MIX TAPE
2. G.K.Maryan / フィーチャリング集(G.K.M)

何ありそうで無かった技アリの一本、いや二本。それが、G.K.マーヤンの“フィーチャリング・ワーク”を集めたこのテープ。ペイジャー、リノ、ガマ、パトリックとの伝説のフリースタイル・セッション(95年)からカミナリ(新作が楽しみ!)音源を含め、ここ最近の“仕事”(般若の“神輿”等々)まで、絶妙な流れで、しかもミックスやエディット勝負ではなく“その楽曲をしかと聴かす”、言うなれば故ディック・マードックのブレインバスターばりの持っていき方(?)でダブルヘッダーで楽しめる仕掛け。G.K.の言葉、キャラの立ち具合を再確認すべし。


ALBUMS
2.Nappy Roots / Wooden Leather (Warner)

メジャー・デビュー作となる前作がジワリジワリと売れ続けミリオン・セラーを記録した、ケンタッキーはルイヴィル出身の6人組ナッピールーツの通算4作目。前作に続く登用のマイク・シティを始め、カニエ・ウエスト、ラファエル・サディーク、デヴィッド・バナー、リル・ジョンら、全米各地の有名プロデューサーと組み、よりグローバルなアプローチを見せる本作も彼らの“核”となる部分は変らず。ありのままの姿を自分たちの言葉で語る、というその様はかつてのアレステッド・デヴェロップメントにも近い、かもしれない。ソウルフルなフレイヴァーもタップリなサウスの金字塔、の一つがまた。
3. Chingy / Jackpot (Toshiba EMI)

ネリーを輩出したセントルイス出身の新人ラッパー=チンギー、話題のデビュー・アルバム。ルダクリス率いるディスタービング・ザ・ピースのニュー・メンバーである彼は、その人を喰ったような脱力系フロウ(声が時折エミネムのように聞こえることも)が売り物で、ファースト・カットの「Right Thurr」はデビュー曲にして異例の大ヒットに。映画『ワイルド・スピードX2』のサントラ提供曲も収録された本作でも、アイス・キューブやB2Kを手掛けたトラック・ボーイズが中心となり(DJクイックも一曲制作)、極上のバウンス・ビートをぶつけまくり。それを難なく乗りこなすこの男、ワンヒット・ワンダーには収まらない男、と見た。
4. Electric / Life's A Struggle(Miclife)


ボストン俊英インサイトが中心となり、元ミッションのラヒームらも加わった5MCズ=エレクトリック・カンパニー改めエレクトリックの初アルバム。5人組、という特性を最大限に発揮したリレーや掛け合いの数々は言うまでもなくオールド〜ニュー・スクールを自分達なりに消化吸収したスタイルであり、ありがちなアングラ→暗いという世間の非常識を完全に覆すモノ。ソロ・アーティストでトラックメイカーでもあるインサイトも、ここではより“華”のあるビートを披露している。のだが…彼らは5人集結した時が“見物”、なのだ。
5. Baby Black / Onece You Go Blak (Ultra Five)

フィラデルフィアのアンダーグラウンド・シーン猛者=ベイビー・ブラック(イル・アドバイスト)の初ソロ作は“BBE”から。地元の大御所DJジャジー・ジェフのリーダー・アルバムでも4曲でマイクを握った彼のイルなリリカル・テクニックはここで初めて解き放たれたかの如く大炸裂。DJレヴォルーション、ケヴ・ブラウン等のウマの合うトラックメイカー陣はひたすらドラマティックなビートを紡ぎ、主役はそこに物語を描く。L.Aのプラネット・エイジア、デトロイドのオービー・トライス(ジェイディ・レコーズ)と共謀したマイクリレー物も収録したスタイリッシュな一枚。“BBE”ファンも満足なこと請け合い。
6. Lordz Of Blooklyn / Grafitti Roc(Ape Sounds)


実に8年ぶりとなる2ndアルバム。一時はバンド・スタイルでも演っていたイタリア系白人グラフィティ・アーティストであり、トラック・チームであり、MCのゲイブスとアドマネの兄弟が又々やってくれた。あの「Lake Of Fire」のロード・フィネス、O.Cをfeat.したリミックス、エヴァーラストとの「Sucker MC」(ランDMCのリメイク)、そして「White Trash」のKornリミックス等、ここ数年での彼等のキー・トラックも収録しつつ、バスタやランぺージ、フレディ・フォックスらが各々参加したトラックもあり、オールドスクールからバウンス、バンド・スタイルとサウンド・アプローチも幅広い快作。日本盤には貴重映像満載のDVDとの2枚組!
7. Sonic Sun / Films(Tri-Eight)


ヒップホップ版“No New York”と評されることもある異才ファクトリー“オゾン・ミュージック”の切り札、ソニック・サムの4年ぶりとなる2ndフル・アルバム。ポエトリー的なロング・リリックを独特のグルーヴ感でライムとして吐き出す哲人ロブ・スミスと、ベース奏者、DJ2人からなる特殊な編成の彼等=ソニック・サムは、この久々のアルバムでも渾沌とした世界観をここに音楽的に掲示している。シングル・カットされたタイトル曲(ジ・オーパスによるリミックスはEPだけでしか聴けない)に代表されるまるで一本の映画のような感覚を詩的に楽しむ為にも対訳付きの日本盤がお薦め。
8. Nujabes / Mataphorical Music(Dimid)


ハイドアウト・プロダクション”での数々の偉業でも知られる日本人プロデューサー=ヌジャベス(そう言えばナス…)の初の自己名義アルバムが到着。サブスタンシャル、ファイブディーズ、ペイス・ロック、サイヌ・スター(サイン)、シンゴ2といった親交の深いMCたちとの鮮烈なセッションの数々は勿論のこと、気鋭ミュージシャン=ウヤマ・ヒロトとの楽曲、そしてイマジネイティヴなインストゥルメンタルで構成された本作は、改めて彼の持つ音楽的基盤とそこに宿る精神を色彩感覚豊かな音像で伝えてくれる。生楽器を加えたアンサンブルとサンプリング・メソッド、そのヌジャメス“流”がここにある。ディープかつブリリアント!
9. DJ Mitsu The Beats / New Awakening(プラネット・グルーヴ)

お馴染みガグルのお兄ちゃん、で外仕事でも充実した活動ぶりを見せるDJミツ・ザ・ビーツの初のソロ・アルバム。ジャージー・スポート・プロダクションと共に制作した楽曲の数々は、彼のサウンドの特質=ジャージーで暖かみのある音の核心を抽出するのみならず、新たな試みの連続で聴き手を遥か彼方へと誘ってくれる。つまりここには、音楽だけでカジュアルにアクセス出来る、例えるならばUSアンダーグラウンドのアーティスト同士の交流にも似た密な感じがある。文字通りクロス・オーヴァーなセッションもあるが、ミツ作品にはそれも自然かと。間違いなく今年屈指の傑作。
10. 2win Dope / 2win Dope(KSR)


1LowとDJケンソウの二輪駆動ユニット=ツインドープのデビュー・アルバム。あの知られざるクラシック「Ghetto Red Hot」、「非情の狼たち」を経て、ミックステープ『World Tour 2002』を発表した2人のその“Dopeなるもの”へのコダワリと、それを決して暗鬱なものとして聴かせない“感覚”は随一と言える。1Lowの盟友=イノヴェーダーがトラックを担当し、同じくUBGからウヂを迎えた「Big Score」や、ケント・ワイルドが絡む「ヒップホップ大陸」等々、本物ヒップホップのストレートな打ち出しの強さに溜飲の下がるファンも多い筈だ。


MINI ALBUMS

11. Aquarius / 連動(Cutting Edge)

デリ+ヤッコ=アクエリアスの「ココ東京」に続くトリプルAサイド・シングル第2弾。タイトル通りの確かな連動を体感させてくれる「連動」ではデリ〜T・ゾーン、ゴア・テックス、ケン・ウィール、ヨーヘイ、べースの7人マイク・リレーでルート6をレペゼンしたかと思えば、「アタッテクダケ〜トツゲキのテーマ」ではトコナ-XとタッズA.Cという又々フレッシュな顔合わせで闘いの狼煙を上げ、フル・アルバムには収録されないエクスクルーシヴの「ノリコム」ではRyuとトミー・コスターによるユニット=327による生ギターも冴え渡るビッグ・トラックでデリのハイ・パフォーマンスが…という具合で今回もスゴっ。
12. Apogee Motor / Mixed Nuts(Paranoear Sound)

カテゴライズ不能な音像を提起し続けるプロデュース・ユニット=アポジ・モータース(ジュニア1000+ゴッチ)の噂のミニ・アルバム。ロック的なエッジの鋭さやヒップホップのドープネス、サウンド・ドラック的なドラマ性、時にエレクトロニカ的な音響、といった様々なエレメンツをまるでミックスド・ナッツの如く、しかもアーティスティックなコラージュ作品として味わせてくれるのは言うまでもない。初期衝動云々というより、原始的なニュー・ヴァイブ。2曲あるゴッチのラップが入るチューンも完全なるアポジ仕様。