82年にパンク・バンド、Rose Jetsとしてアーティスト活動を開始した名古屋の双子兄弟Ackee & Saltfishには「風まかせ」という言葉が本当に良く似合う。憎いくらいに自身の哲学を貫く自由奔放な二人が、実に5年振りとなる100%セルフプロデュース・アルバム『Stilla Struggle』(沖縄版は『Kariyushi』。ジャケットも曲順も選曲も異なる)をリリース、久々の全国ツアーもスタートさせた。沖縄での盛り上がりも含めて二人の話をじっくり聞いた。

「かりゆし」の勢いはまだまだ続いているようですが、「ジャパン・レゲエ・フェスタ・イン・沖縄2003」はどうでした?
Ackee:暑かったー!(笑)

ちょうど日が沈む頃合だったらしいですね。
Saltfish:中トリみたいな感じで7曲やった。

今年も「花」を?
Saltfish:やってない。そのかわりに花じゃなくて最後に沖縄の「唐船ドーイ」をやった。沖縄の民謡。

新作『Stilla Struggle』から中心に? 「かりゆし」は大合唱だったんじゃないですか?
Ackee:そうやね、殆ど新曲。「かりゆし」は皆唄ってくれた。でまたエーサーの太鼓入れて。

その「かりゆし」も収録した待望の4thアルバム、本土版『Stilla Struggle』、沖縄版『Kariyushi』がリリースとなったんですけど、まず先行発売となった沖縄での反響はどうでした?
Saltfish:いい感じでしたよ。空港のおみやげ屋さんにもおいてあって。で、コンビニに行ったら、そこにも僕らのCDがあった(笑)。

沖縄の方でアキ君とヒロ君(Saltfish)のことを沖縄の人と勘違いしている人って…?
Ackee:殆ど殆ど。ほぼ全員(笑)。

レコーディングは基本的に名古屋と沖縄?
Saltfish:全部、名古屋で録った。でも沖縄の人にはたくさん手伝ってもらった。「そろそろ、かりゆし」とかも三線は俺んたの地元に沖縄料理屋さんの乗仁さんに弾いてもらった。

「そろそろ、かりゆし」ができたきっかけっていうのはCMですよね、泡盛「かりゆし」の。最初からリリース決まってたんですか?
Ackee:全然決まってない。15秒と30秒のコマーシャルがあって、曲作って送ったらすごく気に入ってもらって。で、アーティストも出演くれるかって言われて、じゃやりますよって。で、放送したら結構評判よくて「あの曲はCDないんですか?」っていう問い合わせがすごく多かった。で、「ないんですよ」って返事してた。でもあまりにも反響が多いもんだから、出したらどうだって話をされて、まあ沖縄だけでもいいから出そう、ってことになって。最初のプレスは1,000枚。で、注文をとったらそれを上回っちゃった。

最初のイニシャルでどれくらいきたんですか?
Saltfish:1,500〜1,600枚くらいかな。そんなにくるなんて思ってないですよね。コマーシャル・ソングの、しかも沖縄でしか流れとらんのがさ。せいぜい売れても200〜300枚だろうって。で、フタを空けたら結構評判がいい。で、次はジャケット変えてみようかって、ただ単にそんな気持ちで。で、再プレスしたらアレ?っという間にはけちゃった。で、もう1回1,000枚、またはけちゃった…ってる内に気がついたら9回も(笑)。

沖縄限定で1万ですもんね。沖縄の方が皆二人のこと知っとるはずだ。
Ackee:「ジャパン・レゲエ・フェスタ」のお客さんは本当にレゲエのお客さんだけど、インストアの時に来てくれるお客さんは、子供連れの人とかも多くてさ。アキソルって知ってるんじゃなくて「かりゆし」でくる。俺んたが沖縄で有名なのはレゲエ業界を抜きにすると、あのお酒のコマーシャルに出てる双子っていう。ま、沖縄の人から見ると身近なんだよね。

で、アルバムの話なんですけど、前作に引き続きNanjamanも参加されてますね。
Ackee:「Precious Ting feat. Nanjaman」。名古屋にNanjamanに来てもらって5日間位で作る予定が、丁度その時、名古屋で大きいサウンドクラッシュがあって、みんながダブ録りで忙しくなって、1〜2日で作らなきゃいけなくなっちゃって、どうしようって(笑)。それでとりあえずカラオケだけでも作ろうって話になって、ヒロ(Saltfish)がドラム打ち込んで、Nanjamanがベースラインを作って、それを僕がアレンジして。で、じゃあ、サビを作ろうって話になったんだけど、Nanjamanが「俺たちらしい事言いたいな」って言って、1人1番ずつ考えてこようってことになって、後はスタジオでぶつけ本番。プリプロとかは一切無しで、それぞれのリリックスを用意して、誰が一番最初に出る? じゃあ、俺が1番イク、次は誰みたいな…。

今回の作品全体としてサウンドが幅広いじゃないですか。いい意味でイケイケのチューンあり、自分的解釈ではロックンロール・バラード「あの時のままで」があり。アルバムのタイトルはどういう思いで?
Saltfish:「あの時のままで」は昔のいいこと、悪いことあったりした思い出を曲にしようと思って、だけど、いろいろ人が変わっていくのを自分らしさを無くさずにそのままで行きましょうみたいな感じで、だからいまだに苦しんでる最中っていうタイトルで『Stilla Straggle』なんですよ。

「そろそろ、かりゆし」「いやささ」に代表される三線や沖縄の掛け声もアルバムの象徴的サウンドになってますよね。沖縄のステージやダンスでは皆、「イーヤサーサー」って掛け声使うんですよね?
Ackee:やるね、皆使うね。特に沖縄に来たアーティストはやたらめったら使うね。皆盛り上がってくれるし。その中のひとりが俺んた(笑)。

そういう昔から受け継がれる掛け声とか民謡とかがずーっと息づいているのって沖縄の良さですよね。
Saltfish:そうそう。でもね、俺んたもなんで沖縄にそんなにあれしとるのかなって思う、名古屋にはないのか?って思うんだけどね。もうちょっといろいろ名古屋を見つめ直す時間がきたかなと思っとるんだけど。地元に継承されてきた文化があって、それが伝承されとらんだけで。

今回もきっちり「波乗り」チューンありますね。「Heat Up」。アルバム用に取り直したんですか?
Saltfish:そう全部。歌の部分入れて女の子のコーラスとかも入れてもらって、ミックスも全部変えて、それで全部やり直して。ただ主となる歌は残してやったんですけど。海へ向けての曲です。

作った時ってやっぱり海の行き帰りですか?
Ackee:僕のパートは、たいがい海の行き帰りです(笑)。行き帰り一人だもんだから、車の中で考える。

今回も楽曲は勿論、デザイン、プレス等の手配まで全て自分たちで?
Saltfish:そう、自分達で全部やってます。でも、バンドやっとった時から自分たちで自主レーベル、自主作品でやっとったから半分遊びだよね、いまだに。
Ackee:でもスピリッツはあの時と変わらない。

最後に一言ずつお願いします。
Ackee:自分勝手にこれからもやっていきますんで、みなさんも自分勝手に俺んたの曲を聴いて下さい。
Saltfish:ホントに好きなようにやっていきますので…そんなんでいいのかな(笑)? まぁ、息抜きに俺んたの曲を聴いてくれれば嬉しいです。何の見本にもならんけど、好き勝手やってますんで、みんなも自由気ままに楽しみましょう。



"Stilla Struggle"
[錦コミュニケーション/NSKR-AD 502]
※内地用アルバム




"Kariyushi"
[錦コミュニケーション/NSKR-AD 501]
※沖縄限定アルバム