開放感、なんて言葉を使うのが野暮なくらい突き抜けた、いや底ヌケにあったかく、楽しいアルバム。でありならも、レゲエらしく“感じながら考える”要素も根っ子にしっかりある力作。前作よりも更に栄養豊かな印象すらあるこの『グロウン・アップ』は、飲めば飲むほど、いや聴けば聴くほどに味わいを増すタイプのアルバム、だと思う。

一発一発のインパクト、その場でのヴァイブスこそが重要なライヴ・ステージを支える屋台骨である彼らは、“作品として世に出て残るもの”に対しても“Home Gらしさ”を随所でアピールしつつ、末長く聴けるベーシックな作りを目指したかのよう。その点は前作にしても同じであり、それこそがHome Gの“まごころ”というか“レゲエ愛”と受け止められるのだが。
 では、まずはメンバーを代表してベースのTancoに少し“語って”貰うとしよう…。

新作のコンセプトについて教えて下さい。
「コンセプトはずばりGrow Up! レゲエと共に、僕らも、シンガーも、DJもポジティヴ・ヴァイブスがグングン育ってる、ってところを表現したかった。テーマは前作に引き続き“愛”。大きい意味でね。曲によってポジティヴ・ヴァイブスだったり、男女の愛だったり、ガイダンスだったり……。とにかく色んな愛を入れました」

ジャマイカン・アーティストのフィーチュアリング等、新たな要素も増えてますが、その“構想”は以前からあったのですか?
「実際、日本人アーティストもみんなGrow Upで忙しくて、中々ブッキングの都合がつかなくてね。今回予定してたけど、時間的な問題でアルバムに参加出来なかった人が何人か居てね…。それならジャマイカンに歌ってもらおう!というのが実は始まり。結果的にはジャマイカン・レコーディングが出来てホント勉強にもなったし、良い経験が出来たので良かったですね」

改めて前作『ホーム・グロウン』を振り返ってみて、一言。
「前作? 大好きですよ! いい曲ばっかだしね。Home Gでないと出来ないことをやったと思うし。でもそれは今作も同じだと思うので、本当に多くの人に聴いてもらいたいですね」

“サン・フェス”への意気込みのほどを。
「日本もジャマイカも変わりなく、ヴァイブス全開でいきますよ。絶対来年も出たいですしね。リディムにシビアな国ですからね。やりがいがありますね。“日本代表”ってことで、恥ずかしくない演奏をしてきますよ。」
 
 オーディエンスとのコール&レスポンスも楽しいスタジオ・ライヴ仕立ての「Sound Terrorist <Cannabis Version>」は、勿論Nanjamanのあの不滅の名曲を、今の時代向けに歌い直したもの。そして、その“熱狂”はMC Banaの名調子が冴えるインタールード「For The People」を挟んで次のJumbo Maatch、Takafin、Boxer Kidの「Gwaan Good」に引き継がれる。止まることを知らない成長、をテーマにしたその曲のアツさったらない(Dean Fraserのホーンもハマりまくり)! 続いての「Happy Birthday」はMoomin、Papa U-Gee、Keycoの3人が登場する、P.Vでもお馴染みの“生命”の尊さを再認識させてくれる一曲。そして、Judy Mowattの代表作「Black Woman」のインスト版から、Terry Linenの芯のある美声が生きたBob Marleyの「Wisdom」のカヴァーときて、舞台は情熱の国スペインへ。“気分”を盛り上げるイントロ「Night In Madrid」から、PushimとYoyo-Cの2人が男女の燃え上がる気持ちを表現したベスト・コンビネーション「Passion」で、ダンスホールのパッショネイトを感じてムラムラきたところで、車が走り去るところから始まるあやしいインスト「Slip, Trick, Truck」、ときて塩辛い声が最高なBush manが歌う「Natural Collie」(Freddie McGregorのあの曲!)、という流れでディープなメッセージを感じつつ、Papa U-GeeとAilieの2人がガイダンスの力、強さをリリカルに綴った「Grow Up」の大らかさにヤラレ、大ラスの「想い出の渚」へ。日本人なら誰でも知ってるハズ(?)のThe Wild Onesのこの名曲を何とそのオリジネイターのコーラスを交え、H-ManがDJパートを見事に演じ、新しい解釈を見せることに成功した。「Oh Carolina」の日本版の如きこの曲の完成度もすこぶる高い。そしてアルバムは「Outro〜Ethiopian Serenade」で、余韻タップリ残しつつ締められる。

 そう、ここにあるのは他ならぬ“成長の証”。彼らのようなヴェテランを指してそう言うのも気が引けるが、それはTancoの言葉にもある通り、“全て”にあてハマること。さあ、様々な愛の種を育んだ栄養タップリのHome Gドリンク=G-Up!を是非ぜひご賞味あれ!



"Grown Up"
Home Grown
[Ponycanyon / PCCA-01914]


Featuring....
Nanjaman
Bana
Jumbo Maatch
Takafin
Boxer Kid
Moomin
Papa U-Gee
Keyco
Terry Linen
Pushim
Yoyo-C
Bush Man
Ailie
The Wild Ones
H-Man