Hase-T。80年代末から東京
を拠点に活動を続けるヴェテランDJ。
また、本誌「Rhythm Tracks」でも出筆し、サンダー・ゲートの作品等でトラック・メーカーとしても活躍してきた彼が、今回アーティストとしてではなく、プロデューサー/トラック・メイカーとして一枚のアルバムを完成させた。『ダンスホール・プレミア』と名付けられたその作品は、Hase-T制作のダンスホール・リディムにダンスホール勢は勿論、ダンスホールもこよなく愛するヒップホップ・アーティスト達も多数乗り、両者が入り乱れるという「ありそうでなかった企画」(Hase-T)、しかし多くの両者のファンにすれば至極自然な、まさに現在の空気を見事に表した「あって当然の企画」となっている。

現状の両シーンにおいて大きな意味と意義を持つであろうこの作品について、Hase-Tに話を聞く。  ここ数年、自分の活動をシフトしていこうかなというのはあって、それは自分ではもう歌わないということではなくて、それよりもトラック制作に対する興味の方が自分の中で比重を占めるようになっていて、日本人のトラック・メーカーとしてきっちりと良いものを作って、それをきっちりとカタチにして出していければ楽しいなぁ、というのはあったんですよネ。

 今回は4つのトラックを用意して、各々のアーティストに好きなのを選んでもらうスタイルにしました。僕自身、レゲエやヒップホップ以外にもテクノでもパンクでも何でも聴くタイプなので、各々のトラックにはそうした僕の雑食性、ブレンド感が表れていて、それが僕のトラックの魅力だと思います。今回は現在のトレンド感も意識しつつ、全体のバランスを考えて作ってます。押しトラックでもある "Bug" はずっと気になっていた中近東を意識したもの、 "Middle Eastern Spy" はハードコアな上がる感じ、"Dirty Cop" は前からやりたかった昔のジャミーズの感じをヒントにして、あと "Orchestra Rock" は "Street Sweeper" と "Koloko" との合体をテーマに、それに上モノをオーケストラとロックなギターといった感じですね。

 アーティストに関しては、殆どが知り合いで、あとアーティストやレーベル側と相談しつつ決めました。ジャンボは我リヤからの、あとボン君(Papa-B)も餓鬼レンジャーからのリクエストでしたネ。ヒップホップのアーティストの参加に関しては、より広がりを持たせるため、ダンスホールをより広くに聴いてもらうことを考えてで、レゲエが好きで、その理解力のある人に声をかけることにしたんです。リリックとかは僕からテーマは与えずに、各々に自由にやってもらいました。特にヒップホップのアーティストはダンスホールということで、いつもとは違うスタイルを見せようとしてくれたりと、とても楽しんでやってくれましたネ。『プレミア』という通り、この作品でしか出来ない組み合わせ、聴くことが出来ない特別なものばかりなので、是非そこは注目してもらいたいです。

 ミックスは、ダンスホールの音に仕上げる部分で、日本でそれが出来る人を知らないので、この辺りは日本のシーンの課題かもしれませんが、やはり日々それに携わっている人にお願いするのが賢明だと思ったのと、クオリティーを重視してジャマイカでやることにしました。ミュージック・ワークスでファッタにお願いして。ファッタとは初めてでしたが、感覚を掴むとやはり作業は早いし確かですネ。仕上がりには満足しています。

 やっと自分の中でダンスホールのトラックの作り方に対して自信を持てたという感じがあるので、これで「どうだ?」と言いたいというのはありますネ。聴けば自分のものとハッキリと分かってもらえると思います。とにかく日本人の作ったトラックでこうした作品が出来て、これが支持されればシーンの向上にも意味があるものと思ってます。単純に聴いて「カッコイイ」と思ってもらえれば嬉しいです。



"Dancehall Premier"
[Victor / VICL-61152]