいの音が出るんだな、ってちょっと安心した。車で何度か聞いたけど、カーステでもそれなりに通るし、低音も出ているし、あんまり出し過ぎるとスピーカーが飛んじゃうくらいの出しかたしているんだけど、ちょっと良いんじゃないですか。こういうアルバムがもっといっぱい出ても。俺自身、何度聞いても飽きないアルバムになったよ」