2003年8月号


Bob Andy
Greetings Friends,

このコラムの読者諸君ならお気付きだろうが、筆者は最近のLee 'Scratch' Perryのキャリアにはあまり関心を持っていない。彼のライヴ・ショウは大騒ぎするようなものでもないし、レコードも退屈、それから人柄も全く困ったものである。彼のグラミー受賞時にコメントしたように、基本的に彼は天才的ミキサーとしての過去の功績と人気で生き長らえているようなものだ。年に一度、1ヶ月に渡ってロンドンで開催されるMeltdownという音楽イベントがあり、毎年良識のある有名人や音楽業界の代表が選ばれ出演者の人選を担当することになっているのだが、"Lee 'Scratch' Perry's Meltdown 03" と称された今年のそれは、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールとクイーン・エリザベス・ホールにおいて6月いっぱいも行われていた。Mad Professorや彼のクルーなど、明らかに彼の仲間達もいるにはいたが、残りのリストはとても多様性に富み、果たしてそのうちの何人の名前をLee Perry自身が聞いたことがあるのだろうか、と不思議に思わずにはいられない。David Holmes presents The Free Association?  Michael Franti 、Spearhead & the Sun Ra Arkestra? そんななずがない! 同系統のWire Magazineによって選ばれたアーティスト達の中にMad Professorのお気に入りをスパイス代わりに投入した、と言ったほうが真実味があるくらいだ。

地元住民や議会からの猛反対が絶えないUKにおいては、開催を諦めざるをえないSunsplashであるが、マイアミでは初めてとなるReggae Sumfestが盛大に行われた模様。知らない君のために一応解説すると、Reggae Sumfestとは10年前、 Sunsplashの代わりとなるようなイベントとしてMontego Bayのビジネスマン達が創始したフェスティヴァル。彼らはMo' Bayでの扱われ方に不満を持ちキングストンのすぐ南にあるPortmoreの異臭漂うJamworldに移動したのだが、世界中から観光客を惹き付けるにはあまりにもお粗末なロケーションのため、Sunsplashの人気はその後下り坂になってしまったのだ。しかし徒歩圏内に空港を持つジャマイカ観光の拠点であるMo' Bayで、Reggae Sumfestは着々と集客力を伸ばしていった。USが後押ししたこともあるのだろうが、彼らが同じ様なイベントをUKでも企画してくれるかどうかは怪しいと思う。悔しい。

Bob Marley & The WailersのStudio One音源を手当たり次第にリリースしてきたHeartbeatが、Marley 'Academic' Roger Steffensの監修で『Greatest Hits At Studio One』を編纂した。どの曲も純粋に素晴らしいが、このアルバムは他に1ダースもあるリパッケージ盤をまだ持っていない者のためにあると言えるだろう。

Blood & Fireからの最新盤は『Champion In The Arena』と題したJackie Mittooの17曲入りで、洞察に溢れたライナー・ノーツは我が旧友Penny Reelが執筆した。他界したキーボード・キングの天才的才能には疑う余地もない。しかし筆者はいつもBunny Leeの作り出すリズムはStudio Oneのオリジナルに比べると少し堅苦しいと感じてきた。それでもJackieが70年代半ばに自らカナダへ亡命した当時に録音されたLeeのプロダクションによるMittooの作品の数々を満たすオルガンの音色の調合のサジ加減は抜け目ない。素晴らしい、でもSoul JazzやHeatbeatのStudio One音源のスタンダードからは多少色褪せて見えてしまうのだ。

「Young, Gifted And Black : The Story Of Trojan Records」と題された本を発売したSanctuary Pressは、同レコード会社を一年半程前に買収したSanctuaryの出版部門であることは火を見るより明らかだ。Lawrence Cane-HoneysettとMichael De Koninghが執筆した本著では、リストやカタログの類いに多数のページが割かれている。実際、これはストーリーというよりも、極端なコレクターのための大判カタログ、といったところ。

偶然にも上記の本はその題名をBob & Marciaがレゲエ界で有名にしたNina Simoneの曲名から拝借しているが、Trojanには‘Young, Gifted And Black(若く才能溢れる黒人)’が働いていたことなどこの30年間には無かった話だ。前述のデュオが共にUKを初めて訪れたのは何年前のことになるだろう。不幸にもBob AndyとMarcia GriffithsがPhyllis Dillonを伴いロンドンを訪れた際には筆者は国にいなかったのだが、友人によるとそれは予想通りの素晴らしいイベントだったそうだ。10年程前にKingstonで行われたRocksteady Reunionで両者を見ることが出来たのだが、もしあの彼らでさえ当時の半分ほどの出来だというのならば、そのロンドンでのショウは感涙ものだったに違いない。

今後数カ月に渡るギグのラインアップはBunny Wailer、Morgan Heritage、Culture、そしてShabba Ranks。ジャズ関連のニュースでは Blue Noteの歌姫Cassandra Wilsonが7月にロンドン公演、それから60年以上も音楽界の前線で活躍してきたビバップのテナー・サックス奏者、Teddy Edwardsが4月に他界した。今やもうオリジナルのジャズマン達はあまり残っていない…。
Till Next Time, Take Care...



(訳/Miyuki W. Myrthil)

Bunny Wailer