レディ・ソウには子供がいなくて、ときにステージで、男性DJがレディ・ソウに心無い言葉を吐くのを聞くことがある。

また、彼女は一連のX-Ratedなリリックスで、そんなイメージが固定しがちだ。だけど素顔のレディ・ソウは、コアなリリックスとは違って、子供好きの普通のジャメーカン・ウーマン。自身には子供がいないけれど、5人の子供を養育しているそうだ。5人のうち2人は甥で、2人は姪。親であるレディ・ソウの弟と妹が、子供をソウに預けて外国に出稼ぎに行っているらしい。もう1人は、貧しくて学校にも行けない女の子を、ソウがストリートで助けたことがきっかけで、養女になったというラッキーガールだという。

 ジャマイカでは、意外と子供を育てやすいと思うのだけど、どうだろう。ベビーシッターや家政婦さんが安く雇えて(ということは、貧富の差が激しいという問題点もあるのだが)、乳児や幼児を預かる施設は多く、日本に比べるとやはり安い。そういった施設が利用できないときは、親は子連れで出勤する。他にも事情があって子連れ出勤する親もいるので、子供同士で遊んでくれるわけだ。だから女性が働きやすいという利点がある。その点ではとても成熟した社会なのである。

加えてこの国は、子供は神様の子、という感覚なのか、自分の子供だけをかわいがるどこかの先進国とは違って、他人の子供でも喜んで面倒をみる。そしてジャマイカ人のいいところは、どんな人でも子供慣れしており、子供の扱いがとてもうまいこと。他人の子でも叱ること。私には子供がいないけれど、こういう状況の中で暮らしているので、子供を預かったりする機会もあり、自分でもびっくりするほど子供が好きになってしまった。

 その代わり、この国には、シングルマザーの生活保護などは一切ない。治安は悪いし物価は高いし、失業率は高いし税金は高いし、最近では、ついに本や新聞にまで消費税が課税されるようになってしまったし。夜の一人歩きなんてもってのほか。よくそんなところで、か弱い女の人が一人で住めるね、なんて言われたりもする。まー今は、“か弱い”という形容詞からはかけ離れているけどさ。  
はっきりいって、ジャマイカでの毎日は、不便さや不条理との闘いである。闘うなんて大人気ないとか、闘わなくてもいつかわかってくれるとか、甘い甘い。闘うことに意義がある。わかりあうために、闘うんだもんね。

More Respect, More Love…ジャマイカでは、日本の美徳は美徳ではないようだ。特に、女性に対する美徳というのは180度回転したりする。「タフでルーツ」が最高の褒め言葉なんだもの。ソフトとか、はかないとか、痩せてるとか、果ては "Good Girl" より "She Too Bad!" が褒め言葉になるくらい。

 そして私はいつも心密かにほくそえむ。実はこの国、女性が住みやすいというポイントが潜んでいるのである。それは、女のひとがフレキシブルに生きられる、というポイントじゃないかな。ジャマイカに住む良さって、実はこんなところにあるんじゃないかな。Love!




Reiko NAGASE SMITH
(協力/アイランドツアー:http://www.nabra.co.jp/island/)

「Ricoのジャマイカ、Art Life」 http://members2.tsukaeru.net/smithrico