MIX TAPE
1. DJ Ryo.com / C.Jackson Collection Part.1(D-St. Ent.)

先日のエミネムとの来日公演でもすさまじいインパクトを残して帰った“時の人”50セントのオンリー・ミックス。例の「シェイデイ」からの音源の御披露目的な本場の多くのミックスCDに対し、それ以前の音源を中心に組まれたこちらの方が断然オススメ。トラックマスターズ・エンターテイメント時代の今やレアなシットから、ライヴ、フリースタイルの美味しいトコ取り、でここでしか聴くことが出来ないBLによる「In Da Club」のリミックスもあり。ドーベルマン・インクのライヴDJでありハードヒッターDJズとしても活躍中のホープ=DJ Ryo.Comの巧みなミックス・センスが冴え渡る出来。


ALBUMS
2.KRS-One / The Krystyle (Victor)

ネリーに一発くらわせた「Ova Here」でも怒りまくっていたKRSのイン・ザ・ペイントからの3枚目。プロデューサー陣は本人の他、ご存知DJレボリューション、実弟ケニー・パーカーに、「Ova Here」での合体もっフレッシュだったビートマイナーズ、ネタ師コンビ=ゲットー・プロス、テンプル・オブ・ヒップホップのメンバーであるDJテンティム。まずはその野太いビートの数々よりも更に太く益々エネルギッシュになったKRSの溢れ出る言葉にヤラれて頂きたい。ブランド・ヌビアン「All For One」のビートでの熱いメッセージを聴けば何も彼が勝手放題叫んでる訳ではない事が判る筈。必聴!
3. Inspectah Deck / The Movements (Victor)

このジャケの“雄姿”、まるでブラックパンサー。イン・ザ・ペイントへと移籍しての2ndソロ。ウータン・クランの並み居る猛者の中でもストレートなライム・スタイルに定評のあるメッセンジャー=デックだけに、今作も期待を裏切らない内容に。アヤトーラ、アラビアン・ナイト、ファントム・オブ・ザ・ビーツ(=元UMSズのハッサン)といったデックの特性を弁えたビート・メイカーらとじっくりと腰を据えて作り上げた16曲はどれも手抜きナシ。ウータン・ファンの心の一枚だった前作よりも多彩になったフロウ、そしてその心意気たるや! 言うまでもなく最高のラップ・アルバム。
4. Joe Budden / Joe Budden(Def Jam)

デフ・ジャム帝国が2003年に最も力を注ぐ強力新人が彼。ジャジー・シティをレペゼンする22歳の彼は、顔も声もフロウも男前な、ニュー・ヒーロー。プロモ・シット「Focus」から、現在フロアを揺るがせている「Pump It Up」に、リルモーをフィーチュアした「She Wanna Know」、112との「Ma Ma Ma」、バスタ・ライムスが絡む「Fire」等、力の入った楽曲がズラリと並び、この華のある才能をよりブライトに見せる事に成功。制作は売れっ子=ジャスト・ブレイズ、ローフィに、ジョー所属のオン・トップのサウンド・キーマン、ホワイト・ボーイ。間違いなく“旬”の一枚!
5. Madlib / ブルーノート帝国への侵略 (Toshiba EMI)

ピーナッツ・バター・ウルフ率いるストーンンズ・スロウを中心に幾つも存在する“変名”“別キャラ”を駆使して動き回るマッドなビート・コンダクター=マッドリブによるジャズ界のエベレスト、ブルーノート登頂記。R・フォスター「Mystic Brew」、D・バード「Stepping Into Tomorrow」、B・ハッチャーソン「Montara」、H・シルヴァー「Song For My Father」、W・ショーター「Footprints」等々のサンプリング・ソースとしても有名な楽曲の数々を独自の解釈で解体。勿論、彼がその全てを担当するイエスタディズ・ニュー・クインテットも出動する。ヒップホップ・ファンが聴くべき内容。
6. XBS / Exclusive Benefit Story(Cutting Edge)

ニトロを代表する都市型叙情詩人XBSの初のフル・アルバム。先行曲「Rond」、マッカチンとの「Gaaacho」に「Life -In Memory-」の他、スイケンとの「Deadly Venom」、スウォードとの「Extra Negotiation Pt.2」、ミクリスとの「Under The Ground」等の絡み物でもシリアスなトーンを貫き通す“主役”のリリカル詩的かつ音楽性重視の世界観はやはりオリジナル。ヤッコ、DJワタライ、ムロ、イタチョー、D.O.I.、DJハジメ、マッカチンらのトラック群もそのワールドを構築している。
7. Lunch Time Speax / Going Over(Cisco)

待ちに待ったランチの2ndム。先行曲「180°」での揺るぎない宣言もそのままに、水戸から全国へ発信する彼らのヒップホップは、その変わらぬ志を進化した形で伝えることで成果を上げている。DJデンカ、ジュニア1000、ムロ、カシ・ダ・ハンサム、ケン・スポートといったサンプリング・サブミッションを極めたプロデューサー達が結集し、ゴッチとタッズA.C.というタイプこそ異なれど、共に“男臭さ”最高のMCがその実力を存分に発揮した本作で彼らが全国から更なるプロップスを集めるのは当然至極、だろう。強気なタイトルにも偽りなし!
8. Takatsuki / Tokyo, Kyoto, N.Y.(Nrecords)

京都出身の“ウッドベースの吟遊詩人”タカツキの2ndアルバム。サムライトゥループスのアルバムを経て、再びのこの独りの旅路には、イルリメ、Qイル、ピーチ岩崎、カトウケイタ、そしてサムライトゥループスら気の合う連中も合流。ドラム・ループをバックにウッドベースとポエトリー調の歌、という彼独特のスタイルは、本作でも随所で光っている。しかしながら、ジャズからサイマンデ、レゲエ、レピッシュ、セカンドライン・ファンク等々


SINGLES

9. Mr.Beats / Bonds feat. Maccho & Tokona-X(Future Shock)

ソウル・スクリームの司令塔として、また多方面でビート・メイカーの域を越えたプロデューサーとして腕を振るいまくっているDJセロリのMr.ビーツ名義での初E.P。そのファンクの芯が露となった新しくもブッとい音に乗るのは、オジロザウルスのマッチョと、M.O.S.A.D.のトコナ-Xというスペシャル・タッグ! その息の合った連携プレイは、Mr.ビーツ本人の手により仕立てられたオリジナル版とはまた性能、カラーの異なる2つの別ヴァージョンでもとくと味わえる。また、カップリングにはあの女性リリシスト(NY)アパニ・B・フライMCをfeat.した「Strong Woman」が…。さて、アルバムがいよいよ楽しみになってきた!
10. Sphere Of Influence / Crusin' Feat. Jamosa(Def Jam)

エナジェティックに次なる目標へと突進する“動のアーティスト”スフィアのEP。表題曲はD-St.Ent.のBLがプロデュースした、DJクイックを想わせる(?)スムースなサマー・ジャム。注目の女性R&Bシンガー=ジャモーサをフィーチュアし、グルーヴィにフロウする次世代のラップスターの柔軟な技術は最高潮に。またカップリングではスフィアの作品や、ディプロマッツ、ロイスダ5.9、ラッパ我リヤも手掛けるヒロシマが、オリエンタルなクラブ・バンガーでスフィアの“血”を滾らせる。その独特なスタンスがよく見えるカップリング。

11. Liblo / 三昧(New Deal)

次世代の才能を紹介する新レーベル、ニュー・ディールの第2弾アーティストは、正にシークレット・ウェポン、リブロ。ソロとしての作品は00年の「音楽三昧」以来途絶えてはいたが、裏方としてリアル・スタイラやKeycoらとのセッションの数々に唸らされていた人も多い筈。“人生を人それぞれのやり方で味わおう”という前向きなメッセージを大らかな歌い回しと、暖かみのあるサウンドで表題した表題がまず良い!のだが、辛辣な言葉の数々が見事核心を突いている「道草」グッとくる! そしてインストも気持ちいい。この風通しの良さは何だ。
12. Aquarius / ココ東京 / バラマク / シャボン玉 Remix(Cutting Edge)

デリとヤッコの2人からなるアクエリアス、と言えばフル・アルバムもリリースしたこともあるくらい確固たるエゴを持つユニット。その彼らが久々にその名義をメインに据えたアルバムを制作中。で、3曲のA 面曲を収めたこのE.P.はその前哨戦というには鮮やかスギる一枚。スウォードのフックも映えるメイド・イン・トウキョウな「ココ東京」ではビッグ・O、ダボをフィーチュア。デリの常套句をタイトルにした「バラマク」ではドラマティックなビートに、ティナが多彩なヴォーカリゼーションで色を加える。そしてチカチカ・プロのアルバムに入っていた「シャボン玉」のニュー・リミックスには新たにスウォードをフィーチュア。海より深い3曲の嬉しいデリバリー。