Painted by Yasuo Yagi / Text by Noboru Yamana



 王冠と言われて、何を思い出すか。ビールやコーラの瓶の蓋、栓を「王冠」と呼ぶのは、仮にでもたとえでもなくて、正式名称らしい。鼻たれ小僧だった頃、その王冠の裏に、何か自動車とかがプリントされていたことがあったかも知れないが、そんなものを集めた記憶はない。家族全員が揃う夕飯時、台所でビールの、当然ながら大瓶がスポンと抜かれる音。懐かしい気がしないでもないが、そんな安っぽいTVドラマじゃあるまいし、本当に「俺んち」であったことなのか、もうわからない。こないだ(ジャマイカの)レッド・ストライプを飲んだら、王冠の裏に笑顔のジェイコブ・ミラーが印刷されててさぁ、ひっくり返ったよ…。シャレもジョークも冴えないご時世である。「毎日王冠」という競馬のGIIのレースもあるが。

 レゲエの「王冠物」ベスト・スリー。第三位。アスワドのロゴ。『ディスタント・サンダー』の裏表紙もいいが、『トゥ・ウィキッド』に使われた、グループ名の「W」を王冠に見立てたのがさらに良い。つまり12インチの「スマイル」の裏ジャケ。二位。リー・ペリー『フロム・ザ・シークレット・ラボ』。スイス国旗が…。一位。キング・タビー。彼は王冠をいくつ持っていたか。前にも書いたが、半田づけの出来不出来とか、あったのだろうか。「よそ行き」とか、TPOに合わせてとか。誰もインタヴューで問い質さなかったのかよ。